表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

塩谷くんは塩対応

 さっきまでは優しく微笑んだり話してくれたり、接しやすかったのに……教室で私が見ている塩谷くんはまるで別人みたい。

 受け答えは最低限、周りの人達の顔も一切見てないし、表情も硬くて全然楽しそうじゃない。

 さっきのと今、どっちが塩谷くんの素なんだろう……。

「今日は座れてたわね。良かったじゃん」

「うん、塩谷くんが気を遣ってくれたみたい……」

 亜子ちゃんは、休み時間の度に私の席に来てくれる。朝休み以外も、塩谷くんは席を立っている。

 教室の後ろの方、誰の席もない場所に行っているから、みんながそこに集まっている。

「えぇ、あいつが!?」

 そうだよね。みんなが知ってる塩谷くんは、とっても塩対応。私だって、昨日までそうだったよ。

 亜子ちゃんは信じられないという顔をして、囲まれている塩谷くんを見つめる。

「結構優しい人だよ。話しやすいし……」

「そうなんだ……でも私はちょっと信じられない」

「あはは……」

 塩谷くんに疑いの目を向ける亜子ちゃん。

 本当に、優しい人なんだよ。分かってもらいたくて、今日の朝の出来事を話した。

「紗友、図書室によく行ってるわよね。他にも利用者いたんだ」

「うん。読書はしないみたいだけど……」

 いつも寝てるって言ってたし、お昼もあそこで食べてるみたい。

 私は亜子ちゃんとお昼を教室で食べてから図書室に行くから、気付いてなかったんだ。

「塩谷くん、登校遅かったよね? 何してたの~?」

 1人の女子が、塩谷くんにそう聞いた。まぁ、普段から早く登校してるのに、急に遅くなったら不思議に思うよね。

 塩谷くん、なんて返すんだろう……。

「寝坊」

 短く、それだけ言った。でも、女子達は答えてもらうだけで嬉しいみたい。過剰に喜んで返事をする。

「あんな塩男のどこかいいんだか……」

 亜子ちゃんは、少し呆れている。

 あんまりイケメンとか、アイドルとか、他の女子が盛り上がるような話題には興味がないみたい。

「昼休み、いつもどこ行ってるの?」

 さっきとは違う子が、また塩谷くんに質問を投げかけた。

 塩谷くん、図書室って言っちゃうのかな……。

 そう思っていたけど、塩谷くんは答えなかった。言わなかったことに対して、私は安心していた。

 図書室は、私と塩谷くんのお気に入りの場所だから。


 お昼休み、いつもなら亜子ちゃんと食べるんだけど……。

「本当に良いの?」

「うん! いつも私と食べてるし、たまには別の人と食べなよ」

「分かった、ありがとう!」

 他のクラスの友達に誘われたらしい亜子ちゃん。私と食べるから断ろうとしていたみたいだけど、いつも独占しちゃっているし……。1人はちょっと寂しいけど、今日くらい大丈夫。

 塩谷くんは、図書室には行かずに教室で食べている。それが珍しくて、より一層、みんなが集まる。

 塩谷くんが図書室にいないなら、図書室で食べようかな。

 お弁当を持って、教室を出る。鍵は開いていないだろうから、職員室で鍵を受け取った。

「ここにしよう」

 やっぱり、窓際が暖かくて落ち着く。風が強いから、窓は閉めてカーテンを開ける。差し込んだ光が、眩しい。

「いただきますっ」

 寂しさを紛らわすために、声に出して言った。

 今日のお弁当、いつもより美味しくできてる。

 親が共働きで忙しいし、学食も混むから、お弁当は自分で作っている。家も遠いし、その分早起きしなきゃだけど……上手く作れた日は、食べるのが楽しみになるし、上達すると嬉しい。

 亜子ちゃんに今日も凄いねって褒められると、もっと嬉しくなる。

 お母さん達は負担かけてごめんねって謝るけど、結構楽しいから私は好き。

「佐藤さん」

 お弁当を半分くらいまで食べたとき、図書室に入ってきたのは塩谷くんだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ