第30-1話 セレナの誕生日パーティーの招待状
翌日、カルロス皇太子の言葉通りグレース皇子と私にもセレナの誕生日の招待状が届いた。
【エレインちゃんへ…、こんにちは。バルタン街のセレナです。皇暦1848年5月16日午後6時、私の誕生日パーティーにエレインさんを招待します。ぜひともご参席されて席を輝かせてください。お待ちしております。-バルタン街のセレナより-】
セレナの誕生パーティーの招待状にはすみれのような香りが漂っていた。
私は前世と現生を含んだ生涯を通じて、生まれて初めて誰かの誕生日パーティーに招待されて、何だか心もふわふわの綿菓子のような気分になった。
この世界は自分の手で書いた物語からすでに遠く離れているけど、原作者としてヒロインに直接招待された喜びは大変大きかった。
私は一日中仕事をしながらも気分がよくなり、思わず鼻歌を歌った。
皇子宮の書斎に入ってみると、グレース皇子が投げ捨てた本が床に散らばっていた。
ため息が出そうな状況だったけど、私は意に介さず本を持って本棚に整理した。
(カチャッ)
その時、書斎の中にかわいいグレース皇子が、クマのグミが入ってる箱を持って入ってきた。
グレース皇子は、床に散らばっている本を整理する私の姿を後ろからじっと眺めて口を開いた。
「エレイン!エレイン?」
「はい。グレース皇子様、おっしゃってください」
グレース皇子はクマのグミ一口を口に入れて、私の姿を頭からつま先までざっと見通した。
「エレインも明日、セレナのお姉さんの誕生パーティーに行くんでしょう?えっと…、まさかその格好で明日セレナのお姉さんの誕生日パーティーに行くんじゃないよね?」
私は突然、かなづちで頭を強打されたような気分になった。
本の整理をしかけてぼんやりと立って自分の姿をじっと眺めた。
今私が着ているワンピースはグレース皇子宮が提供してくれた貴族用のワンピースだった。
高級な婦人服だったけど、セレナの誕生日パーティーに着て出席するほどではなかった。
宙に舞う羽のようにふわふわ浮いていた気分が、一瞬にして地面に深く沈んだ。
グレース皇子の前でも表情管理が上手くいかず、私の顔はとても曇った。
わけもなく罪のないワンピースのスカートの裾だけを撫で付けた。
セレナの誕生パーティーに出席するにはドレス1着を合わせなければならないけど、ドレス1着の値段は一般家庭の1年分の生活費に匹敵するほどとんでもなかった。
ドレス1着に細かく刻み込まれた宝石代だけでも私の手に負える水準ではなかった。
どうやらグレース皇子に、私が準備したセレナの誕生日プレゼントとお祝いの手紙を渡してくれと言わねばならないと思った。
「そこは私も頭になかったですね。こんな格好だとセレナ様に失礼でしょうね…。どうやら私はセレナ様のお誕生パーティーに参加できなさそうです」
「チェッ、僕もそうだろうと思ったよ。心配しないで、エレイン!セレナのお姉さんの誕生日パーティーには参加できるから。ふふっ」
「はい…?」
「私だけを信じろよ!」
グレース皇子は意味深長な目つきで私を見ながらにっこりと微笑んだ。
わたしは訳が分からなくて、首をかしげながらグレース皇子を見つめた。




