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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第30-2話  セレナの誕生日パーティーの招待状

挿絵(By みてみん)


次の日の夜明け、私は何か慣れたパターンのように誰かが私の部屋のドアをたたく音を聞いて目が覚めた。


(トントン)


私は大きく背伸びした後、夢うつつ一歩で自分のベッドから降りてきた。

夜明けだからか、ぞくぞくして化粧台の椅子にかかっている薄いカーディガンを取り出して着て外に出てみた。


「アンナ夫人、シャーロット。この時間に何のご用でいらっしゃいましたか?」


「今日セレナ様のお誕生日パーティーなのでエレインさんを助けに来ました。さぁ!時間がないですね。エレインさん!一緒に行きましょう」


私はグレース皇子宮の女中であるアンナ夫人とメイドのシャーロットのもとへ連れて行かれたようにどこかへ向かった。

なんだか1ヵ月前の皇居音楽会の時と似たような感じがした。

グレース皇子宮の長い廊下を通って、皇子宮内にある高級浴場に到着した。

私はグレース皇子宮で過ごした時に何度か来たことのある場所だったけど、ここを利用するのは初めてだった。


「さあ、服を脱いで、お風呂に入ります。エレインさん」


「あ…はい」


私は何だか気恥ずかしくちょっとのっそり服を脱いだ。

いくら同じ女だとしても私をじっと眺めている彼女たちの視線がとても負担になった。

アンナ夫人とメイドのシャーロットは私の恥じた気持ちに気づき、にっこり笑って背を向けた。

私はやっと着ていたパジャマと下着をゆっくり脱いだ。

シャーロットの案内に従って、お湯で満たされた皇子宮の風呂に入った。

浴場は皇后宮より規模はやや小さかったけど、繊細な彫刻が非常に美しかった。

メイドのシャーロットが、香ばしいブーケの香りがする泡の入浴剤を持ってきて、お湯の中に入れてやさしくほぐした。


「心を安らかにしてくれる香りのする入浴剤です。リラックスした時間になることを祈ります」


「ありがとう。シャーロット」


「いいえ、どういたしまして」


私は本当に久しぶりの暖かい浴場でゆっくりとお風呂に入ることができた。

あまりにも長い間お風呂に入ったようで、席を立って石鹸の泡をお湯で何度も洗い流した。

そして、メイドのシャーロットがあらかじめ準備しておいたスリップと下着を着て白いガウンを着た後、風呂場を抜け出した。

髪の毛を数回タオルでたたいて乾かし、グレース皇子宮の中に用意されたドレスルームの中に入ることができた。

そこには、優しい笑みを浮かべているアンナ夫人とメイドのセラが私を待っていた。


「保母様!今日は私が最高に綺麗にしてあげますね!」


「そうです! エレインさん!この前の恩を今度こそきっと返します」


アンナ夫人とメイドのセラが明るく微笑んで私に言った.。

アンナ夫人はしばらく、私の姿を上から足の先まで注意深く見通した。

彼女の鋭い視線に、なんだか冷や汗が私の背筋を伝ってたらたら流れるような気がした。


「何か好きな色はありますか?エレインさん?」


「好きな色ですか?ピンクや薄黄色が好きです」


「スカートの長さはどのくらいがいいですか?」


「長すぎると不便なんで、私の靴で踏まないくらいがいいですね」


アンナ夫人とメイドのセラは、私に好きな色やスカートの長さなど、様々なスタイルを聞いてくれた。

しかし、油断は禁物だったのだろうか。数十着の美しいドレスと女性用の靴、そして光るアクセサリーを持ったグレース皇子宮のメイドたちが、ドレスルームの中に列をなして入ってきた。

私は次々と入ってくる数多くのドレスやアクセサリーを見てめまいがするようだった。

彼女たちは陽気な表情で、まるで着ぐるみを着せかえているかのように私にあれこれ着せてみた。


「あら!この服ピッタリだと思います!アンナ夫人、どうですか?」


「まあ!お似合いですね!!」


アンナ夫人とセラは大変満足そうな表情で私の姿をもう一度見渡した。

何十着ものドレスを着て脱いだので、私は疲れた表情で2人をじっと見つめた。

私はアンナ夫人とセラの積極的な勧めで、桜のような感じのドレスを着ることになった。


(コンコン、コンコン)


ドレスルームに簡単なおやつを持ってきたメイドのシャーロットが「わあっ」と嘆声をあげながら私を見ていた。


「本当にきれいです!!!エレイン保母様!」


彼女の大げさな言動に、あまりにも恥ずかしすぎて私の顔はまるで燃えるサツマイモのように赤くなった。


「動かないでくださいね。保母様、今度は私が綺麗にヘアースタイルを作ってあげます」


「はい」


シャーロットは熟練した腕前で私の髪を結い上げ、きらきら輝く小さな花模様のピンククリスタルをきれいに挿してくれた。

寂しい首に美しいピンクのクリスタルネックレスと可愛らしいイヤリングをつけてみると、いつの間にか飾りの先が見えた。


「わぁ!とてもお綺麗ですね!!エレイン保母様」


メイドのセラは興奮した表情で、しきりに私の姿を褒めた。


「ありがとう。あの、もうおしまいですか?」


「はい?何を言っているんですか。保母様?まだ終わっていませんよ」


私の望みとは裏腹に、装いはこれで終わりではなかった。

いよいよ本格的な化粧が始まったのだ。

私はこの時間が早く過ぎてほしいという気持ちになった。

早朝から始まった装いに疲れ果ててしまい、私は化粧を受けながらこくりこくりと居眠りをした。


「本当に美しいわ!ご保母様!」


メイドのシャロットの叫びに目が覚めた私は鏡に映った自分を見つめた。

前世で授賞式に招待された時より約10倍ほども美しい私が、鏡の中で見慣れない感じで映った。

くすんだ印象が明るくなったからかな?もう少し気をつければ、この世の私は別人になったような気がした。

とても不思議で、あちこち首を回しながら鏡に映った自分の姿を思う存分見物した。


「私の考えではセレナ様もとてもお綺麗ですが、保母様も負けていないと思います」


「そうだよ!私もそう思いますよ」


「エレインさん!私は何十年もセットしてきたんですけど、今日ほど気に入ったことはありませんでしたわ!」


「アンナ夫人、シャーロット、セラ…。皆さん、本当にありがとうございます」


その時、時間にぴったり合ったようにパウダールームで「コンコン」という音が聞こえた。


「エレイン?準備は終わった?」


他ならぬ幼い声のグレース皇子だった。


「はい!!全部終わりました」


私はゆらゆらのドレスのすそを両手でつまみ、ぎごちなく席を立った。

ドレスの見た目はとても美しいけど、実は非常に不便だった。

服もすごく重たくて、一歩一歩踏み出すのが怖かった。

幸い、さっきの靴で踏まなければいいなという私の言葉に、メイドのセラが靴に引っかからないようにドレスを直してくれて、歩くのは楽だった。

華やかな装飾が施されたドアを開けて外に出ると、カルロス皇太子とグレース皇子が素敵な燕尾服を着て私を待っていた。

2人はまるで童話から出てくる王子様のような姿だった。

グレース皇子は私を見て、席からぴょんと飛び上がって喜んだ。


「うわー!オーマイガー!カル兄さま、女性は飾るとこうやって変身するんですか?皇室音楽会の時とはまた違う感じがします!本当に完全に違う人ですよ?とても綺麗だよ。エレイン!!」


グレース皇子は目をきらきらさせながら、しきりに私の姿をほめた。

私はなぜか照れて両頬がほんのりと赤くなった。

カルロス皇太子の透明な緑眼が、私の頭からつま先まで見る視線が感じられた。

彼の澄んだ青緑色の瞳がまるで地震のように揺れた。

私は不思議な表情でカルロス皇太子をじっと見つめた。

カルロス皇太子は何でもないというように、意地悪な表情でグレース皇子に答えた。


「グレース、それは女性に失礼だよ…」


「でも今日、エレインが綺麗なのは事実ですよね?カル兄さま?」


「う、うん。き、綺麗だね…」


私は二人の言葉を聞いていると、あまりにもきまりが悪く、床を見詰めていた。

褒め言葉は聞きたかったけど、とても照れくさい気持ちだった。


「さあ!一緒に行きましょうか。エレインさん」


カルロス皇太子が明るく微笑みながら私に手を差し出した。

皇太子のエスコートを受けることは私の身分に合わないようでどうしていいか分からず、そっと頭を下げた。

カルロス皇太子はまるで大丈夫と言ってるように華やかな笑みを浮かべ、さらに近くに私に自分の手を差し出した。

私は渋い表情で優しいカルロス皇太子の手を握った。

私の手を握ったカルロス皇太子の指先がなんだか少し震えているようだったけど、ドレスに気を使っていたので深く考えられなかった。

グレース皇子が私の横を並んで歩きながら、細目を吊り上げてカルロス皇太子に話した。


「カル兄さま!!ずるいよ!」


私はカルロス皇太子のエスコートを受けながら、皇太子の専用馬車に乗り込んだ。

グレース皇子が私の隣にくっついて座り、カルロス皇太子は私たちの向かい側に座った。

グレース皇子は、何がそんなに不満なのか、それほど好きなカルロス皇太子を見ずに、私にべらべら面白い話を並べ立てた。

私は、そんなグレース皇子が可愛すぎて、思わず身分の高い彼の頭をなでた。

もしかしたら不快ではないだろうか? 瞬間心配になったけど、グレース皇子は気分を害さずにもっと私に近づいてきた。


「グレース!エレインさんのドレスがしわくちゃになるぞ!ちょっと離れて座って!」


「チェッ、はい。分かりました!」


互い実の兄弟のように親しい二人が、なぜか今日に限って少しごたごたしているようだった。

いつの間にかバルタン侯爵家に到着したのか、皇太子専用馬車が止まった。


「さあ、降りてください。エレインさん」


カルロス皇太子が先に馬車から降りて私に手を差し出した。

私が着たドレスのスカートがあまりにざわざわしていて、一人で馬車から降りることができなかったので、彼の手を握って馬車から降りた。

カルロス皇太子は優しく微笑みながら、自分の腕を伸ばして私の手を差し上げた。

私は面食らった顔でじっと彼を見つめた。

その姿をそばでじっと見ていたグレース皇子が、カルロス皇太子の腕にかかっていた私の手を引いて自分の腕にかけた。

そしてかなり堂々とした表情でカルロス皇太子に舌を出した。

カルロス皇太子は、グレース皇子に低いため息をつきながら、微かに微笑んだ。

私は可愛いグレース皇子のエスコートを受けながら、誕生日パーティーの主人公であるセレナが待っているバルタン侯爵家のパーティー場へ向かった。



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