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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第1章 彼女いない歴=年齢だけど、ツンデレが隣にいた件。

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12 手のひらの温度

文化祭二日目。

昨日の“机事件”のことが、クラスのちょっとした話題になっていた。


「相沢、お姫様抱っこは勇者すぎだろ!」

「してねぇ!」

「いやいや、あの体勢ほぼそうだったって!」


 笑いながら茶化す佐伯に、

 俺は机を軽く叩いて抗議する。


 ──でも、否定しながらも。

 あの瞬間の黒瀬の表情が、どうしても頭から離れなかった。

 怒って、泣いて、でも確かに俺の名前を呼んだ。

 あんな顔、初めて見た。



「……黒瀬、今日も来てる?」


「さっき、控え室で準備してたぞ」


 佐伯がニヤリと笑って肩を叩く。

「行けよ。昨日のこと、ちゃんと話しとけ」

「……だよな」



 昼過ぎ。

 控え室のドアをノックすると、

 中で髪を整えていた黒瀬が、少し驚いた顔でこちらを向いた。


「……あんた、何の用?」


「昨日の、こと。ちゃんと謝っとこうと思って」


「もういいって言ったでしょ」


「でも、やっぱり言わせてくれ。俺、守るとか言っといて、

 結果的に怖い思いさせたし」


 黒瀬は少し俯いて、

 ポニーテールの先を指でいじりながら言った。


「……怖かったのは、あの時だけ」


「え?」


「今は、違う意味で……ちょっとだけ、怖い」


 そう言って、ちらりと俺を見た。

 その瞳は、昨日よりもずっと真っ直ぐだった。


「なんか、胸の奥が変な感じするの。

 あんたを見ると、落ち着かない」


 心臓が跳ねる。

 空気が、柔らかく震えた。


「それって──」


「言わせないで」


 黒瀬がそっと指を唇に当てる。

 近い。

 手の甲が、ほんの少し触れた。

 熱い。


「……葵」


 気づけば、名前を呼んでいた。

 黒瀬の瞳が一瞬揺れて、

 でもすぐにいつもの強がった笑みを浮かべる。


「呼び捨てなんて、百年早い」


「いや、もう言っちゃったし」


「バカ」


 小さく笑って、黒瀬は視線を逸らす。

 頬がうっすら赤く染まっていた。



 夕方。

 文化祭の片付けが終わり、夕焼けの教室。

 窓際に並んで座る二人。


「……終わっちゃったね」


「ああ。でも、なんかもったいない気がする」


「ふふ。あんたにしてはロマンチックなこと言うじゃない」


「まぁ、祭りの魔法ってやつかも」


「じゃあ、その魔法、少しだけ続いてほしいわね」


 黒瀬がそう呟いた。

 その声は小さくて、

 けれど、確かに俺の胸の奥に届いた。



 帰り際、廊下で別れ際の一言。


「相沢」


「ん?」


「……ありがと。昨日も今日も」


「おう」


「でも」


 黒瀬は少しだけ、意地悪そうに笑って言った。


「好きとか、言ったら負けだからね」


 そう言い残して、

 ポニーテールを揺らしながら、夕焼けの中に消えていった。


 俺はその背中を見送りながら、

 笑って、呟く。


「……もう、十分負けてるけどな」

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。

ツンデレ美少女・黒瀬葵と、平凡(?)男子・相沢蓮の少し不器用な恋、楽しんでいただけましたでしょうか。

ふたりの距離はようやく“恋の入口”まで来たところ。

第二章では、もう一歩踏み込んだ関係と、新たな波乱(?)が待っています。

もし「続きが気になる」「黒瀬が可愛かった!」と思ってもらえたら、感想や応援コメント、ぜひお待ちしています!

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