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2人の行く先は何処か


 ミシェルと話した、その夜。



「パパ、話があるの。私とシリルの婚約を白紙に出来ない?」

「は?どうした。あの男が何かしたのか?」

「いいえ、逆に何もしないわ。それに彼には好きな子が出来たわ。私の役目は彼の交友関係の整理よね。それなら、シリルの想い人がその役目を大いに果たしてくれるわ」

「そんな子がいるのか?」

「えぇ、私も会って話したけど、とってもいい子なのよ。妹にしたい位にね」


「しかしな……そこら辺の女性だとな」


 考えるのはアマンダの父である宰相だ。今回のアマンダとの婚約は私生活が乱れまくるシリルの見張り訳としてアマンダが選ばれた。宰相の娘が婚約者となり、妻となればシリルに寄ってくる女が減るのでは無いかと希望を兼ねての婚約だった。シリルはとにかく剣術が素晴らしく近衛に置いておきたい存在だ。しかし顔がいい為に女の方から寄って来る。来るもの拒まずのシリルの素行に頭を悩ませていたのだった。


「それがね。その相手は騎士団ダミアン副団長の妹さんなのよ」

「ほお、あのシスコンで有名なダミアンか、確かに一度、妹さんにあったが可愛らしい令嬢だったな」

「それでね。彼女とシリルが結ばれると、もれなくダミアン様が着いてくるわ」

「ダミアンは犬じゃないのだから……まあ、妹を悲しませたら、流石のシリルも負けるな。お前の事だ自分にもメリットがあるのだろう?」


「流石パパね。私はダミアン様を以前からお慕いしてますのよ。あのシリルより何倍も男らしくて素敵よ。それに私とダミアン様が結婚する事で可愛いミシェルちゃんと姉妹になれます。もれなくシリルが付いてくるわ。我が家にとっても素晴らしい縁となりますわ」

「確かに……ダミアンとの婚約だな。確かに我が家にとってはこの2組が上手く行く事のメリットの方が大きいな。しかし、あのシリルだぞ」

「それは、私とダミアン様もいるし、何よりあのシリルが手を出してないのよ。会う場所は図書館や可愛らしいカフェだそうよ。そして眼鏡と帽子であの顔を彼女には見せてないわ」

「ほう、あの顔で女を虜にしてる最大の武器を隠すとはな、それなら国王に相談してみるよ」



――――二週間後――――


「アマンダ様……今日もお綺麗で何より」

「シリルも変わらず良い顔をしてますわ。オホホホホ」


「…………お世辞だとしても気持ち悪いな。俺の顔はお前の好みではないのを知ってる」

「相変わらず口が悪いわね。所でシリル……最近懇意にしている女性がいるわね」

「…………全部切ったよ」

「本当?もう1人大切に隠しているお嬢さんがいるわよね」

「…………いない」

「ミシェルちゃん」


「何処で知った」

「まさか……本気なの?」


「彼女には手を出してないから何もするな」

「そう?でも、貴方の側にいる女性には変わりない。今までと同じように少し釘を刺すかを確かめる為に呼んだのよ」



「ふぅ……降参だよ。彼女には会わないよ」

「可愛らしい子よね。話したけど、いい子よ。諦めるの?」

「お前と結婚するし浮気もしない……と言うか。もう女達とは半年位前から終わってるし、誘いも断ってる」


「知ってるわ。来るもの拒まずのシリルが変わったとね」


「彼女は俺が騎士だと知らないし、顔も見せてない」

「どうして?」


「半年前だ。彼女が男達に絡まれて裏路地に引き摺り込まれそうに……殆ど引き摺り込まれてな。可愛らしいワンピースがボロボロにな」

「まさか……彼女は?」

「乱暴はされてない。未遂だ……きっと彼女は記憶がないだろうな。すぐに気を失ったようだからな。たまたま非番で偶然、裏に引き摺り込まれて行く所を見てな、すぐに助けに入った。俺が非番でなかったら……あの日見過ごしていたなら……彼女はきっと」


「そう、ミシェルちゃんはシリルを命の恩人と言っていたわ」


「彼女は泣いて感謝していたよ。一緒にいた女に服を用意させてな。ちょうど同じ服が売ってたようで女の部屋で着替えさせてな。目を覚ますと覚えてはいないようで元気に家に戻ったよ。それから、ミシェルは女の部屋に遊びに来る事が増えてな。俺とも会う事が増えた。ミシェルは俺と女が恋人だと思っていたみたいでな、俺が来ると可愛らしく笑いながら帰って行った。その後は、たまたま街でミシェルを見かけて声をかけたんだよ」


「シリルから?」

「あぁ、女から声をかけられる事が殆どだから、緊張したよ。それからは、女の部屋でたまに会いお茶をする。時々街を歩く様になったのは危ないからと理由をこじつけてな……それに彼女は賢い、俺は自分の家族関係や仕事を伝えていない、しかし彼女から聞かれる事はないし互いの家族関係にも触れない。知ってるのは彼女に兄がいると言う事だけで何処のお嬢様なのかは知らない」


「じゃあ、ずっとミシェルちゃんはシリルに恋人がいると思っているの?」

「思っているはずだ。何処かの貴族のお嬢さんだ。俺とは身分が違う。街歩きの護衛みたいなものだ。俺は……今の関係で充分だよ」


「は?貴方はシリルなの?」


「そうだよ。それに色々とお前達は調べているのだろうけど、いつも一緒にいる女は異母姉だ。だから男女の関係はない。そもそも俺が相手にしているのは暇と身体を持て余した未亡人だけだ」


「女遊びが激しいのは?」

「あぁ、王女が誘ってくるから王女避けのカモフラージュだな」

 優雅に紅茶を飲むシリル。


「私達はシリルに?」

「まあ、上手く俺に騙された宰相親子と王族かな。ささやかな王家への悪戯だよ」

 クッキーを食べるシリル。

「ここのクッキーは美味いな」

「いつから甘い物を食べる様になったのよ。私とこのまま婚約を続ける?」

「王命だしな。ミシェルとも会わないよ。きっとミシェルも高位貴族のお嬢様だろ。そのうち婚約者か……恋人ができたら俺との関係は終わりだよ」



「いいの?」

「仕方ないだろ。俺を王家の側に置く為なんだろ。俺の身分の為の結婚だろ俺の両親に仕送り出来るのなら喜んで君を抱くよ」

「それなら王女を抱けばいいじゃない」

「性格が嫌いだから無理だね」


 お茶のおかわりをメイドに要求するシリルであった。

 

「提案があるの。ミシェルちゃんが欲しい?」

「は?ミシェルは物じゃない」

「ミシェルちゃんの家に婿入りしたらいいわ」

「ミシェルには兄がいるだろう」

「ミシェルちゃんの弟が後継者みたいなものよ」

「しかし、俺の婿入りの意味がないだろ」

「そうでもないわ。まあ、お父様からの連絡を待って」



――――――


「あの……宰相殿、私は何か粗相を?」

「違うよ。まあ、気楽にして」


 宰相を目の前に小さくソファに座る一組の家族。

 ミシェルの両親と兄のダミアンだ。本来は次男であるミシェルの兄もいるはずだが領地での仕事のため今回は不在である。


「あの息子が何か?それとも娘がアマンダ様に何か粗相をしたのでしょうか。この場に家族で呼ばれたのには何か事情があるのですよね」


 現在、宰相室に呼ばれた一家4人は青褪めているのだった。


「いや、実はお願いがあってな。まあ、断ってくれてもいいが会議でも決まった事だしな」

「それは……王命でしょうか」

「まあ、近いもんだな」


「さて、ダミアン君には恋人がいるのかな?」

「い……いません。私の様な体格の男は女性からは嫌煙されているのを知ってます」

「うちのアマンダと交流は?」

「アマンダ様ですか……妹が世話になり、何度か会う事はありましたが……決して怖がらせる事はしていません」

「アマンダからも聞いている。とても紳士な男性だとな」


「恐れ多いです。アマンダ様はとても博識高く……美しい人です」

「アマンダと婚約しないか?」


「は?俺が……いや私のとですか?身分が違います」


 慌ててミシェルの父は宰相に答える。

「宰相殿、我が家は名ばかりの侯爵ですよ。猫の額程の領地で蚕の生産で成り立っている家ですので」


「代々王家に優秀な文官として貢献しているではないか。それに貴殿の領地のシルクは素晴らしいではないか絹糸も貴族の女性の刺繍にはなくてはならない存在だ」


「しかし……宰相殿」

「ダミアン君はうちの娘だと不服か……」


「いえ、とても素晴らしいお話ですが、アマンダ様にも好みが……あると思います」

「そのアマンダが君がいいと言っているのだが?まあ、場所を設けてあるからアマンダと話してくるといい」


 宰相補佐に促され籍を後にするダミアン。

「ちょっとアマンダ様と話してくる。ミシェル一緒に行くか?」


「ミシェル嬢にも話があるから、ここにいて欲しいな」

 宰相はニコリと笑うもミシェルの家族には極悪人の悪巧みをする顔にしか見えていない。

「お……お兄様、わたくしは……もう少しここに」

「そうだな……話しが終わったら。来るといい、アマンダ様にも会いたいだろ」

「はい、お姉様……いや、アマンダ様に会いたいと伝えてください」


 そう言い、この冷え切った空気の宰相室を出ていくのだった。


「さて、ミシェル嬢への話だが、私が紹介する男と婚約しほしい。行く行くは婿として結婚してほしい」

「はへ?婚約者?私に……まさか……アマンダ様から聞いて……いますわよね。オホホホホ」


「ミシェル?アマンダ様に粗相をしたのだな」

「お父様あの……誤解が……いや……その」


「大丈夫だ。ミシェル嬢は何も悪くないのだよ。実は紹介する婚約者候補なんだが近衛騎士団に所属しているが、ちと身分が足りないのだよ。協力してくれないだろうか?そちらの家にも……そうだな。商品を王家御用達にすると言う事でどうだろうか?」


「王家御用達……」

「そうだ婿入りし、侯爵と言う身分がな欲しいのだよ。まあ、無理にとは言わないが国王からも許可をもらっているし」


「宰相殿……王命に近いのですよね」

「そうだな、すまないな」

「…………ミシェル?どうする」

「あの……わたくし……」

「まあ、その婚約者候補と会ってから決めたらいい。場所も設けているから。まだ少し時間があるから先に行きアマンダと話してから男と会うがよい」



「……お父様、これも貴族の娘の宿命ですわ。その方がどんな殿方であろうと婚約しますわ。相手方が断らない限り」

「ミシェル……すまないな。無理はしなくていいからな」


「ミシェル嬢、まあ、気楽に会ってみるといい」

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