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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第2章 ツンデレが本気でムカついてると思ったら、どうやら恋らしい。

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15 転校生、白川咲

月曜の朝。教室の空気が、いつもよりざわついていた。

理由は簡単。新しい転校生が来るらしい。


「なんか、美人らしいぞ」「前の学校は市内の進学校だって」

そんな噂が飛び交う中、担任が連れてきたのは──


「白川咲です。よろしくお願いします」


明るい声と同時に、教室の空気が一瞬止まった。

肩までの栗色の髪、柔らかく笑う口元。

どこか親しみやすく、それでいて目を引く可愛さがあった。


「黒瀬、久しぶり」


その一言で、さらに空気が凍った。


黒瀬葵は、一瞬だけ表情を止めたあと、淡々と返す。

「……白川さん」


“さん”付け。

それが微妙な距離を物語っていた。


「へぇ、知り合い?」と佐伯が俺の耳元で囁く。

「っぽいけど……なんか空気ピリッとしてない?」

「まさかの因縁ライバル展開か? うわ、燃える」

「黙れ」



席は偶然にも、俺の斜め後ろ。

休み時間、白川が椅子をくるりと回して話しかけてきた。


「ねぇ、相沢くんでしょ? 黒瀬の前の席の」

「え、あ、うん。なんで知って──」

「さっき黒瀬に聞いたの。“前の席の男子、いつもなんか変”って」

「おい、それどういう紹介のされ方だよ!」


白川が口を押さえて笑う。

笑い方が柔らかくて、どこか懐かしい雰囲気があった。


「でも、変って言いつつ、あの子ちょっと嬉しそうだったよ」

「……え?」

「気づいてないでしょ。黒瀬って、意外と分かりやすいんだよ」


ドキッとするような言葉を、あっけらかんと言う。

それが彼女の武器なんだと、すぐに分かった。



昼休み。

佐伯が弁当を広げながら、白川に声をかける。

「白川、よかったら一緒に食おうぜ」

「いいの? じゃあ、お邪魔しまーす」


気づけば、俺と黒瀬、佐伯、白川の4人で机を囲んでいた。


「葵、トマト嫌いなの変わってないね」

「……覚えてたんだ」

「うん。中学のとき、毎回残してたもん」


黒瀬は少しだけ目を伏せる。

懐かしさと、どこか居心地の悪さが入り混じった表情。


その間に、白川が俺の弁当を覗き込み、

「それ、卵焼き? 美味しそう。ちょっともらっていい?」

「え、いや、フォーク使う?」

「いいよ、同じ箸で平気」


一瞬、箸が触れ合った。

黒瀬がピクリと眉を動かしたのを、俺は見逃さなかった。


「……おいしい」

白川がにこっと笑う。

「相沢くんって、なんか優しいね」

「え、そう?」

「うん。黒瀬が“変”って言う理由、ちょっと分かったかも」


「ど、どういう意味だよ」

「さあ?」


曖昧に笑って、白川は窓の外を見た。

光に照らされた横顔が、やけに綺麗だった。



放課後、佐伯が肘で俺をつつく。

「なぁ蓮、白川ってお前に興味アリアリじゃね?」

「気のせいだろ」

「いや、目が完全に恋のやつだって」

「そんなすぐわかるかよ」

「分かるね、恋のプロ佐伯には」


「……あの子、ああ見えて結構ストレートだぞ」


「なんだよ、それ」


「黒瀬、焦るかもな」


その言葉に、俺は苦笑いするしかなかった。

──でも、内心は、少しだけざわついていた。



帰り際、下駄箱で。

白川がふと振り返って言った。


「ねぇ、相沢くん」

「ん?」

「明日、駅まで一緒に帰ってもいい?」

「え?」

「だって、黒瀬いつも先に帰るでしょ?」

「まぁ、そうだけど」

「じゃあ決まり」


そう言って笑うその瞳は、真っ直ぐで。

軽いようでいて、どこか本気だった。


──この時点で、もう分かっていた。

白川咲は、ただの“転校生”じゃない。


俺と黒瀬の関係を、確実に変えていく存在になる。

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