夜の散歩
僕が真夜中に散歩するようになってから四日目だ。
知らない所には行かないようにしているので、いつも同じ道。
お父さんもお母さんも僕の散歩には気付いていない。
今日も玄関からこっそり抜け出す。
まず神社へ向かった。
たまに車は通るけど人は誰も歩いていない。
神社へ続く階段を登っていると、のっぽのおじさんとすれ違う。
毎日会うから、いつもこの階段を登り降りしているのだろう。
鳥居を通ってから林に向かう道へ入って行く。
この林に僕はときどき遊びに来る。
昼間でも薄暗いので、一人で来ちゃ駄目、とお母さんは言っているけど。
林の真ん中で十歳くらいのお兄ちゃんが、一人で遊んでいるのが見えた。
体操服みたいな白い半袖半ズボンでいて寒くないのかな。
林を抜けると小学校の裏に出た。
僕が来年入る学校だ。
小学校の横を歩いていると、プールのそばの金網にお婆さんがしがみついていた。
坂道を登って細い道に行く。
昔ここで女の人が殺されたらしい、と近所のお姉さんが言っていた。
そのせいか今日も道端で、男の人がうずくまって拝んでいた。
国道に出た。
信号のそばで、右手が無い人が立っていた。
僕に話しかけたそうだった。
少し恐くなって、家に帰る事にした。
こっそり玄関から入り、居間に行く。
お父さんとお母さんがあお向けで寝ていた。
僕もそっとそばで横になった。
お父さんとお母さんの血を避けて。