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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第27-1話  ハエリス公爵の一日

挿絵(By みてみん)


(キイィ)


薄暗い地下監獄である男が跪いて切実な表情で、高慢に椅子に座った男を眺めていた。

ハエリス公爵は冷たく冷酷な表情で、目の前に座っているザランス商団主のテルマンをじっと眺めた。

ザランス商団主のテルマンは、これまでひどい拷問を受けたのか、彼の体は傷がない所一つなく血だらけでぼろぼろになっていた。

ハエリス公爵は高圧的な雰囲気で彼をじっと見つめ、ふと冷ややかな微笑みをした。


「ああ、君が俺に言いたいことがあると言っていたが?」


ザランス商団主のテルマンがしばらくためらった後、すぐ震える声でハエリス公爵に話しかけた。


「はい、ハエリス公爵閣下…私は上から言われた通りにしただけです。去年、大きな投資に失敗して商団の運営が難しくなり、つい、はれん煙草の持ち込みに手を出してしまいました。それは自分の間違いです!けれども自分はただの運び屋に過ぎなかったのです。どうか助けてください!どうかお願いします。公爵閣下」


テルマンはハエリス公爵を切実に見つめた。

ハエリス公爵はもっと話してみろという目でテルマンをじっと睨みながら見つめた。

テルマンは固唾を飲んで震えた声で自分の言葉を続けた。


「自分は運び屋なので、その上に誰がいるのか本当に分かりません。ハエリス公爵閣下も多分、調査されているのでご存知ではないでしょうか…?自分は矮小な存在です。大金でもちょっと触ってみようかと思って飛びかかった下っぱに過ぎません」


ハエリス公爵は彼の言葉に何の返事もなく、ただ重苦しい沈黙で返事の代わりにした。

テルマンは不安そうに左右に瞳を転がし、何か大きな決心をしたようにハエリス公爵を見上げてやっとの思いで話し出した。


「あの…ハエリス公爵閣下…そのルースセンの花を育てたゲスティンという花卉業者がいる所を自分が知っています。もし自分が公爵閣下に申し上げればここから出られますか?」


テルマンの言葉でやっとハエリス公爵の口元が魅惑的に少し上がった。

ハエリス公爵は粘り強い追跡の末、ついにルースセンの花事件の新たな糸口をつかむことができた。

ハエリス公爵はしばらく悩んだ末、テルマンを見てにっこり嘲笑を流しながら口を開いた。


「君が話してくれたとしても、君が違法にハレンを流通した罪は消えたわけではない。だが、君の命は救えるな…。あの花卉業者のゲスティンがどこにいるのかを吐けばな」


ハエリス公爵の言葉にテルマンはやや真剣に悩んでいた。

しかし、いくら頭を働かせても監獄に閉じ込められて拷問を受けて死ぬよりは、むしろ言ってから生きていく方がマシに思えた。

テルマンが、ハエリス公爵を恐怖の目で見つめながら震える声で口を開いた。


「リベア王国の南にメトリン侯爵家の領地があります。その領地にはペテス商団という所がありますので、そちらを一度探してみて下さい。実は自分もゲスティンという花卉業者が隠れている場所は分からないんです。偶然につてを頼ってその人の消息を知るようになりました。ですから、そこを探してみてください。彼が隠れている場所の手がかりを見つけられると思います」


「メトリン侯爵家か…そうだな、有難い」


ハエリス公爵は、これ以上聞く言葉がないように席を立ち、薄暗い地下監獄の外に出た。


(キイッ)


ハエリス公爵が監獄から出ると、鋼鉄で作られた鉄格子のドアが堅く閉まった。

ハエリス公爵は、黄金の鷲騎士団の建物下の、地下監獄の階段を上って監獄の外に抜け出した。

建物の外に出ると、眩しい正午の太陽の光が彼の網膜にさんさんと当たった。

ハエリス公爵はしかめていた目をまっすぐに開けて、建物の周りを何重にも護衛していた黒い鎧の騎士団を眺めた。

彼らはハエリス公爵が監獄の中にいる間、ずっと別館で待機していた暗室の騎士団だった。

暗室の騎士団長のゲスは前に出てハエリス公爵に節度ある軍礼で挨拶をした。

ハエリス公爵は軽く頷きながら軍礼を受けた後、暗室騎士団長のゲスに話しかけた。


「リベア王宮南側メトリン侯爵嶺にあるペテス商団を一度探してみよう。向こうにゲスティンがいるそうだ」


「はい、主人。承知しました。ご命令に従います」


ハエリス公爵の命を受け、暗室騎士団長のゲスが軍礼を見せ、暗室騎士団とともにその場から素早く姿を消した。

ハエリス公爵は黄金の鷲騎士団の建物の正門を抜け出し、公爵家専用馬車に乗って彼の邸宅に出発した。


(ダダッ)


彼は馬車の中でも多くの業務を処理し、終始無我夢中だった。

ふと習慣のように、彼の内ポケットのジャケットからペパーミントキャンディー一粒を取り出して口にくわえた。

ペパーミントキャンディーの和やかな味が、彼の疲れを取ってくれるようだった。

グレース皇子の保母になったエレインが直接作って公爵家に送ったペパーミントキャンディーだった。

ハエリス公爵はペパーミントキャンディーをゆっくり溶かしながら素早く業務処理をし、書類の束を彼の隣の座席に置いた。


「はぁ…」


うんうんと泣く音が自然に彼の赤い唇からうなり声がもれた。

ハエリス公爵は疲れすぎて、硬くなった両目をしばらく閉じた。

少し休む時間ができると、ハエリス公爵の頭の中から、元公爵家のメイドだったエレインの顔がしばらく浮かんでは消えた。

こうやって一瞬休む暇ができる度にエレインの姿が彼の心の中で舞い上がってぷかぷかと浮かび上がった。

ハエリス公爵はエレインにもう一度会って色々な話をしたいと思った。

口下手な彼だったが、彼女の前に立つと自分も思いもよらなかった多くの言葉がぽろぽろ溢れ出るようだった。

時々自分で言い出したのに、後で考えてみると自分の本音を他の者に話したことがあっただろうか?という気がした。

エレインの姿を思い浮かべてみると、皇室音楽会で恍惚な姿でピアノを演奏していた彼女の姿が彼の頭の中に浮かんだ。

急な思い付きだが、ハエリス公爵はこれから皇室音楽会を主催できないように、完全に無くさなければならないと思った。

ジェイラル皇后がこれからエレインを、その皇室音楽会のピアニストとしてよく呼ぶだろうと思ったからだった。

そうなれば、エレインはこの前の公演のように大勢の人の前でピアノを弾き、彼女の事を多くの男はよだれを垂らしながら見るようになるだろう。

もし彼らのうちの誰かがエレインに愛を告げて、彼女がその男性の告白を受け入れて他の男性の女性になることになったら?そんな考えだけでも彼の心臓がギュッと締め付けられるような気がした。

ハエリス公爵は激しく首を左右に振った。

どうせ二度と皇室で音楽会を開く日は来ないから、このような無駄なことは考えない方が良いとハエリス公爵は思った。

彼の口の中ではらりと蕩けるペパーミントキャンディーが、急にすごく苦く感じた。

ハエリス公爵は、どのくらい心の中にエレインが入ってきたのかまだよく分からなかった。

彼が生きていてこのような感情を感じたのは初めてだったからだ。

もし、エレインが自分の隣にいることになったら、という過程を頭の中でじっくり思い浮かべた。

彼女がいかに危険な状況になるか色んな考えが、彼の頭の中に次から次へと飛び込んできた。

ハエリス公爵は、グレース皇子と自分の命を狙おうとする未知の勢力を10年間追っていた。

しかし見つけそうになると、しっぽを切って綺麗に跡を消し、まんまと消え去った。

最初はジェイラル皇后がこのようなことをやらかしてると考えたが、10年間追いかけたら単純にジェイラル皇后だけが関わってる問題ではなかった。

黒幕でいくつかの事件を背後で操りながら正体を現わさなかったもう一つの勢力が確かに存在した。

その黒幕勢力の手法が悪辣で残忍であるため、ハエリス公爵は彼らに数多くの忠実な騎士と彼に従った大切な人々を失った。

このような状況で、エレインに向かう自分の気持ちを敢えて暴き出さなければならないのか、正直確信が持てなかった。


「はぁ、本当にもどかしいな…」


ハエリス公爵は自分のシャツのボタンをいくつか外して広げた。

もどかしさを感じていた彼の気持ちが少し楽になる気がした。


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