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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第31話 ヒロイン、セレナの誕生日パーティー

挿絵(By みてみん)


「カルロス皇太子殿下、グレース皇子様、エレインさん…、こちらへどうぞ」


私とカルロス皇太子、グレース皇子は、邸宅前で待機していたバルタン街の男侍従の案内で、邸宅内のパーティーホールに向かった。

バルカン侯爵家のパーティーホールは、皇居やハエリス公爵邸宅よりずっと規模が小さかったけど、可愛らしく古風な雰囲気のある場所だった。

パーティーホールに入ると、舞台の上で数人の楽士が誕生日パーティーのオープニングを演奏したばかりだった。


「ホホホ。今日はとても綺麗ですね。ノア様」


「ジェシア様も本当にとてもお美しいですわ」


「今日はセレナ様のお誕生日パーティーが 開かれる日ですし、素敵なあの方々もお越しになるでしょうね?本当に楽しみです」


「カルロス皇太子とハリエス公爵のことですよね?私はあのお二方を遠くから眺めるだけで、一日中心臓がドキドキしましたわ」


「その通りですよ。私も同じです。セレナ様は本当にいいですよね。ルックスならルックス、財力なら財力、さらにベイリオ皇国に尊い身分まですべて揃えたお二人でしょう。それに、お二人ともセレナ様1人だけを好きでいらっしゃるようですし…。ある時はセレナ様に少し嫉妬を感じますよ」


「ホホホ。人なら当然でしょう。私も同じですわ。一体セレナ様はどの方のものになるのか、とても気になりますわね」


誕生日パーティーに参加した客たちが、パーティーホールのあちこちで色んなグループを組んで話を交わしていた。

彼らの主題は大半がカルロス皇太子とハエリス公爵、そしてセレナの三角関係の話だった。

私たち3人はパーティーホールに入るやいなや、誕生日パーティーの主人公セレナを訪ねた。

バルタン家のパーティーホールの中央には、今日の主人公セレナが大勢の人に囲まれていた。

カルロス皇太子とグレース皇子がパーティーホールに登場すると、セレナの周りにいた人々が左右に退いて私たちに道を譲った。

セレナはパーティーの主人公らしく、美しく明るい笑顔で私とカルロス皇太子、グレース皇子を歓迎してくれた。


「皇国の星、皇太子様にお目にかかります。今日、私の誕生日パーティーに来てくださって本当にありがとうございます。グレース皇子様も来てくださってありがとうございます」


「お誕生日本当におめでとうございます!セレナお姉さん!」


「お誕生日おめでとう!セレナ」


誕生日を祝う挨拶が親しく交わされた。

いつのまにかセレナの青いエメラルドのような二つの瞳が、カルロス皇太子とグレース皇子のそばにいる私に向かった。


「こんにちは、セレナ様。ご招待に感謝します。お誕生日おめでとうございます」


「ありがとうございます。エレイン。来てくださってありがとうございます」


なぜか私を見つめるセレナの目が、何か気に入らないかのように不快な色で浮かんだ。

私は内心少し困惑していたが、彼女には何の反応も示そうとしないようにした。

刹那の時間の間に起こったことなので、私も自分が受けた感じが正しいのか確信できなかった。

セレナは、これがすべて私の勘違いかのように暖かい笑顔で話しかけた。


「まぁ!今日のエレインちゃんは本当に美しいですね。眩しいほどですわ!」


「いいえ、セレナ様!本当に美しいです!このパーティーホールの中でセレナ様が最も輝いているようですね」


セレナはパーティーの主人公らしく、きらめく白いドレスに桜色の花リボンの飾りと薄い網目が目立つドレスを着ていた。

彼女の姿はとても美しくて、彼女を見つめる私の目がすっきりした気分だった。

セレナは私の称賛にとても感謝していると言い、戸惑った。

バルタン侯爵家のパーティー場にはいつの間にか、美しい旋律のハープ演奏が流れていた。

パーティー場の中には、一目でも尊い身分のお客さんがたくさん集まったようだった。

私はセレナと親しく話し合うカルロス皇太子とグレース皇子のそばから自然に遠ざかった。

そして華やかなパーティー場の片隅に設けられた円形テーブルの前に立った。

パーティー場の隅の席に来ると、まるで私の席に来たように心が少し楽になった。

その時、私の視線に侍従の案内を受けながらパーティーホールの中に入場する見慣れた人を見つけることができた。

男らしさ漂う黒い燕尾服を着たハエリス公爵だった。

ハエリス公爵はパーティーホールに入場するやいなや、今日の誕生日パーティーの主人公であるセレナを探しているようだった。

その時、ハエリス公爵の黒い瞳がパーティー会場の片隅にいる私に向けられた。

私はハエリス公爵と目が合うと、遠くから頭を下げて彼に丁重に挨拶した。

頭をまた上げてみると、ハエリス公爵はいつの間にかセレナとカルロス皇太子、グレース皇太子と挨拶を交わしていた。

明るい表情でハエリス公爵を眺めるセレナの姿は、遠くからでもまぶしかった。

ハエリス公爵は普段の冷たくて冷静な表情ではなく、とても優しい目でセレナを眺めていた。

二人の優しい姿を見ると、急に私の心臓を針でちくちく痛むような気がした。


⦅私どうしちゃったんだろう?心がものすごくヒリヒリする…⦆


一緒に立っているハエリス公爵とセレナは、まるで善男善女のようによく似合っていた。

二人が立っているのを見る私の心は、まるで魚の骨が喉にひっかかったようにギクシャクしていた。


⦅私も今日はちょっと変だよ…心がずきずきとして痛む⦆


「あのう…、こんにちは。お嬢さん?」


「え?」


誰かが私を呼ぶ声に、顔を向けて彼を見つめた。

整った外見の男性が、洗練された燕尾服を着て私の前に立っていた。


「どうなさったのでしょうか…」


男性は赤く火照った顔でためらいながら私の前で冷や汗をかいた。

私と目も合わせられずにしばらくためらった挙句、やっと口を開いた。


「あの...とても美しいレディーを見ると、私の心に勝つことができず、失礼を冒しました。僕はノベルタン伯爵家の長男カルディンと申します。失礼ですが、お嬢さんのお名前は何とおっしゃいますか」


私は当惑したけど気乗りがしない感じで彼に答えた。


「あ…、私はエレインといいます」


「エレイン令嬢さんでいらっしゃいますね。本当に美しい名前ですね。エレイン令嬢、 一目で見るや否や惚れました。失礼ではなければ私と一緒に踊りませんか?」


カルディンという男がとても緊張した目つきで私を見つめながら、じっと私の答えを待った。

私はどう話せばいいのか分からず戸惑った。


「え?あの、私は…」


「このお嬢さんはダンスを本で習っているからあなたの足の甲を壊してしまうかもしれないんだ、別のパートナーを見つけた方がいいな」


いつ私の元へ来たのか、耳障りのいいハエリス公爵の声が聞こえた。

すぐでも凍らせてしまいそうなハエリス公爵の冷たい目に、伯爵家の長男カルディンはひどく気後れして逃げるように席を立った。

ハエリス公爵はじっと立って、私の姿をじっと見つめた。

私はハエリス公爵に、ちょうど困っていたので助けてくれてありがとうございましたと言うべきか、それともここには何の用ですかと尋ねたらいいのか分からず、呆然とした表情で彼を見つめた。

ハエリス公爵が黒真珠のような黒い瞳を私の頭からつま先まですっと見通しているように感じた。

やがて彼の赤く魅惑的な唇から深いため息が吐き出された。


「はぁ…、誰にも見られないように、しっかり包みたいな」


「え?」


聞き間違えたのかなと思い、彼に反問した。

しかし、ハエリス公爵の答えを聞きもしないうちに、周囲を明るく照らすある集団がパーティーの隅にいる私を訪ねてきた。

カルロス皇太子、セレナ、グレース皇子だった。


「どうしたの?何かあったの?」


グレース皇子は私を見ながら心配そうに尋ねた。

私は当惑した表情をわざと隠して、グレース皇子に「心配しないでくださいね」という微笑みを見せながら言った。


「いいえ、皇子様。パーティに招待された方とご挨拶を交わしました」


私の言葉を聞いたカルロス皇太子のハンサムな眉間が少し縮まったようだった。

綺麗なセレナは微笑みながら私へと口を開いた。


「ホホッ。今日はエレインさんがとても美しくて、花を探すように蝶たちが訪ねてきたみたいですわ。この隣にいらっしゃるハエリス公爵閣下が、まるで黒騎士のようにエレインさんを守ろうと足の甲に火が落ちたように走ってきたようですけど。合ってますか?」


グレース皇子はセレナの言葉に、ハエリス公爵をつんと見つめてから首を横に振った。


「駄目だ!!エレイン、これからは俺が守ってあげる!心配するな!分かった?男はみんなオオカミだよ!オオカミ!」


グレース皇子の可愛い口から出る言葉ではなさそうで一瞬、とても面白かった。

澄んだ瞳で私を見つめるグレース皇子の両頬はとてもかわいくて、ずっと伸ばしてあげたかった。

グレース皇子の無駄口のお陰で、かなり落ち込んでいた肩が少し開いたようだった。


「グレース皇子様!心配しないでください。本当に大したことじゃなかったです!心配してくれてありがとうございます」


「ふん!このパーティーの主人公がまるでエレインちゃんのようです!私、少し寂しいですよ?」


セレナは、わざと残念そうに私たちを見つめながら言った。

やっとカルロス皇太子、ハエリス公爵、グレース皇子が慌ててセレナに言い訳しようとした。

この3人の男の姿があまりにも可愛くて、にっこりとした笑みが自然に浮かんだ。


「今セレナ様が三人をからかってるんですよ。プフッ!」


「プッ」


「あ!そういうこと?ハハハ」


「ホホホ。これだから男というものは!!女心を分かるにはかなり遠いようです!そうでしょう?エレインちゃん?」


「はは。はい!そうですね!」


セレナはこの状況がとても面白いらしく、恥ずかしそうに微笑んだ。

ちょっとしたハプニングが終わって、私とグレース皇子は誕生日パーティーに用意されたおいしい食べ物を食べながら、遅い夕食をした。

有名なシェフを雇ったようで、セレナの誕生パーティーの料理はすべて素晴らしかった。

興に乗った演奏がいつの間にか、穏やかで雰囲気の良い音楽に変わった。

カルロス皇太子とセレナはパーティーホールの中央舞台に出て、互いに手を取り合って幻想的な呼吸で踊った。

二人の姿はまるでお似合いのカップルのようだった。

誕生日パーティーに参加した人々は、カルロス皇太子とセレナを見て嘆声をあげたり、嫉妬深い視線を送った。

ハエリス公爵はセレナの誕生パーティーに招待されたことを忘れたように、高位貴族の男性たちと共に政治の話をしているようだった。

夜が更けると、セレナの誕生日パーティーもだんだんと佳境を迎えた。

私はパーティーホールの外に設けられた休憩スペースで、膝を枕にして眠っているグレース皇子の肩を軽くたたいた。

朝から一日中ばたばたしていたらとても疲れたようだった。

私も今日一日がすごく長く感じられた。

そして私の心はとても乱れていたし、そわそわしていた。

私にも、自分の心が一体どうしてこうなってるのかよくわからなかった。

ハエリス公爵とセレナが永遠に一緒にいることを、二人の愛がかなうことを心の中で応援していた。

しかし、いざ今日二人が一緒にいる姿を見ると、私の心臓が数十本の針でちくちく痛むような気がした。

私は、この感情は一体何だろうかとつくづく悩んでいた。


(トントン)


静かな休憩室でノックが鳴り、扉が「ギイィ」と音を立てて開いた。

休憩室の扉の外には、洗練された黒い燕尾服のハエリス公爵が立っていた。

ハエリス公爵は扉の前に立ち、しばらく私とグレース皇子を交互に眺め、休憩室の中に入って扉を閉めた。

ハエリス公爵は苦々しいワインの香りを漂わせ、自然に私の隣に腰掛けた。

私はなぜかつま先がギュッとなって、唾がカラカラに乾くような緊張感を覚えた。

そわそわした私の本心がばれるかと思って、とても彼と顔を合わせることができなかった。

それで、いたずらにグレース皇子の寝顔だけをじっと眺めた。

すやすやと眠りこけたグレース皇子の姿が子犬のように可愛かったが、実は私の神経は隣に座っているハエリス公爵に集中していた。

ふとハエリス公爵の耳障りのよい低音の声が私のそばから聞こえてきた。


「俺が…」


私は慎重に頭を上げ、話しかけるハエリス公爵を見つめた。

男性的なハエリス公爵の彫刻のような顔が目の前に現れた。

彼は自分の言葉を続けずに、彼を見つめる私をじっと見つめた。

私の頭から目と鼻と唇、そして私の首筋にしばらく彼の視線が留まったようだった。

熱いハエリス公爵の視線に、夜明けから身を包んだドレスが彼の前で全部裸になったような気がした。

とても恥ずかしい気持ちで、私の体中が赤くなったような気がしたけど、心の片隅ではハエリス公爵が私をずっと見つめていてほしいという気がした。

他人を見る時、いつも冷たくて冷静だった彼の目には、何だか濃い色気が漂っているようだった。

一瞬、私は心の中で叫びながら何十回も頭を叩いた。


⦅ハエリス公爵閣下の瞳に色気が出るなんて!しっかりしろ、エレイン!腹黒いのはお前だよ!ハエリス公爵様でなく…⦆


私の心の中の悲鳴を知っているのかどうか、ハエリス公爵がグレース皇子と私を交互に見つめながら苦々しい表情で口を開いた。


「私が全力を尽くして守っている弟が、最近憎たらしく見えて大変だな…」


「はい…?」


ハエリス公爵は深刻な表情で私を見つめた。

夜空に似た彼の真っ黒な瞳が私の頭、両目、鼻、そして私の唇をしばらく留めた。


(ゴクッ)


固唾をのんでいた私は、ハエリス公爵の目に合わせることができず、頭を垂れた。


「ホホホ。今日はとても楽しかったです」


「次のパーティーにも私を招待してくださるんですよね?」


「勿論です!楽しみにしていてくださいね。ハハ」


いつのまにかパーティーが終わったのか、外から人々のざわめく声が聞こえてくると、ハエリス公爵が非常に残念そうに席を立った。


「ふぅ…」


ハエリス公爵は、私の膝を枕にして夢の中で彷徨うグレース皇子を見て、深いため息をついてから休憩室の外に出た。

私はハエリス公爵の去ったドアをとめどなく見つめ、私の胸に手を当てた。


(ドキドキ、ドキドキ)


私の心臓がはち切れそうになるほど速く鼓動していた。


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