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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第33話 むずむずしたエレインの心

挿絵(By みてみん)


私はグレース皇子宮のおやつを作る厨房の中に入って、気を取られぬまま椅子にぼんやりと座り込んだ。

シャーロットはお茶かごをカウンターに載せて、私の機嫌を伺い、清潔な水で茶の葉をきれいに洗った。

私も彼女のそばに行って茶の葉を洗うのを手伝わなければならなかったけど、色々なことを考えていて椅子から身動きできなかった。

深く考えれば考えるほど、私の満足できる答えは出なかった。

私は熱く燃え上がったような自分の下唇をかみしめた。


「あの…、保母様?エレインの保母様?! 」


焦って私を呼ぶメイドであるシャーロットの声にびっくりして彼女を見つめた。

シャーロットは非常に心配そうな目つきで私を眺めていた。


「はい。どうしましたか?シャーロット?」


「あのう…、もうすぐダルニング皇子様がいらっしゃる時間になりました。でも、茶菓の準備が•••」


私はやっと意識を取り戻し、グレース皇子宮の中を見回した。

シャーロットが洗っておいたお茶の葉はバスケットにちゃんと入っていたけど、私が作るべきクッキー材料はキッチンの補助テーブルの上に散らかっていた。


「あら!私のことが!シャーロット。時間があまり残ってないですかね?」


「はい。多分1時間くらい残っていると思います!保母様!」


「すみませんが、ちょっと私を助けてもらえませんか?お願いします。シャーロット」


「はい!何でも言ってください!お手伝いします。何から先にすればいいですか?」


『それではまずお湯を沸かしてください。私は早くオートミールクッキーを焼きます!」


「はい。わかりました」


私は素早くフィルターネットに入れたオートミールの粉と小麦粉を粉状に落とした。

そして塩と砂糖、バターとナッツ類を混ぜて綺麗なクッキー型に押してとった。

予め予熱しておいたオーブンにクッキーを入れてシャーロットが全部洗っておいた茶葉をいちいち乾いたタオルで乾かした。

オートミールクッキーが焼けるまでダルニング皇子のためにお茶を作ってみることにした。

普通は茶葉は乾かして使うけど、茶に生葉も少し入れてブレンドして特別な茶を作ってみることにした。

ダルニング皇子は苦いお茶が好きだというけど、まだ子供だから香ばしい味も好きそうだった。

シャーロットは熱したオーブンでクッキーの焼き上がりを注意深く取り出した。

私たち2人が緊迫に忙しく動いたおかげか、幸いにもぎりぎりでティータイムに使う茶菓とお茶が用意された。


「どうもありがとう!シャーロット!!」


「いいえ!大したことでもなかったですもの!もうすぐダルニング皇子様がいらっしゃる時間ですね。私が先に出てみた後、保母様に知らせます」


「はい!ありがとうございます!!」


グレース皇子宮に青色が不思議に混じった黒髪が印象的なダルニング皇子が訪れた。

父親のゲリマン皇帝よりフェルデン王国出身の皇妃に似ているのか、彼はとても異国的な容貌を持った男の子だった。

二人が並んで座ってひそひそ話をしながら楽しそうに笑った。

グレース皇子とダルニング皇子は異母兄弟だけど、仲はとても良かったようだった。

私は、グレース皇子とダルニング皇子に直接準備した茶菓とお茶をティーテーブルに置いて、静かにダルニング皇子を迎える保母のそばに行って立った。

ダルニング皇子が慎重に熱い湯のみを持ち上げながら、奥ゆかしいお茶の香りを吟味した。

そしてお茶の水を一口口の中に含んで、しばらく目を閉じた。

ダルニング皇子は、10歳の子どもができない悟りのある老人のような表情をした。

両目をつぶってしばらくお茶の味を味わっていたダルニング皇子が、突然両目を大きく開けた。


「グレース兄様!このお茶なんですけど、すごく立派なようです!僕の十歳の人生でこんな立派なお茶は初めてです!ほろ苦さに舌先漂うこの香ばしさ!? これは何でしょうか?こんなお茶は初めてです!」


ダルニング皇子が大好きそうに話すと、グレース皇子が意気揚々とした表情で肩をすくめた。


「ええ、きっとあなたが気に入ると思ったよ。僕が特別に、君のために準備したんだ。フフッ!」


グレース皇子は私を応接間で待機している私を見ながら明るく微笑んだ。


「さぁ!僕が紹介してあげる!僕の新しい保母のエレインだよ。ダルニングがびっくりしたこのお茶を直接で作った方だよ。お互いに挨拶して」


ダルニング皇子は好感の持てるような目つきで私に口を開いた。


「このお茶を飲んでみると、これまで僕が飲んできたお茶は何でもなかったという気がする!君の名前がエレインだと言ったっけ?今日、出したこのお茶の名前は何だ?」


「はい、ダルニング皇子様。お褒めの言葉、ありがとうございます。フェルテン王国だけで自生するナカールの葉とツルレイシを混ぜてお茶を淹れてみました。お口に合うようで、本当に幸いです。このお茶は私が自分の好みで作ってみたものなので、まだお茶に名前はありません。ダルニング皇子様が付けてくださいますか?」


ダルニング皇子の顔にとても感動的な表情が浮かんだ。


「このお茶を私のお母様に持って行けたら本当に喜ばれるだろうね。お母様はいつも故郷を恋しがっているよ。このお茶の名前はうーん…、そうだね!「故郷の思い出」という名前を付けてやる!あの…もし僕にこのお茶を分けてくれる?私の母に差し上げたくて…」


若年寄の話し方でダルニング皇子が目を輝かせながら私に尋ねた。

私は、ダルニング皇子に明るい笑顔で答えた。


「はい!当たり前です。「故郷の思い出」!お茶の名前がとても良いですね。帰る時に別にお持ちいただけるよう準備いたします」


「うん、本当にありがとう!ハハ」


ダルニング皇子は気分がとてもよかったのか、明るい笑顔を見せた。

グレース皇子とダルニング皇子はしばらく笑い、騒ぎながら話に花を咲かせた。

私は、ダルニング皇子の茶葉を取りに、しばらく客間を静かに抜け出した。


(コツコツ、コツコツ)


今日に限って皇子宮の厨房に行く廊下が少し遠いようだった。

上辺では笑っていたけど、実は私の心は揺れ動いて心も乱れていて、すべてのことが手につかなかった。

皇子宮の厨房に到着した私は、新たに茶葉を混ぜて一ティーバッグずつ細かく包装した。

そして、グレース皇子宮のメイドのセラに綺麗なプレゼントボックスを頼んだ。


「保母様!!お願いしたプレゼントの箱を持ってまいりました」


「ありがとう。セラ」


セラが持ってきたプレゼントの箱は、黄金色のベイリオ皇室の模様が複雑に描かれた美しい箱だった。


「わぁ…、箱がとても綺麗ですね!高級感があります」


「はい。ベイリオ皇居の皇室でしか使えない特別な贈り物箱です。もしもっと注文することがあればもう一度呼んでください!エレインの保母様」


「はい、ありがとうございます。セラ」


私は綺麗な贈り物箱の中に私の準備した茶葉ティーバッグを念入りに包装した。

綺麗にラッピングされた箱を見ると、まるでデパートの商品のように、かなりすてきに見えた。


「さあ、もうすっかりできあがっているよ!」


私は茶葉の贈り物箱を注意深く持ってまたグレース皇子宮の応接間に向かった。

その時、廊下の端にグレース皇子宮の応接間のドアの外に出るダルニング皇子とダルニング皇子の保母、メイドたちが見えた。

私は怪訝な表情でダルニング皇子に近づいた。


「ダルニング皇子様!もう少し遊んでからでもいいのにどうしてこんなに早く起きましたか?」


私は茶葉の入ったプレゼント箱をダルニング皇子の保母に渡して聞いた。

ダルニング皇子はしょんぼりとした声で私を見つめながら言った。


「はぁ…怖いハエリス兄様がいらっしゃった。グレース兄様と別に重要なことがあるみたいだ。僕は多くの兄様の中で、ハエリス兄様が一番怖いよ!どうにも今日は残念だけど、これで帰らなければね」


私はハエリス公爵がグレース皇子宮に訪ねたという話に胸が「ドーン」と落ちる気分になった。


「僕はまた今度訪問するわ。この茶葉本当にありがとうね。いただきます!」


「はい、さようなら。ダルニング皇子様」


ダルニング皇子が廊下を出た後、私は心臓の鼓動をなんとかして落ち着かせた。

急いで足を運んだ後、キッチンに戻り、新しい茶菓とお茶を用意した。

いつも仕事が多すぎて疲れているようなハエリス公爵の顔が私の頭に浮かんだ。

人の疲れを取って精神を安定させる茶葉をよく混ぜ、香ばしいお茶を作った。


(ドキドキ、ドキドキ)


私は茶菓と茶の載せた盆を持って震える心で応接間の門前に立った。


(コンコン、コンコン)


(キイッ)


グレース皇子宮のメイドたちが両方から応接間の扉をぱあっと開けてくれた。


(ゴクリ)


私は固唾を飲み込んで、緊張した気持ちで応接間の中に静かには入った。

柔らかい床に敷かれたカーペットを踏みながら、慎重な足取りでティーテーブルに向かい合って座っているハエリス公爵とグレース皇子に近づいた。

彼らのそばに立つと、4つの黒い瞳が同時に私の方に向いた。

私は震える声をわざと隠してハエリス公爵とグレース皇子に微笑んで言葉をかけた。


「ハエリス公爵閣下、グレース皇子様。お茶とお菓子を用意しました」


「うん。ありがとう、エレイン!」


グレース皇子は私に明るい笑顔で答えた。

ハエリス公爵の視線はまるで私を撃ち抜くかのように執拗に留まった。

私は毎回彼がこうやって穴のあくほど私を見つめるたびに、内心少し困惑した。

しかも今日はハエリス公爵と同じ空間にいるだけで、息がぐっとつまる思いだった。

ハエリス公爵は何の返事もなく、ダルニング皇子が使った茶わんと茶菓の片付けを静かに眺めていた。

私はダルニン皇子が使った湯飲みと茶菓をすべて片付けて、新しく準備したお茶と茶菓をハエリス公爵の前に丁寧に持ってきた。

緊張で手先が震えていたけど、幸いお茶がこぼれないようにちゃんと置くことができた。

ハエリス公爵は私の持ってきた茶わんを持ち上げて茶の香りをかいだ。

そして耳障りのいい声で私に口を開いた。


「昔の公爵家からのお茶の香りとはちょっと違うな」


私は驚いた表情でハエリス公爵の顔をしばらく見つめた。

お茶を一口飲んだ彼は、まるで私に説明してほしいかのように震える声を隠し、口を開いた。


「はい、ハエリス公爵閣下。これは疲労回復に役立つツカラの花びらで淹れたお茶ですよ。昔、公爵家にいた時は主にヘリオンスの花びらを使って差し上げたのですが…。皇子様宮にヘリオンズの花びらがなかったので、ツカラの花びらにしてみました。略性はヘリオンズの花びらの方がいいです…。熟睡に役立つので。後で公爵家に戻ったらヘイオンスの花びらで淹れるお茶をたゆまず飲んでみてください。ちょっと疲れがとれると思いますよ」


ハエリス公爵は非常に驚いた様子でコップを持ち上げてもう1杯飲んだ後、私に言った。


「今まで君が俺に気を使ってくれたことを俺は未だに知らなかったな。ありがとう。エレイン」


期待もしていなかったハエリス公爵の感謝の言葉に私は戸惑い狼狽した。

ハエリス公爵の優しいまなざしがずっと私に留まると、頭の中が画用紙のように真っ青になった。


「ああ、違います。私がしなければならないことをしただけです…。お二人でお話なさってください。私はこれで席をはずさせていただきます」


私はハエリス公爵とグレース皇子に一礼し、グレース皇子宮の応接間から出てきた。

私の顔がまるで熱したフライパンのように凄く熱くなったようだった。


「エレイン保母様!大丈夫ですか?顔が凄く赤いみたいです!どこか痛いですか?」


メイドのシャーロットは心配そうな目つきで私を見つめながら言った。

私は当惑して首を横に振り、ぎこちなく微笑んだ。


「い、いえ。大したことじゃありません。はは。あの…ちょっと庭に出て風に当たりたいんですが、いいですか?」


「はい!わかりました。こちらの事はお気になさらないでください!私がよくわきまえて対処しますよ!」


「どうもありがとう!シャーロット」


ハエリス公爵が私に言った「ありがとう」という言葉が頭の中で絶えずリプレイされていた。

私は急いでグレース皇子宮から出て庭に出て涼みたかった。

そうしてこそ、私の心の中の熱気が収まるような気がした。

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