タイトル未定2024/07/22 14:22
ある日のこと
「どんだけ言ったらわかるの?いい加減気づいてよ!あのね…あいつはね…」
部屋に女性の怒鳴り声が響いた。呆然と苛立ちを含んだその声は、どこか寂しそうに、しかし鮮明に俺の脳内に染み付いた。俺は彼女が怒る理由も分からないままコーヒーを飲んでため息をついた。
「そっちこそ何いってんだ?お前こそ大丈夫かよ」
彼女は中学校以来の友達で大学も同じ。いわゆる親友ってやつだと思う。(一応言っておくが恋愛感情はない。男女の仲は成立すると俺等が証明した。)
そんな彼女を俺が怒らせたのは最近が初めてだ。これまでは彼女の気持ちがまるでわかっているかのように意思疎通した。喧嘩だってもちろんしなかった。なのに最近ずっと彼女を怒らせている。俺の言動一つ一つに刃物を振るように怒っている。
もう我慢できなかった。俺が俺でいるだけで彼女は彼女じゃなくなっていく。俺は悪くない。俺は悪くない。100%彼女が悪い。絶対あいつが悪い。はずなのにでも、でも、なんで……
なんで彼女はあんなに変わってしまったのだろうか…
俺はついにここから飛び出した。
俺が落ち込んだとき、辛いとき、嬉しかったとき、必ず行くところがある。恋人の家だ。(まぁ俺が恋人だと言い張っているだけだが。)大学から徒歩20分のこの場所はおそらく一番落ち着く場所だ。少し休んメニュー家の前まできてピンポンを押した。
「居るか?俺だ。入るぞ」
そう言って俺は彼の家に入った。
彼の家はいつも整然としている。彼の性格がうかがえる程に片付いているのだ。しかし今日はいつも以上にきれいな気がする。(ただの俺の感想。)まぁ大掃除でもしたのだろう。
「やっほー最近どぉ?」
「ちょっと聞いてよ。あのいつも言ってるあいついるじゃん。あいつがさぁなんか俺にいっつもキレてくるの。もー意味分かんないわw。」
彼はいつも無口だからほとんど話さない。まぁ俺はちょっとおしゃべりだから助かるんだが。この空間が俺の中で一番だった。
ちょっと時間が経って
「今日はもう帰るわ。またな。」
そう言って俺は彼の家をあとにした。
このとき、俺はまだあんな事が起こっているなんて知らなかった。いや、知らないと自分の中で嘘をついていたのかもしれない…。