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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第44話 確認するお互いの感情

挿絵(By みてみん)


ハエリス公爵が黙って去った後、私たち4人は花火大会を街の端から見物し始めた。

通りの果てでは主にアーティストたちが色々な短い公演をしていたけど、とてもユニークで面白かった。


「エレイン!!僕達もあっちに行ってみよう!人がおびただしく集まっているのを見ると面白いものがありそうだよ」


「そうしましょうか?」


グレース皇子はとても興奮気味で私のスカートの裾を引っ張って速く歩いた。

私は後からついてくるカルロス皇太子とセレナに先に行くと目くばせした後、グレース皇太子について行った。

グレース皇子の言葉通り、片隅で異色の公演をしていた。

ベイリオ皇国の南側にあるギランス王国から来た公演団らしく、服からとても変わっていた。

筋肉質の男が、派手な金箔が入った赤いベストだけを着て、自分の丈夫な体を誇示した。

その男は棒の先に火をつけてたいまつのようにした。


(フー)


(ガラガラ)


その男が口で風を吹くと、突然松明は棒の先を覆うほど巨大になった。


「わあ!」


(ゴクリ)


人々は皆驚いた表情で固唾を飲み込み、公演を見物した。

男は強い炎が熱くないのか余裕の笑みを見せながら、今度はその棒をごくんと口の中に入れて飲み込んだ。

まるで魔術のように、その棒はいつの間にかその男の手から消えていた。


「わああああ」


「凄い!」


人々はより興奮した目つきで、その男がどうするのかをじっと見ていた。

沢山集まっている人たちの間にいる私とグレース皇子も、好奇心に満ちた表情で固唾を飲んだ。

その時、可愛い女の子が空き箱を持って見物する人の中を歩き回った。

たぶん次のショーを見るには金を払わなければならないようだ。

私とグレース皇子は喜んでポケットから銀貨をいくつか取り出して空箱に入れた。


(じゃらん)


ある程度集金が終わると、その筋肉質の男性の隣に、華やかな顔のほっそりした男性が女装で現れた。

ほっそりした男性は、まるで女性のように様々な媚態を示しながら、筋肉質の男性の口の中から何かを苦労しながら取り出すふりをした。

本当に驚くべきことに、筋肉質の男性の口の中から、さっき入った棒がだんだん引き抜かれてきた。

しばらくして、棒の先に完全に火までついている状態で長い棒がまた現れた。


「わは!!」


(パチパチパチ)


大勢の人々の拍手が花火大会の街を埋め尽くすようだった。

私とグレース皇子は陽気にオットセイのような拍手を送りながら楽しい時間を過ごした。

カルロス皇太子とセレナは、いつの間にか他のところへ見物に行ったのか街には見当たらなかった。

私とグレース皇子は街角のショーや色々な露店を見物しながら、楽しくお祭りを楽しんだ。

祭りの夜が更けると、カルロス皇太子とセレナが嬉しそうな表情で路地の入り口に立っている私に歩いてきた。


「あ!長い間、探し回ったよ! エレイン!」


「私も探し回りました!それでもこうして会えましたね!よかったです」


グレース皇子は長い間歩くのに疲れていたのか、私の背中におんぶされてぐっすり眠っていた。


「あいつ、本当に疲れたみたいだな…?セレナ、どうも今年の花火は見られなさそうだよ?」


「そうね、仕方がないわね。ちょっと残念」


「エレイン、俺にグレースをくれ。俺が代わるよ…」


「あ、いいえ。私は大丈夫です。動けば、グレース皇子様が眠りから覚めそうな気がするので。馬車はどこにあるんでしょうか?カルロス様?」


「うん。もう少し歩けばあるよ。早く行こうか」


「はい!」


私達は10分ほど歩いて皇室の馬車のある所に到着した。

私が立っていた路地からそれほど遠くない所に馬車があって幸いだった。

セレナの家門の馬車も、私たちが乗ってきた馬車の近くにいたので、私たちは一緒に別れの挨拶を交わした。


「気をつけて帰ってね。セレナ!」


「はい!カル!気をつけて帰ってくださいね!エレインちゃんも気をつけて帰ってください。今日は楽しかったですわ」


「はい!私も楽しかったです。気をつけてお帰りください。セレナ様」


セレナがバルタン侯爵家の家門の馬車に乗って先に出発すると、私とグレース皇子、カルロス皇太子も馬車に乗った。

いつの間にかグレース皇子は私の膝を枕にしてぐっすり寝込んでいた。


(ガタッ)


ガラガラという馬車の車輪の音が、真夏の夜に心地よく聞こえてきた。

私は馬車の外の暗い町を眺めながら、しばし色んな想念に耽っていた。


「エレイン?」


突然、私の名前を呼ぶカルロス皇太子の声に顔を背けて彼を見つめた。

彼は私を呼んでおいて、しばらく黙ってじっと凝視していた。


「はい!カルロス皇太子殿下…、何か、おっしゃることでもありますか?」


「いや。ただ…、ただ呼んでみただけ」


突然ニッコリとわけもなく笑っていたカルロス皇太子が、再び首を回して窓の外を見つめた。

私は怪訝な表情でカルロス皇太子を見て、私の膝に眠るグレース皇太子を見つめた。

私は柔らかなグレース皇子の黒髪を優しくなでながら、彼にいい夢を見てほしいと思った。

黒い髪をそっと触っていると、ふと私の心の中にハエリス公爵の顔がふわりと浮かんだ。

私は首を振りながら、彼のことを想う自分の気持ちを無理やり押し殺した。

いつの間にか皇居に到着したのか、馬車が止まった。


「俺にグレースに担がせてくれ。エレイン」


「あ、はい!かしこまりました」


私は眠っていたグレース皇子を、慎重にカルロス皇太子の背中に授けた。

カルロス皇太子はグレース皇子を背に、皇子宮の寝室に連れていった。

彼はぐっすり寝ているグレース皇子をベッドの上に寝かせて薄笑いを浮かべながら言った。


「起きもしないんだね。こいつ、それほど凄く疲れてたんだね」


「はい…、そうですね」


私とカルロス皇太子は静かに部屋のドアを閉め、皇子宮の寝室から抜けだした。

私は彼を見送るために皇子宮の長い廊下を一緒に歩いた。

いつの間にか皇子宮の正門ロビーに到着して、彼は明るい笑顔で私に言った。


「今日は楽しかった。エレイン…、花火が見られなくて残念だけどね」


私もちょっと惜しい気がして、小さく頷きながら話した。


「はい…。凄く残念ではあります。次の機会があればいいですね」


「そうだね。次はもっと面白い所に見物に行けばいいよ。体もまだ良くないのに今日はお疲れ様。早く休んでね」


「はい!お気をつけてお帰りください。カルロス皇太子殿下」


私はカルロス皇太子に礼儀正しく礼を尽くして見送った。

カルロス皇太子が皇子宮を出た後、私は自分の部屋ではなく庭に足を運んだ。

今日思いもしなかったハエリス公爵に会えたことで、私の心はとても動揺した。

無理やり押さえつけていた彼を好きな気持ちが、またもこもこと水面に浮かび上がった。

魔手を避けようと私をギュッと抱きしめてくれた彼の胸の中のハッカの香りが、まだ私の鼻先に漂っているように感じられた。

実は、私は今もあの「魔手の森」で自分が何を間違ったのか、よく分っていなかった。

ただ怪我をした騎士を治療しようとしていただけなのに、彼がどうしてあんなに恐ろしいほど腹を立てたのか分からなかった。

厳しい表情で私を眺めていた彼の目つきが浮かび上がると、まるで鋭い針で心臓をちくちくと刺すように心が痛かった。

今日の祭りでセレナと共に街を歩いていたハエリス公爵の姿を思い出した。

二人が並んで歩く姿がとてもよく似合うので、ひょっとしたら私の気分がもっと悪いのかもしれない。

そう思いつつ歩いていると、いつの間にかグレース皇子宮の裏庭の庭園に到着していた。 一瞬、私は自分の目を疑いながら、手の甲で何度も両目をこすった。

仕事しに帰ったと言ったハエリス公爵が、皇子宮庭園のライラックの花木の下に立っていた。

突然、私の心臓はどすんと地面に落ちたようだった。

ハエリス公爵は皇子宮の庭に入る私を、穴が開くほどじっと見ていた。

私はぎこちなく遠くから彼に会釈して、席を離れようと素早く引き返した。


「ちょっと待ってくれ!エレイン!こっちに来なさい…」


遠くからハエリス公爵が私を掴む声が大きく聞こえてきた。

私は仕方なく重い足を引き返して、ゆっくりとハエリス公爵のところに歩いた。

彼の黒真珠のような二つの瞳が遠くから近付く私をじっと見つめていた。

私とハエリス公爵はいつの間にか皇子宮の庭でお互いに向き合うようになった。

私は先に彼に簡単に黙礼をしてから首を上げてハエリスを見つめた。

ハエリス公爵の夜に似た真っ黒な瞳の中に、何とも分からない熱い熱気が漂っているようだった。

私はどうしても彼の視線と向き合う勇気がなかったので、自然に向き直って彼のそばに立った。

ひょっとして私の心がそのまま彼にバレちゃいそうでとても恐ろしかった。

ハエリス公爵は私を呼んでおいて、しばらく何も言わなかった。

私はなぜかもっと緊張して何でも口に出した。


「あの…、今グレース皇子様が寝床についています。用事がありましたら明日いらっしゃればいいと思います」


「うむ。そうか」


「はい…」


何かを悩んでいた彼は、突然横に曲がった私の肩を正して、彼と向き合うようにした。

私はびっくりした表情でハエリス公爵を見上げた。

熱く揺れる彼の眼差しは、私の頭から私の両目、鼻、唇に自然と水が流れるかのように下がってきた。

なんだか、私の口の中の唾がカラカラに乾くような気がした。


「はぁ…」


深いため息を出したハエリス公爵の視線がいつの間にか、私の唇にじっと留まった。

ハンサムな彼の眉間に深いシワができているようで、私は怪訝な表情でハエリス公爵をじっと見つめた。

彼は何かが非常に気に入らない顔つきで、自分の親指をあげて何かを消すように私の唇をそっとこすった。

かちこちしたハエリス公爵の親指の手のたこが、私の唇にそのまま感じられた。

私は今、これはどういう状況なのかよく分からなくて、震える声で口を開いた。


「あの…、公爵閣下…?何か付いてすか?私が取ります」


私が急いでスカートの中のポケットからハンカチを取り出そうとしたら、ハエリス公爵が私の手首をつかんで阻止した。

私はじっと首を上げて、怪訝が目つきでハエリス公爵をじっと見つめた。

魅惑的な彼の両目はまるで半月のように綺麗に曲がったようだった。


「君は…、直さなきゃいけない癖が口だけではなかった。油断する癖も直さなければならないな」


「え?うっ」


突然私の唇にハエリス公爵の暖かい唇が触れ合った。

私はびっくりした表情でハエリス公爵の熱い息づかいをそのまま感じた。

彼を押しのけることは考えもできず、私はそのままカチカチに固まった。

ハエリス公爵はしっかりした彼の腕で私の腰を巻きつけ、自分の体の方に私の体をぴったり寄せた。

いつの間にかしっかりとした彼の上半身と私の手の平が触れ合っていた。


(ドキドキ)


私の両手のひらには、速いスピードで動いている彼の心臓の鼓動がそのまま伝わった。


(ドキドキ)


私の心臓も彼と同じようにまるで短距離走のようにとても早く鼓動した。

熱く出てる彼の息が、私の頬の肌を物凄くくすぐっていた。

私はそっと目を閉じて、暖かい彼の唇と熱い息づかいを感じた。

しばらくずっとお互い温かい体温を分け合っていると、突然彼の舌が私の口に入り込んだ。

思いもしなかった急展開に驚き、手のひらで彼の上半身を強く押した。

しかし彼は私を離してくれなく、巻いている腕をもっと強く締め付け、私の体を離さずに彼に密着させた。

結局、彼の歯と私の歯は滑らかにぶつかり合い、濃密な彼の舌は私の口の中を柔らかく泳いだ。

時間がどのくらい経ったのか分からないくらい長い時間が過ぎたようだった。

彼の唇と私の唇が辛うじてお互い離れた。

私はとても混乱した表情でじっと彼を見つめた。

ハエリス公爵は意地悪そうな表情でそっと私に微笑みながら言った。


「エレイン、君の唇…これからは俺だけのものにはできないか?はぁ…、嫉妬して本当に狂いそうだからな」


(パン!パン!パン!)


花火大会が始まったのか、皇居の向こうから花火が打ち上げられる音が聞こえてきた。

私の心臓も夜空を美しく彩るあの花火のように「パン」と弾けそうになっていた。

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