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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第60話 皇室メイドのエレイン (2)

挿絵(By みてみん)


朝から空が濃い灰色で暗くなって、空から真っ白な雪がこんこんと降ってきた。

私はドレニー皇妃の暖炉に入れるまきを皇居の管理課でもらって、ドレニー皇妃の宮に向かった。


「うぅ…、寒い」


ちょこちょこと歩いていると、ふとかごの山盛りのまきに私の視線がいった。

薪の上に白い雪がいつの間にかどっさりと積もっていた。

私はさっと雪を払い落として、スカートのポケットからハンカチを取り出して、かごの上に広げた。

薪に目が染み込まないようにするためだった。


(ギュッギュッ)


雪を踏みながら歩く私の足音が寂寞としたベイリオ皇居に静かに響き渡った。

ドレニー皇妃宮の前に到着した私は、全身に積もった雪を外から払いのけ、ドレニー皇妃宮ロビーの中に入った。

ちょうど女中長のフロス夫人がロビーに集まったメイドたちに指示を出していた。

業務の指示を受けたメイドたちがばらばらになると、フロス夫人が外から経った今入ってきた私にやってきた。

彼女は凍った手に持っているまきかごと私の顔を交互に見つめながら口を開いた。


「エレイン、皇居管理課からまきを持ってきたの?」


「はい、夫人。さっき、ドレニー皇妃様の部屋を見たところ、ストーブに薪が足りなさそうだったので。今は雪がたくさん降っていまして、夕方には道が滑るのではないかと思って予め行ってきました」


私の答えを聞いたフロス夫人の顔にかすかに笑顔が浮かんだ。

あまりにも無愛想な方だったので彼女の微笑みは称賛だということを私は分かった。


「ところでエレイン、皇室で5日後に新年祭が開催されるのを知っているよね?」


「はい、夫人。お聞きしました」


「その行事にエレインも一緒に参加することになったんだ。皇室狩場はここ皇居よりもずっと寒いので、ドレニー皇妃様が不便を感じないように丁寧に準備してみなさい」


「はい、かしこまりました。フロス夫人」


ベイリオ皇国では毎年新しい一年を始める新年祭が1月中旬に開かれた。

新年祭は、ベイリオ皇国の皇室の人々と皇国の主な家門貴族が一緒に皇室の猟場で狩りをし、和合を図る行事だった。

その行事で各皇子たちは自分の勢力の力を狩の実力で実力で威張って、自分の勢力を誇示した。

新年祭には野外で一晩食べるので思ったより準備することが多かった。

私はドレニー皇妃が使用する物品について、皇妃の侍女たちと相談し、几帳面に準備した。

皇妃宮で慌ただしく忙しい午前を過ごした後、幸せな午後の休憩時間、私は嬉しい声を聞くことができた。


「エレイン!!僕、来たよ!!」


「あら!グレース公爵閣下!カルロス皇太子殿下!」


私は嬉しそうに笑いながら、カルロス皇太子とグレース公爵を迎えた。

突然のグレース公爵の訪問に私は有頂天になった。

離れて1ヶ月も経たないけど、時々彼に凄く会いたくなったりしたからだ。

グレース公爵も私にまた会えてとても嬉しいのか、ぴょんぴょん飛び跳ねながら私の手を握った。


「僕もう嬉しいよ!エレイン!本当に会いたかった!」


「私もです!グレース公爵閣下!」


「エレイン!私達市内の見物に行くんだけど一緒に行かない?」


私はグレース公爵を見つめながら少し困惑した表情をした。

幸い朝こんこんと降った雪は止んだけど、馬車が通るにはとても滑りそうだった。

そのうえ、現在私はドレニー皇妃宮の新入りメイドなので皇居の外に勝手に出ることができなかった。

私は非常に残念そうにグレース公爵に口を開いた。


「グレース公爵閣下。残念ながら、まだ私が新入りなので宮の外に出られません」


「ああ!それは心配いらないよ。エレイン、俺が今ドレニー皇妃に許しを得たんだ!」


私たちのそばにいたカルロス皇太子が、私に片目をウィンクしながら明るく微笑んだ。

私はカルロス皇太子とグレース公爵の2人に連れ去られるように馬車に乗り込んでしまった。


「パカラッ」


私とカルロス皇太子、グレース公爵を乗せた馬車が市内に出発した。

幸い、午前中に雪をどけて砂をまいたのか、思ったより道が滑らなかった。

馬車はいつもより少し遅い速度でゆっくりとエレルマンに向かった。

私は久しぶりにグレース公爵を見たせいか気分がよかった。

新しい領地で彼は元気にしているのかどうかすごく気になった。


「グレース公爵閣下!お体はどうですか?お元気にしてますよね?」


「うん!勿論!心配いらないよ。歯磨きもちゃんとやってるし、今年は風邪も一度も引いてないんだよ?あ!エレイン、僕の領地にはものすごく広い草原があるんだ。ぜひ遊びに来てね!羊も馬もいるよ!」


「はい!いいですね!必ず遊びに行きます!」


私は微笑んでグレース公爵の頭を優しく撫でた。

カルロス皇太子が暖かい笑みを浮かべながら、私とグレース公爵を交互に眺めた。

その時、ふとカルロス皇太子が疑問の声で私を呼んだ。


「えっと、ところでエレイン?」


「はい?殿下?」


顔を振り向けると、カルロス皇太子がなぜか不機嫌な表情で私を眺めていた。

私はわけがわからなくて彼をただじっと見つめるだけだった。

カルロス皇太子の視線は、私の首を囲んだスカーフに止まっているようだった。

私は彼に秘密がばれたと思い、とても狼狽した。

私の首筋が熱くなり、一瞬にして顔が赤くなった。


「ああ!首の方が寒くてしました…」


「あ、そう?そうなんだ」


カルロス皇太子は短く答え、ガタガタする馬車の窓の外をじっと眺めた。

窓の外の風景を眺める彼のハンサムな眉間が目立つくらいしわくちゃになっていた。

私は何か悪いことをして見つかった人のように訳もなく気まずい思いをした。

馬車から降りた後、エレルマン市内の入口に入るやいなや、まるで私たちを待っていたかのようにセレナに会った。

セレナは、白いキツネの毛がついたピンクのコートを着て、ピンクの帽子をかぶっていた。

生気あふれる彼女は、誰が見ても美しい淑女の姿だった。


「カル!グレース公爵閣下!エレイン、久しぶり!こんなに偶然に会うなんて!本当に不思議!」


「そうだね!市内には何の用事で来たの?セレナ?」


カルロス皇太子が尋ねると、セレナは自然に彼の腕を組んで愛らしい表情で見上げた。


「うん!冬だからかなり寒くて、救恤所に必要な服と毛布を買いに市内に出かけたの。たった今品物を馬車に積んで送ったところなのに、こんなに会うなんて!やっぱり私たちは縁は縁なんだね!」


カルロス皇太子はやんわりとほほ笑み、自然とセレナの腕組みを外した。


「セレナ。私たち今市内見物をしに行くんだけど、一緒に行く?」


「うん。いいよ!!カル!」


久しぶりに見たセレナは、満開の花のように、以前より一層美しくなったようだった。

彼女の周りだけ、あたかも何百もの電球をつけたかのように明るくなってる感じだった。

いつの間にか一行で合流したセレナと私たちは市内各所を楽しく見物していた。

真冬の天気はとても寒かったのだけど、楽しく一緒に歩き回っていると、時間がどのように過ぎていくのか分からない位あっという間に過ぎてしまった。


(グーグー)


「僕、めちゃくちゃお腹空いてる」


グレース公爵は力無い声でお腹を抱えながら市内の真ん中で立ち止まった。

セレナは非常に心配そうにグレース公爵に話しかけた。


「そうですね、グレース公爵閣下。私たち、何か食べに行きましょうか?」


「うん。僕は急に温かいリドンが食べたいんだけど…。そんなのセレナは嫌いでしょ?セレナが好きなところに行こう!」


グレース公爵の力の無い言葉にセレナは首を振り、明るく微笑んだ。


「リドン!どこかで聞いたような気がするんだけど…、あ!カル!この前私に一緒に行こうと言った所だよね?」


カルロス皇太子がにやりと笑いながら軽く頷いた。


「そうだよ!」


「よし!じゃあ一緒に行こう!私も一度は食べてみたかったわ!」


セレナが明るく笑いながら話すと、カルロス皇太子とグレース公爵は驚いた表情でセレナを見つめた。

私もセレナは屋台料理があまり好きでないことを知っていたため驚いた目つきで彼女を見た。

我々はカルロス皇太子の案内で数多くの路地を通り、路地の端の古いテントを張った店に入ることができた。


「おぉ、こういう雰囲気のところだったんだ。思ったより悪くないわね」


「そうでしょう?ところできれい好きのセレナが今日に限ってどうしたの?」


カルロス皇太子が大変不思議そうな表情で彼女に尋ねた。


「ただ私も味が本当に気になってただけ!一度食べてみるわ!」


「そうか!いい考えたよ!セレナ姉さんもきっと美味しいと言うと思うよ?たまにこのリドンが思い出されるほどとても美味しいの!」


グレース公爵はセレナにリドンの味を説明し、食事の仕方を教えてくれた。

セレナもグレース公爵の言葉を注意深く聞きながら数えきれないほど頷いた。

私とカルロス公爵は2人を見つめながら優しく微笑んだ。

セレナとグレース公爵はとても仲が良さそうだった。

私たち4人はリドンが出るまでひそひそと話をしながら待った。


(ポン)


「どうぞ、ごゆっくり。お客様」


「いただきます」


ついに私たちの前に湯気が立つリドン4杯が置かれた。

新鮮な海産物と白いスープ、そしてふっくらした麺が食欲をそそった。

私もさっきグレース公爵が言ったように、このリドンのスープをたまに思い出すことがあった。

セレナの顔は若干繊細にこわばったようだったけど、すぐに明るい表情で汁をすくって口に入れた。


「わぁ!美味しいわ!」


「そうでしょ?セレナ姉さん?」


「見て!たまにはこんな食べ物も食べないと!セレナ、ハハ」


私はもうグレース公爵の保母ではないけど、自然に彼の面倒を見ていた。

グレース公爵が熱いスープをテーブルの上にこぼすと、急いでスカートのポケットからハンカチを取り出して拭きながら言った。


「グレース公爵閣下、気をつけてください。スープが熱くてやけどを負うこともありますよ!」


その時ふと誰かが私をじっと見つめている視線が感じられて頭を上げた。

緑眼のカルロス皇太子の瞳が、私をじっと見つめていた。

私は自分の顔に何かついているのかと思い、素顔を手で何度も拭きながら彼に聞いた。


「あの、カルロス様。私の顔に何かついてますか?」


「いや…、ただ」


カルロス皇太子が言葉を濁し、何事もなかったかのようにリドンの麺をずるずると飲み込んだ。

カルロス皇太子の隣でリドンのスープをすくって飲んだセレナの表情が一瞬固くなったようだった。

テーブルにスプーンを並べた彼女が私に優しい笑顔で話しかけてきた。


「あ?そうだ。エレイン。宮でメイドの仕事はどう?話は聞いたよ!仕事は難しくない?」


「はい、わるくないです…。いつものことですから。慣れてきてます」


「ああ、そうなんだ。でもハリの邸で働いた時の方が楽だったんでしょう?今は皇居だから何だか過ごしにくそうだわ」


ハエリス公爵の話が出ると私の顔が少し赤くなったようだった。

スカーフで隠された私の首筋が何だか猫じゃらしで掻いているようにかゆかった。

今日に限って突然ハエリス公爵に凄く会いたくなった。


「はい、確かにハエリス公爵の方に長く住んでいたので皇居よりはハエリス公爵の方が楽ですね」


「うふん…。そう?そうなんだ」


私を見つめるセレナの顔に、とても不満そうな表情が一瞬現れて消えた。

この席に座っている私だけが気づくような表情で、なんだか苦々しい気がした。

私たち4人は美味しいリドンを腹一杯食べて店の外に出た。

いつの間にか日が沈んだせいか、すがすがしい冬の夜風にもっと寒い気分になった。

もう別れる時間になると、セレナがとても残念な声でカルロス皇太子に話した。


「カル!」


「うん?」


「私たち、次にまたさっきのお店に行こうよ!どう?」


「うん。俺は勿論いいよ!」


「私もいいわ!フフッ。 カル、私は先に帰るわ。グレース公爵閣下、さようなら。バイバイ。エレイン!」


「うん!気をつけて帰ってね」


「さようなら!セレナ姉さん」


「お気をつけてお帰りください。セレナ様」


セレナは彼女の家門の馬車に乗って戻り、私とカルロス皇太子、グレース公爵は皇太子の専用馬車で皇宮に向かった。


「パカラッパカラッ」


「うーん…。エレイン!僕、眠すぎるよ」


グレース公爵は馬車に入ってくるや否や習慣のように膝を枕にして横になろうとした。


「グレース…」


「はあ…、どうしました?兄貴?」


「ここにおいで」


「ひいん。久しぶりにエレインの膝で横になりますよ」


「グレース」


断固たる目つきでカルロス皇太子がグレース公爵をじっと眺めていた。

グレース公爵は非常に残念そうに不平を言いながら、カルロス皇太子の隣に座った。

カルロス皇太子が自分の膝で視線を送ると、気に入らないようにグレース公爵が頬を大きく膨らませた。

しかし、眠気に耐えられず、結局カルロス皇太子の膝を枕にして深い眠りに落ちた。

私はカルロス皇太子とグレース公爵の2人の姿を見ながら微笑んだ。

ハエリス公爵とグレース公爵も親しくなったらいいなと思った。

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