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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第72話 新しい糸口

挿絵(By みてみん)


(パチパチ)


赤く燃え上がるたいまつが暗く陰湿な監獄の中を仄かに照らした。

片腕のある男が片手と両足に鎖と鉄球が埋まったまま、湿った地下監獄に閉じ込められていた。

男性は一定に配食される回数を数えながら3ヶ月までは日にちを数えてみたが、時間感覚がなくなって久しい。

彼は全ての希望を失った目つきで暗く冷たい監獄の壁にもたれて座った。

正体の分からない謎の男たちとの戦闘で片腕となったが、敵は意外と残酷な拷問はしなかった。

ただ、非常に厳しい尋問と調査が行われたが、肉体的苦痛ほど相当辛かった。

尋問の際はすべての配膳が途絶え、水一口も提供されなかった。

なんと一週間も水を一口飲めなかった時は、このまま死ぬんだなと思った。

しかし、彼はどうにか生きたかった。

生きたかったため、極限の苦痛の中でも敵が望む情報をむやみに口外しなかった。

彼の一言に大切な家族の安危が決まるからだった。

いつの間にか彼は自分だけの深い思いの中に入り込んだ。


⦅お父さん!この花が凄く綺麗じゃないですか?⦆


今年10歳になった娘イェルエがぴょんぴょんしながら広い野原を自由に走り回った。

そして彼のそばには病弱な妻メアナが薄笑いしながらイェルエを眺めた。


⦅テシャ!何をそんなに考えてるんですか?⦆


彼女の問いかけにテシャは何の返事もなく無愛想な表情をした。

実は、妻メアナの1ヵ月分の薬代とイェルエが学びたいと思っている絵の教習所の授業料を考えていた。

親譲りのない人生だったからいつも手に余っていたが、妻にお金のことを考えていたと言えば、なんだか家長として貧しくみえそうだった。

しかし、あえて表現しなくても夫の考えをすべて知っているのか、メアナは彼の手を黙って握った。


⦅今日仕事があるから明日の夜に帰ってきそう⦆


⦅いつも体に気をつけてください。テシャ…⦆


しかし、その日が最後の挨拶だったとは、彼自身も知らなかった。

図体ばかり大きくてできることが多くなかった彼は、「刀を使う仕事をしてたら、いつかこんな日が来るだろうな」と予想していた。

妻メアナにもう少し優しく接したらよかった。 娘のイェルエをもう一度抱きしめてあげたら良かったのにという後悔が彼の頭の中をぐるぐる回った。


(キィッ)


(スタスタ)


その時、2、3人の男が歩いてくる音が暗監獄の廊下で大きく響いた。

今日監獄に入った顧問官が誰を連れて行くかとても焦燥な気持ちになった。

昨日やっとひどい尋問が終わり、ついに今日水一杯とおかゆ一杯を飲むことができた。

運悪く再び尋問にかからないことを心から祈った。

しかし彼の願いは叶わず、彼らはテシャが閉じ込められている監獄の前で足を止めた。

テシャは頭を上げて鉄壁の外に立っている数人の男を眺めた。

冷酷な目つきをしたある男が彼をじっと見つめながら立っていた。

一生忘れられない自分の片腕を切ったその男だった。

その男の顔をまた見ると、切られた彼の肩の下の筋肉がずきずきとしみるように痛くなった。


(キィッ)


鉄格子が開き、自分の肩を切ってしまった男は、無関心な表情で監獄の中に入った。

手下のようなある騎士が男性の座れる椅子を監獄に入れた。

また別の騎士は、監獄の中を照らす灯火をいくつか持ってきて、暗い監獄の中を明るく照らした。

久しぶりに見る明るい光だったので、テシャは眩しくて残った片腕で両目を隠した。

優雅に足を組んで椅子に座った男が無心な表情でテシャの行動を一つ一つ観察した。

もし力があれば、一気に目の前のあの男の首を切ってしまいたかったが、残念ながらテシャは固い鎖に縛られていた。

どのくらいの時間が経ったのだろうか。冷酷な目つきの男が先に沈黙を破って口を開いた。


「君の口はとても重いようだな」


「……」


「君が俺の騎士だったら本当によかったなとたまに思ったよ。とても残念に思う」


男の言葉には、ある程度本心がこもっているようだった。

しかし、自分の腕を切って監獄に閉じ込めてしまった敵の褒め言葉などは聞きたくなかった。

彼は怒りに満ちた目つきで男をにらみつけた。

男はテシャをじっと見つめ、すぐに低いため息をついた。


「ペテル商団が売ってしまった君の娘と妻をやっと見つけることができた」


「は?それはな…、何のたわごとだ!」


テシャは非常に混乱した表情で腕を切ってしまったその男に問い返した。

男は優雅に足を組み替えてテシャの質問に答えた。


「ふむ。これほど忠実な犬の役割をしている君にとって、ペテル商団のカズニはあまりいい主ではなかったようだな。メアナ夫人と娘の名前はイェルエだっけ?彼女たちは俺たちの方で安全に保護されている」


「そんなはずがない!カズニ商団主はそんなことしないはずだ!!俺がどうやってあの方を従ってたか。お前の言うことをどうやって信じるんだ?うわごとはやめて俺の前で消えろ!」


男は自分の懐から何かを取り出してテシャの前に投げた。


(ゴロゴロ)


それは妻メアナがいつも首にかけていたペンダントネックレスだった。

亡くなった彼女の父親の遺品だったので、メアナは一瞬も体からはなしたことがなかった。

その時になってテシャの両目が焦点を失い、まるで地震が起きたかのように左右に揺れた。


「君が知っている情報を教えてくれれば、彼女たちに生きる道を作ってあげる。君の娘も今よりもっと良い環境で育つことができるだろう」


「はぁ、その情報を言わないと、妻と娘を殺すと私を脅すのか。お前の言うことをどうやって信じるんだ? 俺の主人も俺を裏切ったのに!!」


信じていた主人が自分を裏切ると、テシャは怒りに耐え切れず、全身を震わせた。

テシャを見つめながら、男は浅くため息をついて自分の話をした。


「君の忠心に対する俺の小さな好意に過ぎず、君の家族に触れるつもりはない」


テシャは頭を上げて腕を切り取ったその男を見つめた。

冷酷だと感じた彼の表情に少しでも切ないまなざしが通り過ぎた。


「俺が…、言ったら俺はどうなるんだ…?」


「君はどうせこの監獄に入った以上、生きて出られない。それは君がここを抜け出してペテル商団を訪ねて行っても生きられないことをよく知っているだろう。その理由は君本人の方がよく分かってると思うんだけど…」


「くそ!その仕事を引き受けるんじゃなかった…!はぁ」


お金をもう少し稼ごうと思って依頼を受けたことで自分はどうしても生き残れない運命になった。

テシャの頭の中に病弱な妻メアナと綺麗な娘イェルエが思い浮かんだ。

果たして自分の腕を切り取ったこの男の言葉を信じることができるのだろうか?彼は冷たい石の底で拾った妻メアナのペンダントネックレスをじっと触った。


「俺がお前の何を信じて話すと思うんだ…?俺の妻と娘の命をどうやって保障してもらえるのか聞いてるんだ!」


巨体のテシャが泣き叫ぶように男に吠えた。

淡々とテシャを眺めていた男は椅子から立ち上がり、彼に数歩近づいた。


(トボトボ)


「私の名前をかけて約束する。君の妻と娘を守ってあげると」


「フフ…。お前の名前の値打ちが知りたいな。何の国の王か王子にでもなるようだな?」


「ふむ、俺はベイリオ皇国のハエリス公爵だ」


突然すべての事故が停止したテシャは驚いた表情で目の前の男を見上げた。

ある程度時間が経った後、静けさと静けさが漂っていた地下監獄に突然わめき、テシャの声が大きく響いた。


「ハハ…!!クスクス!!」


ハエリス公爵はじっと立ったまま片腕の男を黙視した。

しばらく大笑いしていた片腕テシャが、ハエリス公爵に口を開いた。


「一つだけお願いしましょう。ベイリオ皇国のハエリス公爵閣下」


「それは何だ?」


「妻と娘を売ったペテル商団のカズニ商団主を殺してください」


ハエリス公爵はしばらく悩み、軽く頷いた。

片腕のテシャはやっと何かすっきりした表情で、ハリス公爵に言った。


「ルースセンの花を飼っていたゲスティンは恐らく連れてこられてすぐ数日以内に死んだでしょう。合ってますか?」


片腕テシャの言葉にハエリス公爵が小さく頷いた。


「俺も詳しくは知らないです。解毒剤をもらえなければ数日以内に死ぬ毒をゲスティンが飲んだということしか…」


「そうか…」


「けれども俺はペテル商団の護衛武士たちを管理する職級だから詳しくは分からないが、一つは知っています」


「それは何か?」


夜に似たハエリス公爵の瞳に鋭い光が光った。

ハエリス公爵を見ていたテシャは深いため息をついて話を続けた。


「恐らくリベア王国のチェスター王がこの事に関わっているようでした。勿論俺の推測に過ぎないが、何の関係もなくはないでしょう。何故なら時々リベア王国王室にルースセンの花のかなりの量を上納したんだですよ…?何の代価もなくね」


「代価のない賄賂はあり得ない。いい情報だな…」


テシャがついにすべての緊張が解けたように、冷たい壁にもたれてハエリス公爵に震える声で口を開いた。


「約束は必ず守ってくださいよ…。ハエリス公爵閣下、俺が約束を守るのか守らないのか地下ではっきり見守っていますよ」


「約束する」


ハエリス公爵がすっと身を起こし監獄の鉄壁の外に出た。


(キィッ)


ハエリス公爵が監獄から出てくると、警備員たちは鉄門を固く閉ざした。


(スタスタ)


ハエリス公爵が暗い廊下に姿を消すと、テシャは急いで鉄格子をつかんで大声で叫んだ。


「ハエリス公爵閣下!!俺の妻へ。俺の娘に愛したと伝えてくれますか…?」


監獄の真っ暗な廊下の端から、ハリス公爵の声がはっきりと聞こえてきた。


「……そうしよう」


ハエリス公爵が監獄の外に完全に去ると、ある騎士が白い瓶を取り出して彼に渡した。

テシャはその瓶を受け取ってしばらく悩んだ末、ためらうことなく一気に口に入れた。

彼が刀を使う仕事を始めた幼い頃からたまに一度は想像した結末の一つだった。幸い、彼は大きな苦痛もなく生涯を終えることができた。


***


「はぁ…。ううん!」


「はあはあ…」


厚いベルベットのカーテンが真昼の日差しを遮ると、まるで真っ暗な夜のように部屋の中が暗かった。

暗い部屋の中で若い男女が入り組んで熱く色事を行っていた。

彼らが吐き出す荒々しい嬌声が広い部屋を埋め尽くした。

どれだけ時間が経っただろうか。彼らに快楽という絶頂を迎えた。


「あっ、はあ」


「はぁ…」


神秘的な紫色の髪色と紫色の瞳が魅惑的なとある男性を銀髪の少女が浮かれた表情で眺めた。


「陛下…?リリア姉さんとやる時もこんなに情熱的ですか?」


きらめく銀色の髪を持った可愛い美人が嫉妬深い表情をすると、チェスター王は彼女の高い鼻に浅く口づけしながら言った。


「うん、ベリア。でも君とはまた感じが違うよ…!フフッ」


「はぁ…、陛下は本当に悪い男ですよ!!ふん」


ベリアは不満そうな表情でチェスター王をにらみつけた。

嫉妬する彼女の姿がとても可愛かったチェスター王は、ベリアの唇を深く飲み込んだ。


「元々悪い男の方が魅力的だ。ベリア」


「フフッ、それはそうですね…」


再び妙な雰囲気が二人に流れると、これ以上我慢できず、再び熱い情事が始まった。

チェスター王は白くて膨らんでいるベリアの胸を手荒くつかんだ。


「うっ…」


"大好きだよ!ベリア!!今度はもっと深く行ってみよう!」


「はい!陛下…!」


「はぁ…」


二人の男女は互いの体を愛らしくなでながら快楽を貪った。

しばらくたって彼らの2度目の情事が終わった。

ベリアは2度の情事に非常に疲れた表情で彼女の床に散らばった服を拾って着た。

チェスター王はベッドの枕に半分もたれて座り、ゆったりとした身なりで彼女が服を着る姿をじっと鑑賞した。

ベリアはドレスを身にまとい、乱れた髪をなでながらチェスター王を眺めた。


「ローレン夫人が送ってくれた毒草を見ました。ベイリオ皇国の皇室医員という人は本当に実力の優れた毒術師だと思います」


ベリアの感嘆混じりの言葉にチェスター王の紫色の瞳が興味深い光に変わった。


「ほぉ、そうか?君お姉さんリリア皇妃より?」


「フッ!私のお姉さんなんですけど、リリア姉さんは本当に優れた毒術師です。私の乳母の話では、リリア姉さんの場合、5歳の時から毒を持って遊んだそうです。数多くの侍女と侍従たちが私の姉の毒のいたずらで死ぬところだったのが一度や二度ではなかったそうです。とても不気味じゃないですか?それが怖くて、お母さんが早くベイリオ皇国に嫁いだんですが。フッ。とにかくその医員の実力は私の姉に劣らないようでした」


「そうなのか?天才的なリリアに比べるとそれほどでもないと思うけど?どうしてそう思うようになった?」


ベリアはとてもキュートな表情でチェスター王を見つめながら話を続けた。


「私は解毒師なので毒の細かい配合量などは詳しく分かりませんが、毒術師ほどある程度毒をよく知っています。毒草は猛獣や人が使うと、2人とも毒中毒になるしかないんですけどね?ネズミの薬をネズミが飲んでも死に、人が飲んでも死ぬのと同じ理屈です。ところが、その毒術師の医員は、人は麻痺しないようにし、猛獣にだけ聞く麻痺毒を、その短い時間で作ったんです。うーむ…、もしちゃんとした時間が与えられたらどれだけもっと怖い毒を作れるかな?私はそれが気になりました」


チェスター王がその時になって、その医員に好奇心が芽生えたように目つきが輝いた。


「そうなのか?スエル公国最高の解毒師がそんな称賛をしたら、俺の人間にしたいな!」


「フフッ、陛下は男であれ女であれ、能力さえあれば欲しがっているので、本当に止められませんわ!」


「まあ、それが俺の長所なんじゃないか…。物であれ、人であれ、良い物は絶対欲しがるんだから」


ベリアは静かな足取りで窓際に歩き、ベルベットのカーテンを開け放った。

厚いベルベットのカーテンを開け、暖かい春の日差しが部屋の中に降り注いだ。

髪の毛をねじりながら窓の外の風景を見ていたベリアがふとチェスター王に口を開いた。


「その医員。リリア姉さんの性格なら、きっと殺せと言ったでしょうね…?ローレン夫人の話では、ハエリス公爵が持ち出したそうですが、私は助けてほしいです。陛下」


「うん?どうして?」


「ただ僕の感かもしれないけど、毒に心がこもっている感じって言うのかな?心を感じられる毒なのでちょっと興味深いです。解毒を強いてしなくても、時間が経てば自然に麻痺が解けるようになっていたんですよ。それも何の後遺症もなく。このような毒は作るのが難しいので、解毒師として一度は会ってみたいですね」


黙って話を聞いていたチェスター王がベッドから体を起こし、ベリアに近づいた。

裸のチェスター王は彼の細い手でベリアの顔をやさしくなで下ろした。


「君がそう言うと嫉妬してそのまま殺したくなるんだけど?」


嫉妬深い彼の言葉はとても嬉しそうにベリアは明るい笑みを浮かべた。


「陛下、スエル公国にはいつまたいらっしゃるんですか?」


「近いうちに何かあったらまた来ることにしよう…。愛らしいベリア公女」


「はい、待ちます陛下!」


「出発する前に俺たちもう一度やろうか。どう?」


チェスター王の魅惑的な誘惑にベリアが驚いた表情をし、すぐに淡い笑みを浮かべた。


「フッ、いいですよ。陛下」

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