九尾登場!
「あれ?言ってなかったけ?俺のお店だよ。」
そう言って戯ける。
「ちょっと、聞いてませよ?!眼鏡屋があるのは聞いてましたが!」
そう言うと、いきなり、梵さんの帽子の中から可愛い狐が現れた。
「おっと、起きてしまったのかい?もう少し寝ててもよかったのに。」
と言う声をよそに、僕は、その可愛らしさに見惚れてしまった。新雪のような真っ白いもふもふな毛並みに、先程見たばかりの、新緑の葉のような目。九つに分かれている尻尾。
見ていると、隠れて見えていなかったが、前足が怪我をしているのが分かった。
「この子、怪我しているんですか?」
「そうなんだ。これがまた厄介で、この葉じゃないと治せないんだ・・・大楠の爺さん、俺は医者じゃないのに。」
そう言って、手に持ってひらひらさせているのは、先程の真新しい新緑の葉。
「と言うわけだから、早く行かないと置いていくよ」
もふもふの狐、いや九尾を抱え、クルッと背を向けて歩き出していく。
「ちょ、え?!待ってください!」
僕の呼びかけに答えずに、スタスタと、それでも優雅に歩き続ける。
僕はとりあえず着いて行くことにした。
(九尾が気にかかるだけだし・・・!)
もふもふの狐は良い・・・