後編
翌日もまたジョゼの迎えで執政宮を訪れると大歓迎を受けた。エデュアールの執務室への途中でも感謝の声が次々に掛けられる。もちろん、執務室の主も笑顔で迎えてくれた。
「一度も途中で目覚めることなく眠れるというのは、実に素晴らしいな」
彼には改めて夜の分も渡して帰ったが、使ってくれたようだ。
「おかげで私だけでなく使用した者の仕事の進捗が目覚ましい。もっと早くに知りたかったが、それは贅沢というものだろう。昨日と同じに隣の部屋を使うといい。だが、私の分も忘れないで欲しいから、皆への処方が終わればまたここに寄ってくれ」
本日も盛況なり。昨日、不在だったご新規さんもいたりで、大忙しだ。それを考えると、明日もまた来る必要がありそうだということになり。『出張・眠り玉屋』は執政宮に五日連続で午後からの開店となった。午前中は老婆の薬屋での通常営業である。
この五日間での私の儲けは、なかなかすごい金額になった。これならば、目を付けていた土地を購入できそうだ。
そして何故か。仕事終わりには毎回執務室に呼ばれて、エデュアールとお茶をしている。二日目からはお菓子もついた。言葉遣いも好きにしろということで、それに甘んじている。
さすがに、老婆の薬屋から執政宮までは距離があるので通うのは辛い。いちいち迎えに来てもらうのも気が引ける。そこでお茶の際にエデュアールに相談をしてみた。
「私、記憶にある場所同士なら、影を通って一瞬で移動できるんで、それを使って薬屋とここを往復したいんですけど、一応、ここも王城のうちだからまずいですか?」
私よりも十歳ほど年上のはずなのに、驚きで目が丸くなっている様子が妙に可愛い。
「それはまた便利だな。闇属性が羨ましくなってきた。
君は王族への敵意があるわけでもなく、至って平和な営業活動を行っているに過ぎない。この宮の内ならば私の権限でどうにでもなる。ただし、行き帰りはこの執務室にして貰う。私の目の届く場所である方が安心だ」
「では、訪問時間を決めましょうか」
「そうして欲しい。ところでその移動だが、君以外の人間を一緒に移動させることはできないだろうか?」
「やったことはないですが、おそらくできます」
「それならば――――」
次の休日。私は<影渡り>と名付けた移動で迎えに行ったエデュアールと、街の中を二人で歩いていた。
この世界は元がゲームだからなのか、暦関係は日本と変わらない。呼び方に差があるけれど、一週間は光・無・火・水・風・土・闇の七日間。つまり、光曜日が日曜日。なので、仕事でも光曜日を休日としていることが多い。土曜日がこちらの実際では金曜日に当たるというのが微妙だけれど。ちなみに無属性というのは「ある」とは言われているが、光や闇以上に見つからないらしい。乙女ゲームな世界でなかったら、主人公は無属性で決まりだね!? でも残念。乙女ゲーのヒロインは光属性だと統計が語っている。多分。
今日は光曜日だからお役所、もとい、執政宮もお休み。ちなみに『眠り玉屋』は週休二日を譲らないクリーンな職場です。住んでいる離れに教師がやって来る日も休むので週に三日しか営業しないのが常。今回、執政宮への出張所開店のあおりで、仮病で勉強は休ませてもらったけれど。
護衛はいらないのかと聞くと、荒事もそれなりに熟してきたと言われる。執政宮、闇が深すぎない!?
お忍びのはずだが、まったく忍んでいない育ちの良さが、明らかに周囲から浮いている。私はマールの姿なので、富裕な新規顧客の案内をしているくらいに見えているんじゃないだろうか。
「ええと、どこか行きたいところとかあります?」
「特にはないので行先はまかせるが、庶民の生活が見えるところがいい」
「じゃあ、市にでも行ってみましょうか。広場で屋台が連なって、色々な物の売り買いがされてて賑やかですよ。あ、人混みに入りますから、懐に注意してくださいね。スリも多いので」
身分的に街にはそう降りていないはずだし、慣れてもいないはずなのに、どこか泰然としたままのエデュアールを広場へと案内する。
「何か食べますか? このあたりだとお勧めできるのは……」
口の肥えているであろう彼にも食べられるもの。やはり貴族の食卓には上がらない味の濃いものだろうか。飲み物にしても、ワインやエールも安物をさらに水で薄めているような粗悪品ばかりなので、正直、彼の口には合わないだろう。そう考えると、なかなか選択肢がない。
「気を遣わなくても大丈夫だ。歩いているだけで楽しい」
「そうですか? 本当に?」
「ああ。どんなものが流通しているか、その質はどうか、求められるものの傾向であるとかが分かるからな」
そうだった、この人は仕事中毒なのだった。
「仕事から離れましょうよ。せっかく遊びに来ているのに。えーっと、遊び、ですよね?」
急に自信がなくなった。彼は視察のつもりだったかもしれないと、この時初めて思ったので。
「もちろんだとも。君の解説を聞くだけでも来た甲斐があったというものだ」
建物であるとか、店であるとか、もしくはそこで働いている人間を知っている場合にはその人についてだとか、とりとめもなく話していたのは、どうやって間を持たせていいか分からなかったからだ。
「うーんと、じゃあとりあえず……」
「待て」
比較的良心的な屋台を紹介しようと歩き出した私の腕を掴んで、すぐ傍の路地へと連れ込まれる。
「大通りと違って路地は危ないんですよ!」
「暴漢程度ならばどうとでもなる。それよりも、あの連中に気付かれない方が重要だ」
エデュアールの視線の先には、にぎやかな集団があった。丁度、広場に入ろうとしている男女だ。ただし、女性は一人だけで、あとは男性のようだが。
遠目だがその女性は、私と同じような年齢で、そして目立つピンクの髪を持っているのが分かった。
(げっ、ヒロイン!?)
乙女ゲーム『サンク・エトワール』の主人公は、よくある貴族の庶子が引き取られて―――というテンプレ設定。光属性持ちということで注目されて学園に入学して、攻略対象たちと出会って恋をするのだ。
ちなみに主人公の名前はプレイヤーの自由なので、なんという名前かは知らない。私は『あああ』でプレイしていたから、多分、それじゃないはず。デフォルトネームってあったっけ?
「あの女には近づかないように」
ピンクの髪なんて、転生してから初めて見たし、おそらくはヒロインで確定だろう。それよりもエデュアールが『あの女』呼ばわりしていることの方に驚く。
「えっと、彼女は?」
「……執政宮に出入りするならば知っておいた方がよいだろう。このあたりに内密で話ができるような所はないだろうか?」
「あー、それなら」
私は広場にほど近い、顧客のひとりである商人が経営する食堂へと向かった。追加金額を渡すことで個室が使えるのだ。ただ、部屋を借りる際、不愉快な誤解をされた気もする。
お茶だけ頼んで人払いしたところで、エデュアールが机の上に砂時計を置いた。
「これ、なんです?」
「この砂が落ちるまでは室内の音声が外に聞こえなくなる道具だ。砂が落ちてもまたひっくり返せば継続して効果がある」
じっと砂時計を見つめると、エデュアールの魔力が感じられた。
「これ、閣下の……」
「エドと呼べと言ったはずだが」
たしかに、お忍びに出る前にそう言われた。敬称もなしで、と。余人のいない場合も継続だったのか。
「えっと、これ、エドの魔力ですよね?」
眠り玉に結び付けるために、彼の魔力はもう覚えた。
「ああ。この砂に私の土魔法を付与してある。密談には重宝する道具だ」
それはさぞかし大活躍してるでしょうねと、心の中でつぶやく。王宮は魑魅魍魎が跋扈する場所だから。
「さて、先程の女のことだが」
話が変わったので慌てて姿勢を正した。そんな私に気楽にして構わないと軽く手を振られる。
「一年ほど前に発覚した光属性の娘だ。名はエステル・ド・カスタニエ。カスタニエ男爵の庶出の娘で現在十五歳。君や第三王子殿下と同じ年だな。光属性が話題になって男爵が引き取った。あの髪色はカスタニエ家独特のものだから血統は間違いないだろう。片親が庶民ということで、それまで市井に育っている。来年の学園入学に向けて、王宮から教師を派遣して教育中だ」
そうそう。そんな設定がチュートリアルとオープニングで説明されてたっけ。
「それだけなら、別に密談にする必要ないですよね?」
庶民だと思っていたら貴族の落とし胤でした、なんて物語にはよくあるパターンだし。貴種流離譚は元の世界でもこちらでも人気のある題材だ。
「光属性の持ち主が見つかることは稀だが、カスタニエ家には以前から何度か現れている。今回、男爵から届け出があって、王家も知ることとなった」
「はあ」
カスタニエという家名には聞き覚えがある気がする。そうか、ヒロインの家名だったか。
「あまり知られていないが、光魔法の中には相手の精神を意のままに操る魔法がある」
「ああ、それは分かります。やろうと思ったことはないですけど、闇魔法でも多分できますし、正反対のものだからこそ、できそうなことが想像できます」
勉強熱心だな、と何故か頭をなでて褒められた。この人、私をいくつだと思っているのやら。
「自国の反抗的な貴族や外国の大使などに、使いようで色々可能なために、王家はどうしてもあの娘が欲しいらしい。第三王子にはあの娘を篭絡するよう、陛下からの指示があったようだ。殿下だけでなく有力貴族の子息たちも、家からそう命じられているはずだ。王家や他家に取られるよりは、という事情でな」
乙女ゲームでは主人公が選んだ相手を落とすものだが、この世界だと逆転しているということ?
「でも、彼女が光属性だってことは、来年学園に入学したら広まることですよね? 有用性はともかく」
「今はその属性の可能性は当の本人にも知らされていないがな。有象無象に知られる前に王家が取り込みたいと動いているのだ。執政宮は彼女への教師の派遣に関わっている。その為、男爵に連れられて王宮に上がったところにも居合わせたことがあるのだが……」
エデュアールの眉間に深い縦皺が刻まれる。どうにも彼はヒロインに良い印象がないようなのだが。ゲームでは、入学まで攻略対象に会うことはなかったけれど、王宮に上がったということは実際には王子と先に顔を合わせていたということだろうか。
「お待ちください! そのお部屋は使用中です!」
「え、なあに? 聞こえなーい」
ノックも無しにいきなり、部屋の扉が甲高い女の声と共に無遠慮に開けられた。鍵は最初から掛けていないにせよ、庶民だってこんな失礼なことはそれほどしない。ましてや、ここの食堂は街では高級店の部類だ。
驚いて扉を凝視するばかりの私にエデュアールが抱き付き、さらには私の肩に顔を伏せた。
「やだー。お取込み中? ごめんなさいねー」
「こちらへ、こちらのお部屋にどうぞ!」
焦った男の声は馴染みの商人のものだ。扉が閉められ、嬌声が遠ざかると、ようやくエデュアールが顔を上げた。
「すまない。咄嗟に顔を隠したかったのだが、不作法なことをした」
高位貴族ともなると、早々、人に謝罪したりはしないものだ。だが彼にはそんな安いプライドはないらしい。
「まあ肩でしたし、いいですよ、もう。ところでさっきの彼女……」
私はずっと扉の方を見ていた。だから入ってこようとした女の顔も見ている。
ピンクの髪にパッケージやゲーム画面やスチルで見覚えのある顔。可愛い系の美少女顔に有名声優の声。
(あれがヒロインだというの?)
私の心の声が聞こえたかのようなタイミングでエデュアールは頷いた。
「そうだ。あの品のない女が話題にしていた光属性持ちだ」
「品がない……というか、単にマナーが身に付いていないだけでは?」
「顔の良い男と見るとすり寄っていくのだが?」
「あー、それはたしかに品がない」
ということは。私同様、中の人がいる、つまりは転生者では? ゲームのヒロインは善良で裏表のない性格で、ある意味無個性ではあったけれど、もちろん男に色目を使うタイプじゃなかった。自分がヒロインと知って舞い上がったタイプだろうか。幻影を纏った姿で良かった。素の私の顔を見られたら悪役令嬢だと騒ぎ立てられていたかもしれない。
で、ふと。隣にいるエデュアールの顔をまじまじと見る。
「エド、顔がいいから、すり寄られたんですね」
「……必死に逃げた」
自分の顔が良いことも、すり寄られたことも否定しない彼が少し可笑しい。
「ご実家から何か言われませんでした?」
「おまえでも良いから、あの小娘を落とせと言ってきていたな。だが私は御免なので、殿下の後押しを色々している」
「なるほど。殿下に押し付けてしまおうと」
「君は婚約者候補だったな。すまなかった」
「会ったこともない候補ですから、どうでもいいです。むしろさっさと候補から外して欲しいんですけどね。私も殿下を後押ししたくなってきました」
「候補から外されると、君は家から追い出されるのではないか?」
「自力で独立のために動いていたんですよ? 準備はばっちりです。新居予定地も押さえていますし」
目標金額以上の貯蓄もできた。買い取りを目論んでいるのは、爵位を返上した貴族の邸跡。さして広くもないけれど私ひとりなら問題ない。薬屋の老婆を呼び寄せて一緒に住んでもいい。建物は壊されているが、中途半端な庭の跡であるとか、小屋であるとかは残っているし、母屋の廃材なんかもそのままだ。住めるようにするには時間もかかるが、場所が気に入っているので手付は払い済み。数日内には本契約して買い取る予定だ。出奔予定の十六歳になるまで半年あるし、それまでには何とかなるだろう。
「ところで今回、君のことで察したことがあるのだが」
唐突に姿勢を正したエデュアールが話し始める。何を言われるのか分からないので軽口でいなす。
「今更あんまり隠し事してないと思いますけど?」
「病死したことにして出奔するだけなら魔法が使えるようになった時点で待つ必要はない。薬屋の老婆も君を可愛がっているようだし、頼めば住まわせてもらうこともできただろう。それなのに君は未だに公爵家の離れで夜は過ごしている。
君、街の衛生状況が、匂いが耐えられないんじゃないか?」
「なんでそれを」
あまりにも図星を突かれて、素で敬語を忘れた。
「<影渡り>で薬屋に着いた後、街に出た途端、鼻の頭に皺を寄せていた。あと、私を案内するためもあっただろうが、絶対に裏道を通らなかっただろう? 裏道は窓から汚物を捨てるからな」
二十一世紀の日本の記憶のある人間が、この中世風世界で耐えられないのが衛生問題だった。
元が乙女ゲームの世界のせいか、貴族の家や王城、学園はちゃんと上下水道もあるし、貴族ならばほぼ生活魔法のクリーンもも使えるから、市井で暮らそうと思わなければ問題ない。
それでも貴族であっても入浴習慣は少ないと思う。実家の公爵の家族ですら数日毎なんだよ!? うちの離れではもちろん、毎日お風呂にも入っているよ!
ともあれ、庶民の住む街、人口が増える度に無計画に広がっていった街に下水道などない。
雨に流されるまで道に捨てられた汚物がある。雨が降らなければ溜まる一方。人間の鼻はすぐ馬鹿になるし、住人は慣れて気にする様子もない。でも、私にはどうしてもそれが耐えられなかった。
そう。離れでの快適で悪臭のない生活がどうしても手放せなかったのだ。薬屋は薬の匂いで充満しているので気にならずに済んでいるので許容範囲。ただし、下宿は無理。
「……否定はできません」
「いや、私がそうだから君もそうではないかと思っただけだ。軟禁されているとは言っても、生まれながらの公爵令嬢である君の生活環境までが最悪とは思えなかったのでな。
それに以前から市中での悪臭の苦情は執政宮にも届いている。しかし、街全体の下水道工事は困難だ。区画を決めて住人を別の場所に仮住まいさせている間に工事をして……と繰り返しても、終わりが見えない。王都へと押し寄せる人間は減らず、街は広がる一方。とんでもなく期間と予算が必要になるが、上はそれを出し渋るばかり。だからと言って、私財を投げ打って迄できるかと問われれば答えられない」
分かる。ひどい状況だからって、個人にはどうしようもない。国家事業にするしかないが、そんなことに国の財源をつぎ込みたくないのだろう。例え大貴族であっても単独では対処は厳しい。逆に領地でなら可能かもしれないが、そこまでしている貴族の話は聞いたことがなかった。
でもこの人は上からと下からの苦情から逃げられないのだろうな、とエデュアールの横顔を眺める。彼個人は逃げることはできるかもだが、皺寄せのいく部下をきっと放っておけないから。損な性分だと思うが、嫌いではない。せめて安眠確保だけはお手伝いしよう。
「光属性の女の話もできたし移動するとしよう。ここにあの女がいるうちに離れたい」
「そうですね。ただでさえ闇属性の私とは相性も悪そうですし」
じゃあどこに行こうかということになって、彼は私が購入を検討している場所が見たいと言い出したので、目的地が決まる。
「母屋は取り壊されているのでほぼ廃墟ですよ?」
「構わない。どういう点が君のお眼鏡に適ったのか知りたくてね」
「平たく言えば、場所と値段ですけど」
「君のことだから市中ではないのだろう?」
「一応、貴族街の端ですね」
やはりな、とばかりに頷くエデュアールを連れて、目当ての場所へと向かう。歩いてもさして遠くはない。そこに住むとしても薬屋に通うことを考えても、貴族街の上の方は選択肢になかった。
「廃墟だな」
「だからそう言いましたよ」
一応、この土地は塀と門が残されている。管理している人間に話を持ち掛けたら、好きに見て良いと門の鍵も預かっていた。一応、浮浪者などが住み着かないように、普段は鍵がかかっているのだ。
「狭い、のはともかく。中途半端に残されているものが邪魔だな。これらの撤去や整地をしてからでないと家を建てられないだろう」
「そうなんですよねえ。場所は理想的なんですが、買っても今日明日にすぐ引っ越せるわけではないのが難点で」
「この辺りで建物付きの物件を探した方が結果的には効率が良さそうだが」
この人は効率厨でもあったっけ、と少し遠い目になる。
「居抜きの家付きは、そりゃあありがたいですけど、その分、お値段も跳ね上がりますんで。ここでも他に取られないように手付金も払ってしまってるんです」
実の所、王都における住宅事情は良くないのだ。市中では五階建て程の建物が所狭しと立ち並んでいる。一階は店舗で、上階はアパルトマンのような住居になって、ぎゅうぎゅうに人が生活していたりするから、ある程度の小金持ちは貴族街の方に住めないかと狙っているのだ。私もまたそのくくりに入るだろう。
現在私がいる土地が売りに出されていることは、一部には知られており、管理人の元にも問い合わせがそれなりにあるらしい。ただ、これまで結構な期間売れずに残っていたのは、中途半端に残された邸の残骸であるとか、無人の間に繁茂した庭木などの処理に時間と費用が掛かるせいだ。もちろん、新たに家を建てるための費用も別途必要になる。それらを加味すると、そのまま利用できる建物の残っている物件を購入するよりも割高になると気付いた人物は手を引いていくことになる。だからこそ、これまで売れずにいたのだ。
私がここに目を付けたのはまず立地。貴族街には違いないので周囲の邸には上下水道が完備していて悪臭がない。だが外れであるので、市中への移動が楽。整地と建築が必要ではあるが、自分好みにできるというメリットもある。金さえあれば貴族でなくとも住んで許される端っこ。要は資金があればすべて解決するのだ。そして執政宮への出張販売で、費用の問題はクリアすることができた。たださすがに、一挙に支払うと貯蓄も底を尽くわけで、できれば安く上げたい。
(私が土属性ならばっ!)
上級の土魔法には分解というものがある。物質を分解して土に還す魔法だ。建物に使われていた木材も石材もすべてが対象になる。分解して整地することができれば、随分と節約にもなる。
私は思わず、隣に立つエデュアールを羨望の眼差しで見上げた。私よりも魔力の多い彼ならば、分解も整地も熟してしまうだろう。しかも、さしたる労力も掛からずに。
(分解と整地、手伝ってくれたりしないかなあ)
さすがに知り合って一週間程度の人物、それも高位貴族のお偉いさんに、そんな打診ができるほど恥知らずではないので口にはしない。虫の良い願望と言うやつだ。
実際に敷地に立つことで、具体的にどこに何を作るかとか、考えるだけでも楽しい。伸び放題な元は前庭にあったはずの木々をそのままに、周囲からの目隠しに残してもいい。王都にありながら森の中の隠れ家気分を味わうのも楽しそうだし。裏庭にこっそり家庭菜園だって作れちゃう。馬車での出入りを最初から除外しておけば、馬車の置き場や厩舎もいらない。夢が広がるばかりだ。
そんな妄想をしながら土地を眺めていると、門のあたりで騒ぐ声が聞こえて来た。
「おっ、今日は鍵開いてるじゃん! 入ってみようぜ」
「えー、ここがさっきの話に出て来た廃墟? やだあ、こわい」
「昼間だから大丈夫だって。夜はここの主だった人物が幽霊になって徘徊してるそうだけどな!」
「大丈夫。俺たちが一緒だし、エステルのことは守るから」
少し聞こえた女の声は、つい先ほど聞いたばかりのピンク髪のヒロインのものだ。というか、前世ではお馴染みの売れっ子声優の声だったから、私が聴き間違えたなんてことは絶対にない。
にしてもだ。今日これで三回目のニアミス。ヒロインと悪役令嬢には運命の絆というか因縁があるのではと思わざるを得ない。
咄嗟にエデュアールの手を取って幻術を纏う。鬱蒼と茂る樹木に紛れて私たち二人の姿を隠したのだ。
あつかましくも敷地内に押し入って来た四人の男と一人の女。
「木ばっかり茂っていて、昼間でも薄暗いな?」
「ねえ、もう戻ろう? ここ、なんか気持ち悪いもん」
「でも、普段は鍵掛かってて入れないから、この機会逃したら噂を確かめることもできないぜ?」
「それに、エステルは光魔法使えるんだろ? 幽霊だってエステルみたいな可愛い子に浄化されて救われたいんじゃないか?」
彼らの話を要約すると、ここにあった邸で気の狂った主が家族と使用人を惨殺。その後に自殺して、しかし幽霊となってこの場に留まって、訪れた人物に呪詛をかけるのだという。
(私の夢のマイホーム予定地を肝試しの舞台にするとか、失礼きわまりないんだけど!)
土地の来歴くらい調べている。一代限りの騎士爵家だったので、その子供は爵位を継承できず、邸の存続も出来ずに手放したという、ごく平和な話しかなかった。闇魔法でも土地の記憶を探ったから間違いはない。ちょっと廃墟になって長くて、庭木が林みたいに伸び放題だからって、誰かが面白おかしく作った与太話が噂になったんだろう。迷惑でしかない。
あまりにも腹が立ったので、彼らの脳内にある狂った主とやらの幻影を見える形で産み出してやった。蓬髪に血走った目。ぼろぼろの鎧。今まさに、侵入者である彼らへと振り下ろそうとしている血に汚れた剣。
「ひいっ、で、でたーっ」
「いやあっ!」
先ほどまでの威勢のよい様子はどこに行ったのか、幻影を見た彼らは我先にと敷地から逃げ出した。
こら、ヒロイン。おまえ光魔法使えるはずなのに、忘れて逃げてどうする。まあ、魔法使われたらこちらの幻術が消されるか相殺される可能性もあったので結果としては良かったとも言える。ただ、そうはならないという確信があった。食堂の個室で顔を合わせた時に、彼女が私の偽りの姿に反応しなかったから。どうやら大した魔力は持たないようだ。教師も派遣されているのに、魔法を使い熟すまで行っていないと見た。勉強や努力や修行を厭うタイプかもしれない。
全員が退去したのを確認してから門の内側より鍵を掛ける。開けっ放しにしていたこちらにも多少の落ち度はあるかもしれないが、不法侵入は犯罪だ。慈悲はない。
彼ら自身が肝試しに来ることはもうないだろうが、彼らから話を聞いた軽率な人間が今後もやってこないとは限らない。ここは、ケチなことは考えずにさっさと土地を整備するべきだろう。土地の購入は決定して、残金さえ支払えば私の物になるのだから。
にしても、あのヒロイン、あれはない。一緒にいたのは平民らしいが顔のいい男ばかりだった。ゲームのヒロインはちゃんと清純だっだぞ。絶対、関わるものかと決意を新たにした。ただでさえヒロインと相性の悪い悪役令嬢なんだから、こっちは。
「さっきのあれが、闇魔法の幻術か。あれは君が考えた姿なのか?」
エデュアールはもう消えてしまった幽霊の幻影をまだ気にしているようだった。
「私ではなく、彼らの想像した姿が見えるようにしました。これも一種の精神への干渉ですかね」
「それは闇魔法の特性だろうな。だが、そもそも幻術というのは、どの属性であっても、工夫次第で掛けることができる。炎の揺らめき。霧や靄。風塵。土煙。そういったそれぞれの性質を利用すれば。だが幻術が維持できる時間はどの属性であってもほぼ同じ。どれだけ魔力を増やしても条件は変わらない。君の姿を偽る幻術もまた、丸一日継続することはできないだろう?」
「はい、できません。自分に掛けている術だけでなくて、離れに残した身代わり人形に術を掛けるためにも毎日帰宅しないといけないんです」
幸い、離れの使用人の目は緩く、彼らに分かるような方法で離れから出ない限り干渉もされないから、これまでバレずに来ているだけだ。いわば特殊な事例である。
「幻で偽っても必ず解ける」
「あの、何が言いたいんでしょう?」
彼の発言の意図が分からずに首を傾げる。
「君が市井で『眠り玉屋のマール』として一生過ごすのは難しいという話だ。外れであっても貴族街に家を構えるのであれば使用人を雇わないのは不自然だ。だが使用人に対して幻術を使い続けるのは厳しい。ましてや君は若い娘。無責任な視線や噂に悩まされることになるだろう」
それについてはまだ考慮中というところだった。人を雇うのは簡単ではない。殊に、私のように姿と身分を偽ろうとするのならば、こちらの事情はある程度知らせないわけにもいかないが、打ち明けられるほど信用できる人間を雇用できる宛が今は無い。身の回りのことは自分でできるから、建てる家を小さくすることも検討していた。けれどエデュアールの言う通り、この場所でずっと暮らすのであれば、人を雇わないでいると、後ろ暗いところがあると思われるかもしれない。そんな人間が近所に住むことに文句を直接言いに来る輩も現れそうだ。
エデュアールは淡々とした口調で話を続ける。
「王族には三人の王子がいて、第一王子である王太子は他国の王女と婚姻済み。第二王子は四大公爵家のひとつコルビュジエ家の令嬢と近々結ばれる。第三王子が跡取りでもない四大公爵家のブランシャールの末娘と結ぶ必要はほぼないと言って良いだろう。ましてや現在、光属性の娘がいる。王家としてはそちらと縁を繋ぎたい。つまりだ。君の実家にも既に候補の解消が伝わっている可能性が高い」
「光属性の娘が現れて、しかも殿下と同じ年なら、そちらが優先なのは分かります」
ゲームでは当然のようにそうなったのだから、候補が取れて王子の婚約者になって結婚する未来があるとは思ったこともない。ヒロインが王子ルートに進まなかったとしても、闇属性の娘と婚約するメリットは無い。しかも我が家には兄がいて公爵家を継ぐことは決まっており、婿入りして公爵になる未来もないとなれば、王家は簡単に候補解消に動くだろう。
「さて、私の事情だが。土属性のせいで後継とは認められて無いとは先日も告げたな? おそらく父の弟の息子、私の従弟が養子となって継ぐことになるだろう。
ところで執政宮での仕事をしているうちに、父の弱みを握る機会があった。今更レスタンクールを継ぎたいとも思わないが、貰えるものは貰っておこうと思ってね。それで昨日、父から伯爵位をもぎ取ってきた。本来、後継の男子に与えられる爵位であり、父が持ったままになっていたものだ。我が家は他にも爵位を持っているのだから、返すつもりはもうない。つまり今の私は公爵令息ではなく、伯爵家当主になる。不随爵位の移譲には王家の許可もいらないから簡単だった。
そこでブランシャール家だが。末の君の第三王子との縁談はほぼない。学園に十六から通わせるにしろ通わせないにしろ、君の去就には頭を悩ませていることだろう。末端貴族であっても、君の属性を知って婚姻を了承する家はない。しかし黙ったままでも真相はすぐに知られる。そうなると婚姻は絶望的だからと、このまま軟禁を継続するか修道院に送るか。はたまた……というところに申し出が届く。『マルスリーヌ嬢が闇属性であることは承知の上でレスタンクール伯エデュアールが婚姻を申し込む』と」
ぽかんと、口を開けたままで私はエデュアールを見つめていた。何を言い出したのだ、と呆れてしまったからだ。
「早い話、君に求婚している。受けてくれないだろうか。ああ、正式な作法が抜けているな」
さっと目の前で膝をつき、私の右手を取って唇を寄せ、上目遣いで誓いの言葉が紡がれる。
「エデュアール・フランソワ・ド・レスタンクールは、マルスリーヌ・クリステル・ド・ブランシャールをただ一人の妻として迎え、生涯を共にすることを請い願う」
乙女ゲーム『サンク・エトワール』の舞台である学園は、十六歳から十八歳までの二年間、貴族の未婚の子女を預かる。この国の貴族の婚姻可能年齢は十六歳から。但し、社交界にデビューできるのは十八歳からで、そこから成人と見做される。婚姻済みの場合は十八歳に満たなくとも成人扱いとなり、学園への入学は免除となる。婚約者がいても婚姻がまだの貴族だけが生徒として受け入れられるのは、社交の訓練の場でもあるからだ。なので大抵の貴族は学園を卒業して十八歳を迎えてから婚姻する。それでも何らかの理由で結婚を急ぐ場合があり、王家の許可さえあれば十八を待つ必要はない。
前世の記憶があるから、十六で結婚とか考えられなかった。おまけに闇属性持ちだから相手が見つかるとも思っていなかったのだ。属性を告白したらきっと離れていかれるだろうから。それは庶民でも同じこと。
でもこの申し出を受ければ、学園という乙女ゲームの舞台に上がることも断罪されることもない。自らの死亡を偽装する必要もなく、堂々と貴族の邸で生活することができる。
「出会って間もない上に、まだ十六にもなっていない君からすれば十歳上の私など年寄りで、婚姻相手に見えないかもしれないが」
そもそも、前世で十八歳まで生きていたのだ。大学にも進学して、とんでもない老けた学生とかもいて。バイト先だと上司とか普通に大人だったし。なので二十五歳だというエデュアールはおじさんという気はまったくしない。それにゲームのビジュアルから抜け出したような美形である。身体に精神年齢も引きずられて、すっかり十五歳の気分だったが、前世年齢にプラスして前世に目覚めてからの八年を足すと、ほぼエデュアールと同年代で、元の世界であっても結婚していておかしくない年齢になる。
「君が私の土属性を本気で羨んでくれた時から、私にとって君は特別な女性になったのだ」
それを言うならば、闇属性を悪いものではないと泣かせてくれた時から、私にとっても彼は特別になっていたと気付かされてしまった。
「や、闇属性だから結婚は諦めていて。でもできるなら、どうしても相手に譲れない条件があって」
「聞こう」
「私を裏切らない人。浮気しない人」
実の所、前世での私の死因は、付き合っていた彼氏が私の友人との浮気をしていたと知ったショックで不注意になったあまりの事故だ。裏切りと浮気はそれ以来、地雷になった。闇属性のことがなくとも、恋愛や結婚は無理だと思うくらいには。
「安心すると良い。いい歳をして何だが、私の初恋は君だ。土属性だからとどこの令嬢からも婚約も断られ、学園では勉学に邁進。卒業後には仕事漬けで女性との縁はまったくない」
「でも、ジョゼさんみたいな女騎士とか、侍女とか」
「騎士や侍女はその役目と仕事ぶりは見ても異性だと思ったことはない」
それはそれで彼女たちに失礼ではないだろうか。異性としてでなく正当に働きを評価してくれる上司としては満点でも。だが、貴族子息が遊びで侍女に手を付けたとかいう話がありふれたこの世界で、彼女らを対象外と切って捨てることのできるエデュアールはかなりの好物件でもある。
「で、でも。ずっと庶民になるつもりで、今更貴族の奥方とかやれる気がしないというか」
往生際が悪い自覚はある。だけれども、どうしてももう一歩の勇気が出ない。
「私は今の仕事を続けるつもりだが、現在も社交はまったくしていない。なので、君にもその責を負わせるつもりはない。小さいが領地もあるので、世間にはそちらにずっと引きこもっているということにしてもいい。寂しいので傍にいて欲しいから、振りだけして」
「わ、私も『眠り玉屋』は続けたくて」
「それは是非ともお願いしたい。君の眠り玉のない日々なぞ、もう送れる気もしないからな」
「長期連続使用は認めませんからね!」
彼のセリフに『眠り玉屋のマール』として反応してしまう。薬も魔法も、頼り切りは絶対駄目。
するとエデュアールはきれいな笑みを浮かべて私の髪を掬う。
「ならば、誰よりも近くで私を見張っていて欲しい、一生」
この人と関わるようになって知った事。彼はどれほど無茶な仕事を押し付けられても投げ出さないのだという。上司兼親である宰相には邪険にされても、部下に火の粉が掛からないように立ち回るらしい。生まれから考えられない扱いをされていても、真摯で不器用で誠実な人なのだ。信じてみても良いのでは、と心が揺れる。
「君に受け入れて貰えるまで、何度でも求愛しよう。私は諦めが悪いことには定評があるのだよ?」
「なに、それ」
思わず笑いがこみ上げて声が揺れる。
「眠って見る夢よりも、本物の君と紡ぐ未来が見たい」
もはや、彼に勝てる未来を想像もできなくて、私は求婚に頷いたのだった。
「私も、あなたとの未来が見たくなったわ」
その後のことを簡単に話そう。
エデュアールは私の実家に婚姻を申し込み、王家からも候補解消を告げられていた実家は渡りに船とばかりに了承した。レスタンクールの縁者に嫁ぐのであれば世間体も良い。それはレスタンクール側でも同じで、ブランシャールの娘という看板で受け入れられた。闇属性に顔をしかめられたものの、土属性のエデュアールが高位貴族の令嬢と結ばれる目がないからだ。しかもエデュアールも私も、二人ともが魔力が並外れて多い。将来、生まれて来る子供に期待という意味での了承かもしれない。理由はどうでも良い。認められたもの勝ちである。
新居は、私が購入するつもりだった場所。エデュアールの土魔法と、彼を慕う部下たちが寄ってたかって整地し、私の意見を存分に取り入れた三階建ての瀟洒な邸が見る間に建った。彼は王宮所縁の建築士にも伝手があったようで、端々にまで手の掛かった満足できる邸だ。もちろん、上下水道も完備である。広々とした地下室も作った。空調や湿度の調整も私の闇魔法と彼の土魔法の合わせ技で完璧。
使用人は彼が実家から引き抜いた少数精鋭。エデュアールの属性が土と判明しても真摯に仕えてくれた人間ばかりだと言う。面談しても嫌な感じは受けなかった。内心は闇属性に抵抗があっても、口に出さずに職務に忠実であればまずは合格。眠り玉で今後、懐柔も可能とみた。
邸の内装が終わって家具も用意されてから、私たちは早々に引っ越した。婚約期間中、先方の家で花嫁修業と称して同居する例も少なくはないし、ブランシャール家も早く私を厄介払いしたかったのだろう。反対はなかった。こちらの予想以上の持参金を持たされることになったのは、同格のレスタンクールへの対抗心だったのかもしれないが、くれると言うならば貰っておく。傷ついたマルスリーヌへの慰謝料の代わりだ。
私が十六歳を迎えると同時に婚姻の届け出もされたが、それまでは寝室も別。生真面目なエデュアールは式を挙げるまで唇に触れることさえなかった。恋人としてはちょっと不満。でも夫とすればこの固さも良い点になるだけだ。
式も、こちらは薬屋の老婆だけ、あちらは部下だけを招待というひっそりしたものであったが、実家が金だけ出しデザインは私主導というドレスは良い出来で。エデュアールから贈られた宝飾品で飾られた私は、客観的に見ても相当に美しい花嫁であったと自負している。対となるエデュアールのジュストコール姿もまた、大変に美々しかった。式場となる神殿でお互いから目を離せなくなったくらいには。
夫婦となってからも、彼は私にも仕事にも誠実なまま。私も『眠り玉屋』の傍ら、女主人としても彼を支えた。下手に噂になりたくもないから、社交は夫婦揃ってお断りしている。彼の仕事には王家の機密に関することも含まれていたため、国王からの許可すらもぎ取ってあるそうなので安心だ。
そうして、私たちは穏やかな日々を共に暮らし、互いに支えあい信頼を築いていくことになる。
「さあ、もう良い時間ですよ。おやすみなさい旦那様。あなたに良い夢を」
元はラノベ書きの原作者が原案とシナリオを担当して作ったのが乙女ゲーム『サンク・エトワール』。なので世界観がドアマットヒロインものの小説『光はあなたとともに。~虐げられた令嬢は銀の騎士に溺愛される~』と共通で舞台も同じ国になります。
現カスタニエ男爵は、『お肉』の主人公ソランジュの異母弟。親子二代で似たようなこと(メイドに手を出す)してます。カスだけに。ヒロイン、エステルはソランジュの姪にあたります。
薬屋の老婆は同居の話を断ってきました。「お貴族さまのお邸で暮らせるもんかい」生涯現役を目標にしているらしい。『眠り玉屋』は継続して薬屋で営業中。
乙女ゲームのヒロインは転生者。物語スタート前から王子と知り合えるよう動きましたが、それは王家も望むところで。在学中にとんとん拍子に王子との婚約が調いました。ただ、彼女の思惑と違ったようで、邪魔して恋愛を盛り上げる悪役令嬢はいないし、王子の婚約者となったら護衛や侍女ががっつり貼りついたので逆ハーもできず。更には光魔法の習熟を強制されて自由すらない模様。ただ本人のやる気がないので、せっかくの光属性が発揮される日は遠い。王子の方も婚約してからのヒロインに「なんか思ってたのと違う」となって、関係は微妙に。でも光属性持ちを手放せないので結婚は避けられないよう。
マールがやらかした過去の黒歴史の一部とか、出せなかった設定はこれから活動報告で書く予定。