隣国の悲恋
「メリーの夫のシルバ伯爵は本当にかっこいいわよね!」
「そ、そうかしら。アメリアさんの旦那さんも勇ましくて素敵だと思うわよ」
貴族女性のお茶会に招待された私は、横にいるアメリア伯爵夫人と世間話を楽しんでいた。
「ありがとう。でもうちの旦那は勇ましいと言うより粗暴よ!食べ方は汚いし、すぐ部屋を汚すし、挙げ句の果てに風呂に入らない事もあるんだから!」
「まあまあ」
「シルバ伯爵はそんなことしないでしょう!?だってあんなに礼儀正しくて真面目なお方、本の中でしか見たことが無いわよ!」
家では結構甘えん坊なんだけどなあ……
「シルバ伯爵ってまるで本の中に出てくるルシアス王子みたいよね!」
「ルシアス王子?」
「知らないの!?今王都で話題のラブストーリーよ!?」
「……ちょっぴり耳にしたことはあるけど」
「なんてもったいないの!いいわ、私が説明してあげる!この物語は隣国のオリエント王国で実際に起こったことを題材にしているらしいのだけどね……」
それって今からネタバレをするってこと?そういえばアメリアさんの辞典に配慮って言葉は無かったわね……
「ルシアス王子っていうすごくイケメンの緑色の瞳をした方が主人公でね、まあシルバ伯爵の瞳が銀色じゃ無くて緑色だって考えてもらえばいいのだけどね」
アメリアさんがひどく早口でしゃべる。興奮している時の彼女は大体こんな感じで、なんて言っているか聞き取るので精一杯だ。
「それでルシアス王子は王国の学校で好きな子が出来たのよ!名前はレイって子だったんだけどその子と付き合うのは問題があってね。なんだと思う!?」
「……平民だったとか?」
「そうなの!!特待生として学校に入ってきたレイとルシアス王子はお互いに惹かれ合っていたのに、身分という壁によってその恋が引き裂かれてしまうの!!」
アメリアさんは声を大きくしてそう言った。
……この反応、ずいぶんと話が盛られているようね。
「……それでその後はどうなるの?」
「ルシアス王子はレイと一緒に平民となって暮らそうとするんだけど、結局王様に連れ戻されてしまって悲しみのあまり服毒自殺をしてしまうの!」
「まあ」
「それを知ったレイは誰にも行き先を告げず、どこかに消えてしまったのよ!」
「じゃあバッドエンドなのね」
「そうね!一応後日談として天国で楽しく一緒に暮らしてるらしいわ!」
小説らしいと言えば小説らしいが、なかなか壮絶な終わり方ね。事実は小説よりも奇なりと言うけれど、今回の場合は違いそうだわ。
「なかなか面白そうなお話ですね。良かったら今度読んでみようかしら」
「ぜひ!もし良ければお貸しいたしますわ!他にもレイの知略による活躍とか、ルシアス王子の魔法によるスパイ活動とか見所がたくさんあるの!!……そういえばメリーの夫のシルバ伯爵は固有魔法が使えるのよね?一体どんな魔法でいらっしゃるの!?」
……まあ言っても大丈夫よね。
「そんな高尚な魔法じゃないわよ。ただ瞳の色を自由に変える魔法よ」
私はにっこり笑ってそう言った。
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