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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第78話 倒れたゲリマン皇帝(2)

挿絵(By みてみん)


「ふぁー」


一晩中一睡もできなかった私は、赤くなった目をこすりながら窓の外をじっと眺めた。

真っ黒な暗雲が昇る太陽を遮ったせいか、まるで真夜中のように四方が真っ暗だった。

私は朝の準備を早く終えた後、ダルニング皇子の寝室に行き、朝の日課の準備を手伝った。

ゲリマン皇帝が倒れた後、授業がなくなったダルニング皇子は食事を終えてすぐに自分の書斎に入り、本を読みながら一日を過ごした。

彼は今にも何か起きそうな危い局面の皇居で、自分の不安な気持ちを落ち着かせようと努力しているようだった。

私は非常に残念な気持ちになったけど、ダルニング皇子をただ眺めるしかなかった。

女中長のドロシー夫人も、ダルニング皇子の後ろで黙々と彼を見守った。

このような時に席を外すのが道義ではないと思うけど、一刻も急用なのでドロシー夫人に別途面談を要請した。


「あの…、ドロシー夫人。すみませんが、今日一日年次休暇を取りたいです」


「年次ですか?」


「はい。個人的に急用がありまして…」


「エレインさんが年次休暇を出したことを知れば、ダルニング皇子様が少し寂しがると思いますが、分かりました。皇子様には私がお話をよく伝えます」


「はい、ありがとうございます。夫人」


私はドロシー夫人に丁寧に頭を下げて挨拶をした。

今日すべきことが多く、少し急ぎ足で皇子宮前に備えられた傘を取り出して皇室の医員局に向かった。


(ドシャドシャ)


(ドボン)


平らな石でよく敷かれた皇居の道だったけど、たまに窪んだ所には雨水がたまっており、所々に水たまりがあった。

気をつけて歩いたのに、早く歩いていたら、いつの間にかスカートの裾が雨水でびしょびしょになってしまった。

本来は皇室の医員局で仕事をした後、すぐにハエリス公爵家に出発しようとした。

しかし、どうしても自分の部屋に戻って着替えなければならないようだった。

私はしばらく歩いて皇居別館の皇室医員局に到着した。

以前はバルカルン医員が薬剤倉庫にいたけど、転勤後、今はジョベプ医員が薬剤倉庫の管理をしていた。

幸い、バルカルン医員が転勤する前に、ジョベプ医員に予め言質を与えたようなのか、私は薬草倉庫からいくつかの薬草を取り出して使うことができた。

激しい雨脚をくぐり抜けてやってきた私を、ジョベプ医員は非常に怪訝そうに見つめた。


「おはようございます、チョベプ医員様!」


ゲリマン皇帝が倒れた後、皇室医員局も大変忙しかったようなのか、ジョベプ医員が憔悴しきった格好で口を開いた。


「エレイン!今日はなぜ朝から訪れたんだ?こんなに雨がたくさん降っているのに…」


「はい、ダルニング皇子様が最近夏風邪気なので薬茶を作ってあげようかと思いまして」


「あ、そうなんだ!」


「薬剤倉庫に入ってみてもいいですか?」


「いいよ。さあ、ここ鍵ね。用事が済んで俺に鍵を返して帰ったらいいよ」


私はジョベプ医員に淡い笑みを浮かべながら頷いた。


鍵で倉庫のドアを開け、薬剤倉庫に入り、私が必要な薬剤を細かくチェックした。

幸い、皇室の薬草倉庫には市中に手に入らない薬草まできちんと保管されていた。


「ゲリマン皇帝をまず起こさなきゃ。恐らく起こしても最大半年しか生きられないと思うけど…」


私はゲリマン皇帝の解毒のための薬草を選び、私が持ってきたかごに慎重に入れた。

私が持っていく薬草をリストに丁寧に書き留め、鍵をジョベブ医員に返した。


「もう帰りますね。ジョベプ医員様」


「そうか、気をつけて行きなさい。エレイン」


「ドボンドボン」


水たまりを避けて歩いたけど、スカートだけでなくいつの間にか靴の中までびしょびしょに濡れてしまった。

皇子宮の宿所に到着した私はびしょ濡れのワンピースとタイツを脱いで綺麗にシャワーを浴びた。


「うっ、寒い」


冷たい水でシャワーを浴びたら全身がぶるぶる震えているようで、しばらく布団をくるくる巻いて体を温めた。

ある程度体が温まるとタオルで私の濡れた髪を数回叩いて乾かした。

髪の毛が乾いてから髪の毛を何度も回して、綺麗にアップし、薄く化粧した。

私の部屋のたんすから色々な服を見ていたら、カラが首まで覆っている薄黄色のワンピースを取り出した。

特に何も言わなかったけど、恐らくハエリス公爵は私の首のラインが見えない端正な服を好むようだった。


「あれ?ハエリス公爵閣下に行くには早すぎる時間だったな」


あまりにも事案が重要で急いでたら、私の心が焦っていたようだ。

ハエリス公爵がまだ邸宅にいない時間なので、私は再びタンスの中のハンガーにワンピースをかけておいた。

思ったより時間がたくさん残っているようで、ひとまずゲリマン皇帝を起こす解毒剤から作ればいいと思った。

薬草かごをしばらく眺めた後、自分の部屋のたんすの下に隠しておいた色んな道具を慎重に取り出した。

机の上にいくつかの薬草の葉と必要な道具を慎重に乗せ、頭の中に数多くの薬学知識を思い浮かべた。

ベル執事を中毒させた毒を時々研究したため、ゲリマン皇帝を倒した毒草のリストが思ったより簡単に整理できた。

頭の中で全ての計算を終えた後、慎重な手つきでゲリマン皇帝を目覚めさせる解毒剤を作り始めた。


***


(パカラッ)


「どうどう」


私は深夜、皇居前に建っている馬車に乗って約40分を走り、ハエリス公爵家の邸宅を訪れた。

馬夫に料金を支払った後、慎重に傘を広げて馬車から降りた。

ハエリス公爵邸宅の窓際には、暗闇を照らすいくつかのろうそくの火が仄かに照らされていた。


(カンカン)


公爵家の邸宅の正門にある鉄門をたたくと,しばらくして執事のアンドリューが出てきて私を迎えた。


「エレインさん。こんな遅い時間にどうしたんですか?」


「ああ…、はい。夜遅い時間に失礼になると思いますが、急用がちょっとあって。もしかして、ハエリス公爵閣下はお宅にいらっしゃいますか?」


「はい、いらっしゃいます。夜風がとても冷たいですね。さあ、どうぞお入りください」


「ありがとうございます、アンドリュー執事様」


アンドリューは私をハエリス公爵の応接間に案内し、温かい紅茶を出してきた。

暖かい紅茶が冷めてもないのに、応接室からノックの音が聞こえてきた。


(トントン)


ハエリス公爵が気になる表情でドアを開けて応接室に入った。

夜遅くまで働いていたようなのか、彼の目には疲れがいっぱいに見えた。

私は席を立って心配そうな目つきで彼をじっと眺めた。

ハエリス公爵がかすかに微笑んで、ゆっくりと近づいて私の耳下の髪を耳にかけながら優しく声をかけた。


「こんな遅い時間にどうしたの?エレイン?」


疲れを感じさせないように目に力を入れているのが見えたので、彼はとても気の毒だった。


(グイッ)


私はハエリス公爵を私の胸にギュッと抱いて黙って彼の背中を叩いた。

ハエリス公爵は当惑したけど、すぐ私が彼を抱きしめる力よりも強く私をギュッと抱きしめた。


(トントン)


私たちはしばらく黙ってお互いをギュッと抱きしめた。

ハエリス公爵の胸からは、私が作ったペパーミントキャンデの匂いがほのかに漂っていた。

ペパーミントキャンデの中には疲労回復に良い薬草をいくつか混ぜたものの、厳密に解毒剤だった。

しかし、仕事中毒者のハエリス公爵は、これまでこのペパーミントキャンデを疲労回復剤のように飲んでいたようだった。

幸いなことに、ペパーミントキャンディはたくさん食べても耐性が生じない解毒剤だった。

いつも陰毒に苦しんだハエリス公爵のために、私は数多くの薬学知識を読みふけ、解毒剤を作った。

多くの死の峠を越えながらも、特に耐性が生じないことに主眼を置いたけど、なぜか私が作った解毒剤が彼には疲労回復剤になってしまったのだった。

私が作ったペパーミントキャンディーを彼がしょっちゅう口にするようになるとは作った私も思わなかった。

ハエリス公爵の温かい胸に抱かれて、ふと私がここに来た理由を思い出した。

私は早く気を取り直して彼の懐から抜け出た。

ハエリス公爵がとても残念そうな表情で私をじっと見つめた。


「あの、公爵閣下。どうも陛下は毒に中毒されたようです!」


私は何の説明もせずに単刀直入に彼に話した。

しかし、ハエリス公爵はすでに知っていたようなのか、あまり驚かない様子だった。

私は乾いた唾を喉からごくりと飲み込んだ後、再び彼に口を開いた。


「どうも毒を使った犯人は、皇后陛下、四人の皇妃様、そしてゲリマン皇帝陛下と持続して寝床の世話をする人たちの中にいるようです」


ようやく、ハエリス公爵の目に異彩が浮かんだ。

ハエリス公爵が優しい恋人から上司のように変わり、私に催促するように聞いた。


「それをどうやって知ったの?エレイン?」


「はい、今回倒れたのは自然な病気で倒れたわけではないようでして。それで皇帝宮に勤めるメイドの友達に頼んで寝殿に入りました。自分で陛下の体調を調べてみたら、分かるようになりました」


ハエリス公爵は私の話を聞いて突然深くため息をついた。

彼は深刻な表情で私の両手をしっかり握って真剣に話した。


「エレイン。そうじゃなくても、その報告を聞いて驚いたよ。幸い皇帝宮を守る騎士はこっち側の人間だ。もう君を知っていたから君が無事に抜け出すことができたんだ。どうか何もしないでほしい。危なすぎるんじゃないか…?」


心配そうな目つきで私を見つめるハリス公爵の言葉に、ようやくゲリマン皇帝の寝殿に入ったことが思ったよりあまりにも簡単だったことに気づいた。

ハエリス公爵は私の頭を軽くなでながら重い口を開いた。


「エレイン、ベイリオ皇国内の問題は私が関与しているので大丈夫だ。しかし、もし敵に君が露出され俺が手を打てない状況になったら、その考えだけでもぞっとする。普通に人の中に隠れていてくれないか…?俺がこうお願いする」


考えてみると、ハエリス公爵でなかったら、今私はまともにここにいることもできなかったかも知れない。

純粋に私を手伝ってくれたジェインとともに皇居地下の監獄に入れられそうになったと思うと、鳥肌が立った。

私はハエリス公爵に頑張って平然と笑みを浮かべながら言った。


「私を守ってくれてありがとうございます。私はただ事が上手くいったと思いました。ハエリス公爵閣下、それでも毒に関しては皇宮医員様より私の方がましだと思います。私を信じてください。お願いします」


私が言った言葉に彼は何の返事もせず深く沈黙した。

たくさん力の入った彼の手を私の指で一つずつゆっくり伸ばして、静かに口を開いた。


「陛下の中毒はずいぶん前からでした。毒の配合を見ると、グレース公爵閣下、ベル執事様、ジェイラル皇后陛下宮のギャラリーの絵、魔手の森まで同一人物と推測することができました。私が犯人は皇帝に近い人だと推測するのは陛下の体に男女間で情事する時だけ深く積もる「ベルカトク」が長く残っていたからです。「ベルカトク」は毒があまりにも密かで、やられた人は自分が毒にやられたのも知りません。日常生活も無理なくできます。この毒の長所は…、毒が発現する時間を調節できるということです。今日殺すか、明日殺すか、1年後、10年後に殺すか。毒を注入した人の思い通りに可能です。毒に露出する時間が長くなればなるほど、発毒する時、苦痛が露出した時間ほど強度も非常に強くなります。恐らく陛下の発毒が本格的に始まれば、全身が切れて腸が溶ける痛みの中で死んでいくと思います」


いつの間にかハエリス公爵は私の話を真剣な表情で傾聴していた。

私は彼の大きな手を数回優しくたたいて、慎重に言葉を切り出した。


「最近、フレンシートと似たような種類の毒の触媒剤に露出しているようなんですけど…、誰がどのように露出させたのか探せばいいと思います。ただし…」


ハエリス公爵は私が早く言ってくれるのを待っているようだった。

じっと私を見つめる彼の視線に、私はしばらく息を整えてから口を開いた。


「なぜ今皇帝を倒したのでしょうか?私はこれが一番疑問でした。敵が何か大きな陰謀を企んでいることは明らかです。このように長い間緻密に準備してきたことを見ると、確かにベイリオ皇国に悪いことを企んでいるようです…」


私は私が持ってきた解毒剤をハエリス公爵の前に取り出した。

彼は何も言わずに私が持ってきた瓶を持ってあちこち振りながら詳しく調べた。


「それで犯人を突き止める時間を稼ごうと作ってみました。一旦皇帝陛下を起こさなければなりません」


とても驚いた表情でハエリス公爵が私に尋ねた。


「それが可能なのか?」


「はい…。しかし半年以上は生きられないでしょう。それも私が陛下のそばにいてこそ半年くらいです」


私の返事はハリス公爵のハンサムな眉間が深くしわくちゃになった。


「それでなんですけど、公爵閣下、私に身分を一つ作っていただけますか?」


私は一晩中悩んだ考えを慎重に彼に話を切り出した。

ハエリス公爵が私を疑問な目つきでじっと見つめた。


「ベイリオ皇国の社交界に興味のない高位貴族家の令嬢。秘密に包まれている女解毒師、黒髪に白い肌、冷たくて冷笑的な性格、化粧は濃くする方…。そして黒い服を主に着る女性」


あまり理解ができていないように、ハリス公爵は渋い表情で私に質問した。


「今、あれは何だ?エレイン?」


「実際の私とは完全に違う人物でなければならないので、正反対のイメージで考えてみたんです。仮想人物を現実に作るための作業と言いましょうか。名前は何がいいと思いますか?ハエリス公爵閣下?」


私の提案にハリス公爵が深いため息をつきながらとてももどかしい表情を浮かべた。

危険な事に私を引き入れたくないことがはっきり見えたけど、この仕事に適した人が私しかいないことを彼はよく知っていた。

深く悩んだ末、ハエリス公爵の重い口を開いた。


「君の名前はエリスってしよう…」


「はい。エリス…。いい名前ですね。ところで「ハ」の字だけをつけると、ハエリス公爵閣下の名前ですよ?ハ…エリス?」


冗談っぽくない私の冗談に、ハエリス公爵の口元が魅惑的に少し上がった。


「うーむ…、これからは公爵閣下と呼ばないで俺の名前を呼んでくれ、エレイン。今のようにね」


突然の彼の言葉に急に私の心臓がドキドキと早く動くようだった。

ハエリス公爵と口づけをして愛を分かち合ったより、なぜか彼ともっと親しくなった気がした。


「ああ、分かりました」


ハエリス公爵はしばらく悩ましい表情で私をじっと眺めた。

私が怪訝な目つきでハエリス公爵を見つめると、彼の顔は首まで赤くなったようだった。

ハエリス公爵はとても照れくさそうな笑みを浮かべながら私に口を開いた。


「夜遅くなったな。明日俺と一緒に馬車に乗って皇居に行こう。エレン夫人が案内してくれるよ。エレイン」


「はい、ハ…エリス…」


何だかハエリス公爵の顔にいたずらっぽく意地悪な表情が浮かんだようだった。

彼は私に近づいて耳元にかすかな声で小さくささやいた。


「この業務だけ終えて…、行くよ。待ってて。エレイン…」


私はどうしてもハエリス公爵に答えられず、恥ずかしさにそっと首だけ頷いた。

私の全身はまるでトマトのように赤く熟したようだった。

ハエリス公爵の赤い唇が魅惑的に高く上がった。

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