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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第2章 ツンデレが本気でムカついてると思ったら、どうやら恋らしい。

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13 放課後、変わったものと変わらないもの

文化祭が終わって、いつもの日常が戻ってきた。

──はず、だった。


「おはよう、黒瀬」

「……うん」


返ってきたのは、いつもよりほんの少しだけ柔らかい声。

たったそれだけのことなのに、胸の奥がくすぐったくなる。


いや、正直、期待してたんだ。

文化祭のあのあと、もう少し仲良くなるんじゃないかって。

だけど、黒瀬は相変わらずツンが多め。

“ちょっとだけ距離が近くなった気がする”……それくらいの変化。


「なに、にやけてんの?」

「え、いや別に」

「気持ち悪い」

「……はいはい」


そのツッコミが妙に心地いい自分が、いちばん気持ち悪い気もする。



昼休み。

佐伯が机をドンと叩きながらニヤニヤしてきた。


「おい蓮、あのあとどうだったんだよ~?」

「“あのあと”ってなんだよ」

「とぼけんな、文化祭の夕方だよ。黒瀬と二人で話してたろ?」

「別に普通に話しただけだって」

「へぇ~? その“普通”が一番怪しいんだよなぁ」


佐伯の追及に、俺はジュースのストローをくわえたまま視線を逸らす。

こういう時の彼の勘の鋭さ、ほんと厄介だ。


「てかお前さ、わかりやすいんだよ。

 今、名前呼ばれただけで顔ちょっと赤くなってるし」


「なってねぇよ」

「なってるなってる。……あー、青春だなぁ」


佐伯は楽しそうに笑いながら、唐揚げをつまんだ。

俺は机に突っ伏す。


「お前さぁ、俺の恋路を観察して楽しいか?」

「最高に楽しい」

「性格悪っ」

「親友だろ? 見守ってやってんだよ」


言いながら、こいつは本気でニコニコしてるからタチが悪い。



放課後。

教室にはもう、俺と黒瀬の二人だけ。

外はオレンジ色に染まり、カーテンがゆっくり揺れていた。


「……帰らないの?」


黒瀬がノートを閉じながら俺を見る。

「もうちょっと残って課題やる」

「ふーん。真面目なのね」

「いや、これ提出明日なんだ」

「ギリギリじゃない」

「お互い様だろ」


黒瀬が少し笑った。

その笑顔が、ほんの数秒だけど、息を呑むほど綺麗だった。


「……なに?」

「いや、笑うとき可愛いなって思って」


「~~っ!」

黒瀬の顔が一瞬で真っ赤になる。

「な、なに言ってんのよ!」

「いや本当のことを──」

「うるさい!」


教科書でペシッと叩かれる。

けど、その仕草にもどこか照れが混じっていて、

俺は思わず笑ってしまった。


「もう、バカ」

「俺、褒めただけなんだけどな」

「……そういうの、ずるいの」


小さく呟いて、黒瀬は顔を背けた。

でも、その耳の先まで真っ赤になっているのを、俺は見逃さなかった。



帰り際、並んで昇降口を出る。

夕暮れの風が心地いい。


「ねぇ、相沢」

「ん?」

「その……文化祭のとき、ありがと」

「改まって言われると照れるな」

「こっちのセリフ」


笑い合ったその瞬間、

黒瀬が小さく、だけど確かに言った。


「……また、一緒にどっか行ってもいいよ」


「え?」

「いや、別にデートとかじゃなくて! 友達として! そういう意味で!」


早口で言い訳しながら、

黒瀬は鞄を抱えて走り出した。


「おい、待てって!」

「待たない!」


追いかける俺。

夕暮れに二人の影が重なる。


少しずつ、でも確実に変わっていく日常。

それが今、やけに眩しく感じた。

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