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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第74話 キャサリン伯爵夫人の誕生日パーティー

挿絵(By みてみん)


5月の香ばしい花の香りが庭園に満ちたある日、ダルニング皇子宮に皇子の叔母キャサリン伯爵夫人が訪ねてきた。

夫婦が一緒にジュリエ皇妃に会った後、デーモン伯爵が急用がある隙を狙って甥のダルニング皇子に会いに立ち寄ったのだった。

私は皇子宮に久しぶりに来た客に、出すお茶を楽しみに準備していた。

さっきちらっとキャサリン伯爵夫人の顔を見たら彼女の顔色がよくないのが気になった。

それで彼女に疲労回復に良いお茶を作ってあげようと思った。


(ポンポン)


「あら?」


茶葉を混ぜている時にあらかじめ準備しておいたツカラの花びらの上に小さな血がぽたぽた落ちた。

私はびっくりして私の鼻を急につまんでスカートのポケットからハンカチを取り出して小鼻を押さえた。

どうやら、ハエリス公爵と毎晩密かに会うことで疲れていたようだった。

幸い鼻血はすぐ止血になった。

私はハンカチを折り返して、私のスカートのポケットの中に入れて血で染まった茶葉を眺めた。

ぽろぽろ赤い血で結ばれているツカラの花びらがとてももったいなかったけど、仕方なくゴミ箱に捨てた。

私はキッチンの食器棚から新しいツカラの花びらや色々な茶葉を取り出した。

いくつかの茶葉をよく混ぜた後、茶器でお茶を綺麗に入れた後、ダルニング皇子宮の応接室に向かった。

キャサリン伯爵夫人とダルニング皇子は応接室の中で談笑していた。

私は二人に明るい笑みを浮かべながら、私が用意した茶と茶菓を彼らの前に置いて待機しているメイドたちのそばに立った。


「あら!このお茶の香りが本当にいいですね。皇子様!初めて飲むお茶です」


優しい目つきでキャサリン伯爵夫人がダルニング皇子に声をかけた。


「はい、おばさん。お口に合いますか?僕の保母であるエレインが作ったお茶です」


ダルニング皇子とキャサリン伯爵夫人の視線が私に注がれた。

私は彼らに近づき、親切な笑顔でお茶について手短に説明した。


「はい、夫人…。これは疲労回復に良いツカラの花びらと血を澄ましてくれるベルナール葉を混ぜて作ったお茶ですよ。夫人の顔色が少しよくないようだったので作ってみました。もし味が良ければお宅に行く時にお持ちしましょうか?」


「ありがとう。心がとても安らかになる香りですわ。貰えるならいただきます」


お茶を一口飲んだ彼女の口元に寂しい笑みがしばらく浮かんだけど、すぐ消えた。


(トントン)


その時、ダルニング皇子宮の応接室に伯爵家の侍従のような一人の男が夫人に仕える侍女に何か言葉を伝えた。

侍女はしばらくダルニング皇子に礼を尽くした後、伯爵夫人に耳打ちした。

キャサリン伯爵夫人の顔色が目立って曇っていた。


「何かあったんですか?おばさん?」


「いいえ、皇子様…。伯爵様は公務中でお忙しいので先に起きてみなければなりませんね」


ソファーから起きていたキャサリン伯爵夫人がしばらく何かを考えて、ダルニング皇子に話を切り出した。


「私がベイリオ皇国に嫁いで間もないんです。それで、せっかく皇居に来たついでにエレルマンを見物したいのですが、もしお時間ありますか?」


ダルニング皇子がとても残念そうに自分の次の日程を話した。


「あ…、おばさん。もうすぐ乗馬の授業時間なので、後でいらっしゃったら僕が必ずご案内いたします。ごめんなさい」


ダルニング皇子が非常に申し訳なく言うと、キャサリン伯爵夫人は大丈夫だという表情で手を横に振った。


「いいえ、皇子様。お構いなく。私が時間が空いていたので話してみただけなんですよ」


キャサリン伯爵夫人が無理やり薄笑いしたが、私はなぜか彼女を気の毒に思った。


「あの、失礼でなければ私がお連れしたいのですが、よろしいでしょうか?ちょうど皇子様が乗馬の授業がある時は特にすることがなくて時間が少し空くんですよ」


キャサリン伯爵夫人がにっこり微笑みながら言った。


「エレインさんって言ったんですか?気使ってくれてありがとう。少し迷惑ですが、よろしくお願いします」


私はダルニング皇子の叔母キャサリン伯爵夫人と一緒に馬車に乗ってエレルマン市内に出た。

出てみると、今日に限って天気がとても良かったので、キャサリン伯爵夫人は市内を散歩するようにゆっくり歩いた。

しばらく街を見物しながら歩き回ったため、足が痛くなり並木が鬱蒼としたベンチの椅子に座るようになった。


「夫人、ベイリオ皇国とフェルデン王国と暮らす姿がかなり違いますよね?」


私の言葉にキャサリン伯爵夫人が少し好奇心に満ちた目でじっと私を見つめた。


「そうですね…。フェルデン王国に行ったことありますか?」


「はい!一度だけなんですけどね!美しい円形の屋根が多い都市でした。故郷が懐かしいでしょうね」


私の渡した言葉にキャサリン伯爵夫人が寂しげに微笑んだ。


「はい。どうも故郷が懐かしいですね…。あ、ところでもし年がいくつになりますか?エレインさん?」


「私は今年21歳です。夫人」


「あら!私と同い年です!」


キャサリン伯爵夫人が嬉しいのか手を叩いてとても喜んだ。


「エレインさん。私と友達になりませんか?」


「お友達ですか…?私なんかがどうやって…」


私が驚いた顔でキャサリン伯爵夫人を見つめると、彼女は苦笑いした。


「夫が優しくしてくれるけど…。とても仕事が忙しいです。そしてこちらの社交界では私をいんぎんにいじめていて交じることができません。ふぅ…、たぶん私の母の出身のせいみたいです。今は伯爵家の邸宅の侍女まで私をいじめているようで最近とても大変です。こんな時心が通じる友達ができたらいいんですけどね。もし私の身分のせいで負担になりますか…?私は本当に何も気にしないのに」


彼女の目頭が赤くなり、いつの間にか涙があふれた。

私はどうしようかと悩んだ末に大きな決心をしてキャサリン伯爵夫人に言った。


「ええ、いいですよ!私たち友達になりましょう」


私が先に手を差し伸べて握手を求めると、キャサリン伯爵夫人が目元に流れる涙を拭いて明るく微笑んだ。


「ありがとう!じゃあ、気楽に話そう。どう?友達だから!」


「本当にそうしてもいい…ですか?」


「うん!勿論!私の名前呼んでくれる?エレイン?」


「キャ…サリン?」


「うん、エレイン!大好き!」


こうして私は今日キャサリン伯爵夫人と友人になった。

彼女はフェルデン王国の王女にふさわしくないほど気さくで堅苦しくない性格だった。

私と通じ合う話も多くて、私たちは半日で親友になってしまった。


「エレイン、来週私の誕生日パーティーがあるんだけど招待してもいい?」


キャサリン伯爵夫人がとても照れくさそうな表情で私に言った。


「フィオール伯爵家に重要なお客さんもたくさんいらっしゃると思うのですが、失礼ではないかな?」


「言葉だけ私の誕生日パーティーで…、私の友達は一人もいないよ。男たちは政治の話で忙しいだろうし、女たちは私の悪口を言って陰口をたたくのに忙しいだろう。私は多分一人で寂しくパーティー会場を見物しているだけのはずだよ…」


「私にパーティー会場でキャサリンを守る身代りになってほしいという話だね?」


「プッ、話がそうなるのかな?気にするな。エレイン。ただ言ってみただけだよ…」


キャサリンは申し訳なさそうに手を振って私に言った。

知り合いもほとんどいないのに他国に嫁いできた彼女が、私はとても気の毒だった。


「よし、私が身代りになってあげる!まあ、私がメイド出身の保母ではあるけど、それでもダルニング皇子様の保母さんだから、私をむやみにはできないと思うよ…。誕生日パーティーでキャサリンのそばにいてくれればいいんだよね?」


キャサリンは私の言葉にびっくりして気持ちよさそうな微笑みを見せてくれた。


「エレイン、本当に最高だよ!今日私がエレインに友達になろうと勇気を出して本当によかったよ。ハハ」


「うん!私も」


キャサリン伯爵夫人が自分の率直な感情を明るく見せながら大笑いした。

私も久しぶりにいい友達になれた気がして、とても嬉しかった。


***


「保母様、しばらく動かないでください。髪の形が歪みそうです」


「あ、すみません。じっとしています」


私は早朝から着飾りされていて慌しかった。

誰に何をどのように聞いたのか、ダルニング皇子がおばさんの誕生日パーティーは自分が任せるようにと念を押した。

キャサリン伯爵夫人の誕生日になると、明け方から下女長のドロシー夫人とメイドたちが私に訪ねてきたのだった。

彼女たちはまるで芸術作品を作る人のように慌ただしく手を動かしたけど、私はまるで彼女たちのマロン人形のようだった。

長い髪をきちんと整え、洗練されたアップスタイルをして輝く大小の宝石で綺麗に飾った。

白いフリルが入ったピンク色のドレスを着て薄化粧をしたら、終わらないと思っていた着飾りがやっと終わった。


「わぁ!」


鏡の中に映った自分は、まるでピンクのチューリップのように愛らしい姿だった。

このような着飾りを何度かしているうちに、何だかきらめく自分の姿にだんだん慣れてきたような気がした。


「うわぁ!保母、凄くお綺麗です!」


「はい!!本当に美しいですね」


私は満足しているダルニング皇子とドロシー夫人、そしてメイドたちの見送りを受けながら馬車に乗ってフィオール伯爵家に向かった。


「エレインさん!お会いできて嬉しいです」


「はい!私もお会いできて嬉しいです。キャサリン伯爵夫人!」


私とキャサリン伯爵夫人は公の場なので、お互い礼儀正しく挨拶をした。

今日キャサリン伯爵夫人は異国的な目鼻立ちが目立つ緑色のドレスを着ていたけど、パーティーの主人公らしくとても美しく見えた。

パーティー会場を見てみると、今回の誕生日パーティーには、この前結婚式のゲストとして来た人の大半が招待されたようだった。

しかし、ハエリス公爵とカルロス皇太子はパーティーホールの中では見えなかった。

おそらく国家政務に追われてパーティーに出席できなかったようだった。

キャサリン伯爵夫人の予想通り、誕生日パーティーの間ずっと彼女に近づいてくる人はいなかった。

招待された人たちは簡単にお祝いの挨拶だけをして席に戻り、彼ら同士で笑い話をしながら会話を交わした。

今日、このパーティーはキャサリン伯爵夫人の誕生日パーティーではなく、まるで彼らの集まりのようだった。

その時、キャサリン伯爵夫人の誕生日パーティー会場に美しいセレナが入場した。

彼女は艶やかな赤いドレスを着ていたけど、まるでバラの花のようにとても魅惑的だった。

しかし、パーティーの主人公より主人公のような彼女の身なりはなぜか席に合わないようだった。

セレナが先にキャサリン伯爵夫人に挨拶をした後、彼女のそばにいる私を無視して貴族の令嬢たちがいる場所に向かった。

そしてハハ、ホホとはしゃぎながら楽しく時間を過ごすようだった。

宵の口に始まったキャサリン伯爵夫人の誕生日パーティーは、午前0時が近づくと次第に終わりが見えてきた。


「エレイン、結構大変だったよね?今日手伝ってくれてありがとう」


キャサリン伯爵夫人が私に耳打ちで感謝の言葉を伝えた。


「いや、大丈夫だよ」


私は彼女に大丈夫だとにっこりと微笑んで見せた。

パーティーがもうすぐ終わりそうだったので、私はキャサリン伯爵夫人に了解を得て、澄んだ空気に当たり、パーティー会場を抜け出した。


「ふぅ、やっと息ができそう」


しばらく息を整えている私に、まるで待っていたかのように、一群の貴族が取り囲んだ。


「この子なの?」


「うん、そうだよ。キャサリン伯爵夫人の隣にぴったりくっついていたよ」


「フッ、似たもの同士で遊ぶって言うわね。プッ」


派手なドレスを着た貴族の令嬢たちが私の姿を上下に見てあざ笑った。


「あれ?貴族でもないくせに貴族の真似をしたわね?このドレスたち、ハエリス公爵が買ってくれたの?ほほ。それを一度ずつしてあげたらこんなドレスを一着ずつ買ってくれるの?う。本当に汚いわ」


彼女たちは私の指で頭を押し、胸を押しつけて侮辱した。


「あんたがハリス公爵閣下にしっぽを振っていると社交界で噂が広がっているんだよ!もしダルニング皇子様の保母の席で首になったらあんたなんかこの世界で行く所が一つもないだろうね!ちぇっ。だからもうちょっと見の振りをちゃんとしてたら、良かったじゃ…?」


私は彼女たちに何度も後ろ指をさされながらじっくり考えた。

突然、前世で私が演じた悪役の友人1、2、3、4たちが思い浮かんだ。

こうするのは私の専門だったけど、まるで私がドラマの主人公のような感じで気分が悪くなかった。


「あれ?今笑ってるの?」


「どこでそんなに下品に笑うの?教養なしに?」


「あの、貴族家の令嬢さんたち?」


私は彼女たちを見つめながら、慈愛に満ちた笑顔で話した。


「では、まとめてみますね。あんたはハエリス公爵の愛人なの?あんたと一緒に通う王女様のようになる子を作らないでよ!そしたら子供がかわいそうじゃない?メイド出身から公爵閣下の愛人に上がったなら出世したわね。こういう似たようなセリフをセレナ様に指示されてきましたか?」


一瞬彼女たちの肩が揺れ動いて分かりやすくびくびくしているのが一目で見えた。

やはり私の思った通りだったので、私は再びにっこり微笑みながら彼女たちに言った。


「令嬢さんたちを送らないで直接私に来るようにセレナ様に伝えていただけますか?いらっしゃる時はちょっと変わった新しいレパートリーを持ってください。何度も聞いたらとてもうんざりするので」


「プッ、ハハハ」


その時、笑いをこらえる男の声が裏から聞こえてきた。

貴族家の令嬢たちは、自分をあざ笑う男の笑い声が聞こえると、不快なのか、それぞれ眉をひそめて声がする方を眺めた。

彼女たちの顔はまるで真っ白な画用紙のように一瞬蒼白になった。

鮮やかな灰色の燕尾服を着たハリス公爵が彼女たちの後ろで笑いをこらえながら立っていたからだ。

笑いをこらえていたハリス公爵が周りの令嬢たちを付き添い、私だけをじっと眺めた。

ハエリス公爵の夜に似た黒い瞳が暗闇の中できらきら輝いているようだった。


「エレイン!」


「はい?」


「私が最近本を読んでるんだけど…、主人公のメイドがこのようにカボチャたちに囲まれていじめられる場面があったよ。では主人公のあの公爵はこうしてたんだけどな…?」


ハエリス公爵は貴族の令嬢たちをカボチャのように扱って私に直進してきた。

私は当惑した表情で私にどんどん近づいてくるハエリス公爵をぼんやりと見つめた。

彼は私の腰を腕で巻いて体に密着させ、私の顔をじっと見つめた。

ハエリス公爵の目つきが夜空を照らす半月のように綺麗に曲がった。

人達が見ているってことを全く気にせず、彼は私の唇に濃いキスをし始めた。

私は面食らった気持ちで彼とキスを交わしながら考えた。


⦅いや、一体何の本を読んでいらっしゃるんですか?ハエリス公爵閣下!?⦆


ハエリス公爵と熱い口づけをしながらそっと目を覚ますと、貴族の令嬢たちは皆口を開いたまま凍りついていた。

心配そうな私の表情に気づいたハエリス公爵がしばらく自分の唇を離し冷酷な目つきで彼女たちをにらみつけた。

まるで口づけの邪魔になるから、早く消えろという無言のメッセージが込められているようだった。

ハエリス公爵の冷たい視線に貴族の令嬢たちがびくびくしながら、速いスピードで席を立った。

騒がしかった周辺がやっと静かになったようだった。

ハエリス公爵が私をギュッと抱きしめ魅惑的に眺めると、私は彼の首に腕をかけてじっと見上げた。


「ハエリス公爵閣下。私と噂が悪くなると思います。もし心配になりませんか?」


心配そうな私の言葉に彼は私を優しく見つめながらにっこり微笑んだ。


「そんなことは心配しない方がいい。俺を信じて、エレイン…」


真剣なハリス公爵のまなざしに私は小さく頷いた。

いつの間にか、ハエリス公爵の熱い息遣いが私のまぶたに、鼻に、頬に響いた。

そして暖かい彼の唇がもう一度私の唇にやって来た。

パーティーが終わりそうなざわめきが感じられると、私たちの口づけも惜しくも終わった。


「ところで…公爵閣下、最近何の本を読んでるんですか?」


私がとても気になる表情で彼に尋ねると、彼は意地悪な表情で私の耳に本の名前を小さくささやいた。

私は本のタイトルを聞くや否や、あまりにも面白くて、彼の懐に入り込んで、ぎゅっぎゅっと笑った。


[もう一度抱きしめてください。公爵様!メイドのシャーロンの内情]


何だか『18禁のロマンス小説』のような本のタイトルだった。

私は頭を上げて「公爵閣下、一体どうしてそれを読んでいるんですか?」と聞こうとしたけど、聞けなかった。

ハエリス公爵本人も面白いのか、肩を震わせながらクスクスと笑っていたからだ。

冷血男、冷たい都市の男のハリス公爵が満面に笑みを浮かべると、その年らしい26歳のハンサムな青年のようだった。

口数が少なくていつも謹厳に見えたけど、実はこの姿がハエリス公爵の本来の姿ではないだろうか。

いたずらに笑う彼の姿がまるでいたずらっ子のようにとても可愛かった。

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