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俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。  作者: 甘酢ニノ
第1章 彼女いない歴=年齢だけど、ツンデレが隣にいた件。

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9 噂と、ささやかな事件

「なあ、相沢。最近、お前らいい感じだな」


──朝から佐伯がそれだ。

今日も安定のウザさである。


「“いい感じ”ってなんだよ」

「ほら、黒瀬。お前に対しての“ツン”が、ちょっと“デレ寄り”になってる」

「そんなデータどこで取ってんだ」

「観察だよ、愛の観察」


 自信満々に言うな。

 ていうか、何を観察してんだ。



昼休み。

文化祭の準備もいよいよ佳境に入って、教室には画用紙と段ボールの山。

俺はポスターを壁に貼ろうとして──


「ちょ、ちょっと、それ斜め!」


 黒瀬が駆け寄ってくる。

 すぐ隣で、俺の手を取って角度を直した。


「……ほら、ちゃんと水平」


「ありがとう」


「ふふん、こう見えて几帳面なの」


 いつもより少しだけ、声が柔らかい。

 周りの空気が、なんとなく甘くなる。


「おーい、黒瀬! 相沢のこと好きなのー?」


 ……また佐伯か。


「ちょっ、黙れ!」


「な、何言ってんの!? 誰が!?」


 黒瀬が真っ赤になって、ポスターで顔を隠す。

 その姿を見て、クラスの女子たちが「え〜!?」と盛り上がる。


「……佐伯、あとで覚えとけ」

「いやいや、周りが騒いでるだけだって」


 まったく反省してない。



放課後。

静まり返った教室で、黒瀬と二人きり。

装飾の残り作業を片付けていた時、黒瀬がふとつぶやいた。


「……こういうの、悪くないわね」


「文化祭の準備?」


「うん。みんなで何か作るの、ちょっと楽しいかも」


 窓の外はオレンジ色の夕焼け。

 頬に反射する光がきれいで、俺は思わず見とれてしまった。


「……なに?」


「あ、いや。別に」


「ふーん。そういう“別に”は、信用しない」


 そう言って、黒瀬はくすっと笑う。


 その時、突然──


 バタンッ。


 ドアの音が響いた。

 慌てて振り向くと、強風でドアストッパーが外れ、

 鍵がカチャンと閉まる音が。


「……え?」


「ちょ、ちょっと待って。これ……」


 試しに開けようとするが、びくともしない。


 教室の中、二人きり。

 外はもう薄暗く、誰も残っていない。


「まさか、閉じ込められた……?」


 黒瀬が目を丸くして俺を見る。

 息が、少し近い。


「え、いや、その、どうする?」


「……別に、焦っても仕方ないでしょ」


 そう言いながらも、黒瀬の声は微妙に震えていた。


 沈黙。

 時計の秒針だけが、カチカチと響く。


「……ま、まぁ、これも“青春イベント”ってやつかもな」


「うるさい」


 即答。

 でもその顔は、ほんの少しだけ笑っていた。

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