第76話 気づいた彼の心
(バタバタ)
広くて涼しい青空に白い鳩の群れが青空を高く舞い上がった。
カルロス皇太子とセレナはサンドイッチ屋で昼食をとった後、ベイリオ皇国の首都が一目で見えるトレバン城郭に登った。
色とりどりの建物の屋根と小さな点のような人の動きが遠くからでも慌ただしく見えた。
広々とした城郭から見下ろす都市の全景はまるで一幅のよく描かれた風景画のようだった。
(ヒュー)
城郭の石の隙間に挟まって育っている草と野花がそよそよと吹いてきたため、何度も揺れた。
カルロス皇太子の白に近い金色の髪もそよ風でひらひらとなびいた。
透明で清明な彼の緑瞳は平和な都市の全景をじっと眺めていた。
セレナは風になびく自分の長い髪を彼女の細い指でねじって綺麗に耳にかけた。
二人が一緒に立っている姿はまるでよく似合うカップルのように見えた。
彼らはしばらく黙って涼しい風に吹かれながら都市の風景を鑑賞した。
ふとセレナの美しい声が鑑賞に耽っているカルロス皇太子を悟らせた。
「あの…、カル?」
切ない表情で自分を呼ぶセレナの声にカルロス皇太子は疑問そうな表情で顔を背けた。
「うん?どうした、セレナ?何か言いたいことでもある?」
「あ、いや…。久しぶりに二人でこうして一緒にいるのが嬉しくて」
「うん、そうだね。俺も」
彼女は何が恥ずかしいのか、カルロス皇太子をまともに見つめられず、顔を赤くしながら途方に暮れた。
以前だったら、このようなセレナの姿をきっと愛おしいと思ったはずだった。
しかし、なぜか、もう彼女に何の感情も生まれなかった。
セレナと顔を合わせるのが気まずくなったカルロス皇太子が、再び顔を背けて静かに都市を見物した。
以前と違ってカルロス皇太子がこれといった反応を示さないと、セレナのお腹の下から気持ち悪い予感がした。
セレナは不快な表情を素早く消し、カルロス皇太子を優しい目で見つめながら口を開いた。
「あの…、カル?」
「うん?セレナ?」
「あ、いや。ただ…」
「プッ。何度も言いたいことがあるみたいだけど、すっきり言って。セレナらしくなく真を置いて…。それで、どうしたの??」
カルロス皇太子が意地悪な表情でセレナに質問した。
彼女はカルロス皇太子の目を合わせることができず恥ずかしそうに言った。
「あのね、カル。もしかして私をどう思っているの?友達じゃなくて異性でね」
カルロス皇太子の青緑色の瞳がまるで地震のように激しく揺れた。
彼は彼女にどう話せばいいかわからず、一瞬頭の中が真っ白になったようだった。
自分の目の前に立っているセレナは確かに日々が違ってもっと美しくなっていた。
しかし、ある瞬間から彼の心の中に一人の女性がいた。
⦅エレイン⦆
最初は自分の愛に邪魔なハエリス公爵につけるチェス版の駒のような存在だった。
セレナのそばにいるハエリスの公爵を離れさせる人だと思い、彼女を注意深く見守っていた。
カルロス皇太子の思い通り、ハエリス公爵はエレインに心があった。
最初は本当に良かったと思ったが、時間が経つにつれて、ハエリス公爵がもう彼女に会わないでほしいと思った。
ある日から広い皇居の中で偶然出会うエレインを探している自分を発見した。
数日彼女と会えなかった日には訳もなく胸が苦しかった。
それでわざわざグレース皇子宮に遊びに行ったり、何事もなくダルニング皇子宮にたびたびお茶を飲みに行くようになった。
しかし、彼女に対する自分の気持ちに気付いた時は、すでに全てが遅すぎてしまった後だった。
彼女の口から直接ハエリス公爵を愛していると聞いたときは、ショックでまともに体を支えられないほどだった。
まるで鋭い刃物で心をめちゃくちゃに乱されるような気分だった。
もし過去に戻ることができれば、ハエリス公爵にエレインが皇居で働いているとすぐに知らせるだろう。
魔手の森に一人旅立つ彼女の手を握って、ハエリス公爵と会うことができないようにするだろう。
いや、エレインと一緒に魔手の森に一緒に行き、彼女がハエリス公爵ではなく自分だけを見つめさせたかった。
数多くの後悔と痛い感情が彼の心を冷ました。
ということでカルロス皇太子はもうセレナを愛していないことに気づいた。
友達以上の感情がもうセレナに芽生えなかった。
変わってしまった自分の気持ちを知らないセレナは、満面に顔を赤らめたまま、じっと返事を待っていた。
カルロス皇太子が少し困惑した表情でセレナをじっと見つめた。
セレナは期待に満ちた熱い視線で彼を横目で眺めていた。
長い沈黙が流れた後、カルロス皇太子が慎重に彼女に言い出した。
「セレナ。俺が思うセレナは美しい女性だよ。他人のための奉仕精神は誰もついていけない。それでセレナは異性的でも、友達としてもとても魅力的な人だと思う」
優しいカルロス皇太子の言葉に彼女の両頬がさらに赤くなった。
セレナは恥ずかしそうに両目を床に伏せ、震える声でカルロス皇太子に聞いた。
「じゃあ、カル。私のことをカルの女だと思うのはどう?」
セレナはカルロス皇太子をまともに見つめられず、ひたすら罪のない地面だけを見つめていた。
カルロス皇太子は彼女の姿をしばらく眺めて、深くため息をついた。
男女の微妙な気流が二人の間をひそかに漂っていた。
カルロス皇太子が慎重にセレナを見つめながら口を開いた。
「あの、セレナ…」
セレナは恥ずかしがりながらカルロス皇太子を誘惑するような目つきで頭を上げた。
「うん、カル」
「ごめんね、セレナ。今は君を俺の恋人として受け入れることができないようだ。しばらく…、考える時間を持とう」
セレナは自分のふっくらとした唇を強くかみ締めた。
恥辱感と恥辱感がまるで嵐のように彼女の心の中で激しく吹き荒れた。
素早く平常心を取り戻したセレナは、慎重な足取りでカルロス皇太子に近づいた。
彼女は花のような明るい笑顔でカルロス皇太子の唇に彼女の唇を合わせた。
しっとりとした彼女の唇がカルロス皇太子の口の中に徐々に染み込んだ。
突然彼女の口づけに当惑したカルロス皇太子の顔が赤く燃え上がった。
セレナは自分の唇を離し、カルロス皇太子を誘惑するかのように彼の耳元に小さくささやいた。
「待ってるよ、カル。それでも私たちがこの程度の線は越えられるんじゃないかと思って…」
魅惑的な笑みを浮かべていたセレナがカルロス皇太子の唇をさらに深く飲み込もうとした。
しかし、今度はカルロス皇太子が先に彼女の肩をつかんで制止した。
「ごめん…、セレナ。本当に申し訳ないけど、俺たちこうしたらダメだと思う」
カルロス皇太子がセレナに「とても申し訳ない」という表情を見せた。
セレナは大きな傷付いた表情でカルロス皇太子をぼうっと見つめた。
当然だと思っていた彼の愛がまるで砂の城のように一瞬「がらがら」と崩れた。
彼女はどうしてもカルロス皇太子に聞きたいことを言い出すことができなかった。
カルロス皇太子と別れてバルタン家の邸に戻る間、彼に聞きたかった質問が口元からずっと絶えなかった。
「カル…、もしそのエレインのせいなの?」
***
緑豊かに生い茂る6月のある日、私はキャサリン伯爵夫妻の招待を受け、ダルニング皇子とともにフィオール伯爵家の屋外乗馬場に到着した。
青空に綿あめのようなわた雲がふわふわと風に押されてどこかへ去っていた。
緑の芝生が広々とした草原によく敷かれていて、私の目はとても涼しかった。
「わぁ!おばさん!とても素敵ですね。ここは皇居の乗馬場よりもっと良いようですね!」
ダルニング皇子が大喜びで明るく微笑んだ。
キャサリン伯爵夫人も、ダルニング皇子が喜ぶと同時に気分が良くなったみたいだった。
「ダルニング皇子様。僕がお迎えします」
「はい!おじさん。今日はよろしくお願いします」
私とキャサリン伯爵夫人は屋外のテーブルの椅子に座って2人の姿を遠くから見守った。
デーモン伯爵がダルニング皇子にあれこれ熱心に教えていたけど、その姿がまるで父と息子のように見えた。
「キャサリン!デーモン伯爵様は子供がお好きなようだね。ダルニング皇子様とよく遊んでくれるみたいだよ」
私の言葉にキャサリン伯爵夫人が照れくさそうに微笑んだ。
「うん、そうみたい。このごろ時々子供の話をするんだよね。でもまだ新婚だから時間は多いし。あ!そうだ、乗馬を習いたいって言ったよね?」
キャサリン伯爵夫人の言葉に私はじっと頷いた。
「うん!今まで乗馬を学ぶ機会がなかったんだ。それで後で機会があればぜひ習いたいよ…」
「フフッ、だから私がエレインのために準備したものがあるの!この前の誕生日パーティーにエレインが私を手伝ってくれたし、私もエレインにあげる特別なプレゼントを用意したよ!」
私はキャサリン伯爵夫人の言葉がどういう意味か分からず戸惑った。
キャサリン伯爵夫人の手ぶりにメイド2人が私に近づき、私を乗馬場の別館の別室に連れていった。
私は2人のメイドに助けられて生まれて初めて乗馬服を着ることになった.
乗馬服の上着は紫色に金色のボタンが高級についており、下衣は黒に近い紺色のズボンだった。
私がドアを開けて出て行くと、ドアの外で待っていたキャサリン伯爵夫人がびっくりして大声で言った。
「うわぁ!エレイン、本当にきれい!かっこいいね!本当によく似合うよ!」
大騒ぎするキャサリン伯爵夫人の言葉に私はなんだか恥ずかしくなった。
「さあ、ついて来い!今日、私が特別に招待した乗馬先生がいらっしゃるの」
「うん?乗馬先生?」
非常に意気揚々とした表情のキャサリン伯爵夫人が伯爵家の他の乗馬場に連れて行った。
乗馬場の前には黒い乗馬服姿のハエリス公爵が私をじっと見つめていた。
勿論、ハエリス公爵が非常にハンサムで格好いいということをよく知っていたけど、乗馬服を着ている彼の姿を見ると、おのずと感嘆の声が上がった。
私は面食らった表情で、ハエリス公爵に口を開いた。
「ハエリス公…爵閣下?ここにはどうやっていらっしゃったんですか?」
「うーむ、手紙が来て…」
そっと微笑むハエリス公爵の言葉に私はキャサリン伯爵夫人を驚いた目で見つめた。
「フフッ。私が公爵家に手紙を送ったんだけど…。お忙しいようで大きな期待はあまりしなかったのよ?まあ来られなかったらカルロス皇太子様にお願いすると言ってはいるけどね。ところで、あら! その日すぐ返信が来たんだよ!さあ、行ってみて」
キャサリン伯爵夫人が恥ずかしがる私の背中を押して、ハエリス公爵に送った。
「うちのエレインのこと、よろしくお願いします!ハエリス公爵閣下!」
キャサリン伯爵夫人が私たちに大きく手を振りながら席を離れた。
私をじっと眺めているハエリス公爵の顔をじっと見上げた。
黒真珠のような彼の黒い瞳が私の頭からつま先まで一度ざっと見て降りてきた。
なぜか恥ずかしくなるような気持ちで彼の顔を見ることができず、頭を下げた。
「プッ」
ハエリス公爵が小さな声で笑い、すぐに優しい声で私を呼んだ。
「エレイン、まずは馬から選んでみようか?」
「あ、はい!」
ハエリス公爵と私は共に手を取り合ってフィオール伯爵家の馬場に向かった。
馬場の中にはつややかな馬がのんびりと干し草を食べていた。
ハエリス公爵が私に選んでくれた馬は目がとてもはっきりしているような白い言葉だった。
「エレイン、腰をもう少しまっすぐに伸ばして」
「は、はい!」
「馬は敏感な動物だ。エレインが怖がると言葉も恐れる。そうすると大きな事故になるかもしれない」
「はい、分かりました。公爵閣下」
「ゆっくり馬場を一周してみよう。 姿勢を正しなさい。腰を曲げないで」
「はい、はいっ」
私は平凡な恋人たちのデートのようにロマンチックなことを内心期待していた。
しかし、ハエリス公爵は一日中私を調練するかのように馬に乗る方法だけを熱心に教えてくれた。
おかげである程度馬に乗る方法の基礎を固めることができたけど、いつの間にか私の両頬は不満そうに膨らんだ。
いつの間にか中天に浮かんでいた日が沈み、地平線に越えて辺りが暗くなった。
私はハエリス公爵の手を握り、疲れた体で馬から降りることができた。
「今日大変だっただろうね。皇居に帰ったら温かいお湯に浸かって。そうじゃないと全身が痛くなるよ」
「はい…」
ハエリス公爵は私に優しく言ったけど、さっき馬の乗り方を教えるときの厳しさが思い出され、訳もなく悲しくなった。
夫婦の仲や恋人の間で運転を学んではいけないと言っていたのに、やはりその言葉が合っていたようだ。
悲しく泣きべそんでいた私に急に彼の暖かい唇が私の額に響いた。
「すねた?エレイン?」
「あ、違います。大丈夫です。おかげさまで、一人で馬に乗ることができそうです」
「エレイン。俺が今日、厳しくしたのは…」
「え?」
「これからは他の人と一緒に馬に乗らないでほしいと思って。今日大変だったなら本当にすまない、エレイン」
優しく私を見つめるハリス公爵の眼差しにとがった私の心がとろとろと溶け出した。
私はつま先を高く上げて彼の唇に「チュッ」と軽くキスした。
ハエリス公爵が驚いた表情をし、いつの間にか彼の赤い唇の口元が大きく上がった。
彼は私の腰を腕でしっかりと閉じて、私の熱い視線で私の顔をじっと見つめた。
「愛してるよ、エレイン」
「はい、私もです」
私たち二人はしばらくその場でお互いに対する心を深めた。
乗馬の練習を全て終えた後、ハエリス公爵は急ぎの仕事を片付けるために夕食も取れずに出発した。
私は食べることも休むこともできず仕事ばかりしているハエリス公爵の健康がとても心配だった。
皇居に到着した私は、ハエリス公爵の助言どおり皇居の管理課に料金を支払い、温かいお湯をもらってきた。
温かいお湯に浸かっていると、体の疲れがひときわほぐれてきたようだった。
一日も早くすべての問題が解決され、ハエリス公爵が気楽に食べてゆっくり休むようになったらいいなと思った。




