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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第2章 ツンデレが本気でムカついてると思ったら、どうやら恋らしい。

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16 咲のからかい

「ねぇ黒瀬、相沢くんっていつもあんな感じなの?」


昼休み。咲が、何気ない風を装って黒瀬に話しかけた。

蓮は購買へパンを買いに行っていて、今は女子ふたりだけの時間だ。


「“あんな感じ”って?」

「なんか優しいし、反応も面白いし。つい、からかいたくなるタイプ?」


黒瀬は、チラッと窓の方を見た。

蓮が外を歩く姿が見えて、ほんの少しだけ表情が揺れる。


「別に。普通のクラスメートよ」

「ふぅん。ほんとに?」

「……なによ」


咲は唇の端を上げて、少し悪戯っぽく笑った。

「だってさ、前の学校の男子が相沢くんみたいに優しかったら、たぶん私、告白してたと思うなーって」


「はぁ? なにそれ」

「冗談だよ」

「冗談に聞こえないんだけど」


黒瀬は顔を背ける。

けど、その耳の先がほんのり赤いことに、咲はちゃんと気づいていた。



購買帰りの蓮が戻ると、咲がすぐ声を上げた。

「あ、相沢くん! メロンパン買えた?」

「お、よく分かったな。ラスト一個だった」

「やった、半分ちょうだい」

「え、また!?」

「いいじゃん、仲良くシェアしよ?」


咲がパンをちぎろうと身を乗り出す。

距離が近い。

髪の香りがふわっと漂って、蓮は思わず固まる。


その光景を見た黒瀬が、机をコツンと指で叩いた。

「……食べ物の貸し借りなんて、子どもっぽいわね」

「え、でも黒瀬もこの前──」

「な、なによ!」

「いや、俺のプリン食ったじゃん」

「……あれは賞味期限切れてそうだったから、味見してあげただけ」

「え、優しさ?」

「違う!」


ツン全開。

でもその反応があまりにも分かりやすくて、咲は小さく吹き出した。


「ねぇ、黒瀬って相沢くんといる時、ちょっと可愛いね」

「っ……!?」

「ほら、ツンツンしてるけど、なんか嬉しそう」

「う、嬉しくなんか──」

黒瀬は言葉を飲み込むと、ぷいっと窓の方へ向き直った。


蓮はその背中を見ながら、苦笑いする。

「なんか俺、犬のしつけでもされてる気分だな」

「そうね。あんたには“おすわり”くらいがちょうどいいかも」

「……ひでぇ」


咲はそのやり取りを楽しそうに眺めていた。

──そして、静かに確信する。

黒瀬葵は、自分にとって“恋のライバル”になる。



放課後、帰り道。

咲が蓮の横に並んで歩いていた。


「ねぇ、黒瀬のこと、好きなの?」

「え?」

あまりにもストレートな質問に、蓮は足を止めた。


「ち、違うって! そういうのじゃなくて」

「ふーん。でも、“違う”って即答できないあたり、もう半分好きでしょ」

「ちょっ、勝手に決めんな!」


咲がくすっと笑う。

「いいじゃん。誰かを好きになるのって、悪いことじゃないよ?」

「……お前、ほんとマイペースだな」

「うん。好きな人のことは、ちゃんと見てたいから」


その言葉の“好き”に、蓮は一瞬だけ心が跳ねた。

けど、彼女の横顔はあまりにも自然で、

その笑顔の奥にある想いには──まだ気づけなかった。

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