塩谷くんは友達
昨日、塩谷くんと友達になりました。
「………佐藤さんと、仲良くなりたいから」
真っ直ぐな瞳で私を見つめて、そう言ってくれた塩谷くん。
あんな人気者の彼とお友達なんて、実感が湧かないけど。でも、塩谷くんが私と仲良くなりたいと思ってくれているのは、とっても嬉しい。
「えぇっ、そんなことがあったの…………!?」
今日は、亜子ちゃんは放送のお仕事はお休み。久しぶりに、2人でお昼を食べている。
亜子ちゃんに塩谷くんとのことを言ってみたら、想像以上に驚いたみたい。
「へぇ、塩谷がぁ。良かったじゃない」
「うんっ! 男の子と喋ることってあんまりなかったんだけど………塩谷くんは、話しやすいから」
塩谷くんも、この前私といると楽だって言ってくれた。
「紗友、嬉しそうだね」
亜子ちゃんは優しい笑顔で、お祝いって言ってお弁当の卵焼きを1つくれた。
「私との時間も大事にしてよー? 塩谷に紗友取られちゃうっ!」
「わわっ、もちろん亜子ちゃんともいっぱい遊ぶよ!」
亜子ちゃんも、嬉しそうだし楽しそう。
この前塩谷くんが助けてくれたって話をしたら、亜子ちゃんは結構疑ってたから何か言われるかなって思ったんだけど。亜子ちゃんも一緒に喜んでくれて、嬉しかった。
「でも、噂とか気を付けなよ? 塩谷って結構目立つしさ」
亜子ちゃんが、私があげたおかずを美味しそうに食べながらそう言ってくれた。
私と塩谷くんの、お気に入りの場所。あそこで過ごす時間は、私たちにとって大切なもの。
それができなくなったら悲しいし、寂しい。せっかく仲良くなれたから、これからもっと一緒に過ごして、いろんなことを知っていきたい。
「うん、そうだね。塩谷くん、静かな場所が好きみたいだから」
そう言うと、亜子ちゃんは一瞬きょとんとした顔をした。
「あー、うん。そうね」
何か気になっているような、言いたそうな表情をしているけど………。私なにか気になること言ったかな?
「で、この後も行くの?」
塩谷くんは、今も教室にいないから、もう図書室にいるんだろうな。また寝てるかな。
「うん。亜子ちゃんはミーティングだったよね?」
「そうそう。」
やりがいがあると言って、大変なお仕事も頑張っている亜子ちゃんはとってもかっこいい。
「頑張ってね!」
「ありがとう」
移動していた机を元に戻して、私は図書室へ。亜子ちゃんは、反対側の放送室へ向かった。
「あれ、塩谷くん。起きてたんだ」
「あ。佐藤さん。うん、今日は眠くなくて」
塩谷くんは珍しく起きていて、これも珍しく本を読んでいた。
椅子を引いてくれて、隣の席に座る。
「何の本読んでるの?」
「これ? えっと、そこにあった本」
なぜか題名ではなく、場所を教えられた。
塩谷くんが指したのは1番目立つ本棚だから、お勧めの本とか、新しく入った本とかが置いてある棚。
その中から、適当にとったみたい。
「面白い?」
「んー、まぁまぁかな」
そうは言っても、結構読み進めているみたい。
私も、何か読もう。
そう思って、本棚の中から本を探す。いつも読まないようなジャンルを読んでみようと思ったけど、見つけた本は1番上の棚にあって、私じゃ届かない。
「塩谷くん、これ取ってくれないかな?」
「ん。いいよ」
本を閉じて、私のいる方へ来てくれた。
「この本?」
「うん」
取ろうとしてくれてるのは有り難いんだけど………私に覆いかぶさるようにして、塩谷くんが私の後ろに立っている。
距離が、近い。塩谷くんの息遣いが聞こえる。
「はい、他にはある?」
「ありがとうっ、今は大丈夫……!」
変に、ドキドキしちゃった。鼓動は、まだ収まってくれない。
駄目だよ。塩谷くんは、友達なんだから。