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はじめに
俺の人生に、ヒロインなんて存在しない。
……と、思っていた。
正確には、ラブコメの「ラ」すら存在しない。
彼女いない歴=年齢。
バレンタイン? 貰うのは母親からの業務用チョコ。
文化祭? 男友達と焼きそば売って終わり。
そんな俺が、なぜか今、
「ちょっと、近づかないで」
この学校一の美少女、黒瀬葵にガン飛ばされている。
「……いや、別に何もしてないけど?」
「してないなら、その顔をしまって」
「顔はしまえないよ……」
なんで俺にだけこんな対応なんだろうか。
クラスの他の男子には、もう少し機械的ながらも普通に接してるはずなのに。
いや、ほんと意味がわからない。
だけど、それがきっかけだった。
この完璧超人な美少女の、ちょっとだけ“人間臭い”ところに気づいてしまったのは。




