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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
39/100

第24-2話  皇室音楽会

挿絵(By みてみん)


(ククク)


(クルクル)


早朝から、夜も眠らない名も知らぬ鳥たちが、騒がしく鳴いている。

私は昨夜から一晩中寝つけなくて、まんじりともせずに夜を明かした。

2日という時間は本当にあっという間に流れ、ついに今日、皇室音楽会が開かれる日だった。

青白い夜明けのほんのりとした月光が、ベッドで寝返りをうっている私をじっと照らしていた。


(コンコン、コンコン)


早い時間だったのに誰かが部屋のドアを叩く音がして、私はボサッとした姿でベッドから立ってそっとドアを開けた。

部屋の戸口には見知らぬ女性3人が並んでいた。


「あのう…、どちら様ですか?」


「はい、皇后宮から出てきたのです。エレインさんで合ってますよね?」


「あ、はい」


「さあ、時間がありませんね。一緒に来てもらいます」


「え?」


私は面食らった表情で彼女たちに連れられて皇后宮に向かった。

幸い、目が覚めたばかりのもじゃもじゃした身なりでジェイラル皇后に会うわけではなかった。

彼女たちが私を連れて行った所は、ジェイラル皇后宮の中にある広い浴場だった。


「ここに服を脱いで、お風呂にお入りください」


「あ…はい」


同じ女でも3人が私をじっと見ているのはとてもきまりが悪かった。

私がためらうと、やっと3人が後ろを向いて気楽に服を脱げるようにしてくれた。

皇后宮への出発のため、急いで羽織った上着を脱ぎ、その上にかけられたパジャマを脱いだ。

そしてスリップと下着まで脱いだあと、私は湯気がもくもくする風呂の中に足を浸した。

ジェイラル皇后宮の浴場は前世の銭湯のようになっていたけど、皇后宮の浴場だからか、美しい彫刻と宝石の飾りが浴場を華やかに見せた。

私はこの世界に憑依して初めて湯のある浴槽につかることができた。

暖かいお湯に浸かっていると、自然と緊張がはらりとほぐれてきたようだった。


「少し失礼いたします」


皇后宮メイドが風呂に入り、泡風呂剤とバラの香油をまんべんなく振りかけると、たちまち豊かな泡がはじけた。

私は一晩中ずっと眠れなかったので、風呂でうとうとしてしまった。


「さあ、そろそろ身支度をする時間です」


私は皇后宮メイドの声にびっくりして、はっと眠りから覚めた。

暖かいお湯に体を浸して仮眠したところ、緊張が解けて頭がとてもすっきりした。

私は用意されたお湯で体をきれいに洗い、皇后宮メイドが渡した下着とスリップを着た。

皇后宮のメイドがふわふわしたタオルで私の頭をたたいて乾かし、白いガウンを私に着せてくれた。


「ああ…、ありがとうございます」


「私について来てください。保母様」


「はい」


私は白いガウンをかけて、メイドさんの案内に従って、大規模な皇后宮のドレスルームへ行くことになった。

そこには、幼いく見えるジェイラル皇后宮の女中「ソフィア」が私を待っていた。


「こちらへどうぞ。エレインさん、私はジェイラル皇后宮の女中長、ソフィアと申します。まだ未婚ですから夫人とは呼ばないでください」


「ああ、はい。ソフィア様」


「さあ、ではガウンを脱いでください」


私は狼狽したが、彼女の言葉に従って慎重にガウンを脱いだ。

スリップ姿の私をしばらく眺めていた彼女は、数人のメイドに色々指示した。

しばらくするとメイドたちが、100着を超えるような派手なドレスをひいひいしながら持ってきた。

宝石や靴、アクセサリーが入っている箱をたくさん持ってきたけど、その華やかさに目がくらむほどだった。

ソフィアは私に人形の服を着せるようにいろんな演奏会のドレスを着せてみた。

しかし私の好みに全く合わないとても派手なドレスたちだった。

複数の服の中で最も煽情的な印象を与える赤いドレスが抜擢された。

赤いドレスは恥ずかしいほど肩がすっきりオープンになっていたけど、どうもこのような型破りなスタイルをジェイラル皇后が喜んでいるようだった。

私はすぐに侍女たちに囲まれて化粧とアップスタイルにし、高価そうな宝石のついたピンを頭に何個か挿した。

ドレスルームに備えられた全身鏡を見たら、何だか私じゃない外の人が立っているようだった。


⦅これはちょっといやらしいすぎるよな…⦆


赤い絹の生地が私の体にぴたっとくっつき、私の体の曲線が全て明らかになっていた。

このような服は、前世でも一度も着たことのないドレスだった。

あまりにも破格的で今でも顔を上げることができないほど恥ずかしかった。

それでも幸いなのが、化粧はしているようでいないような薄さで、派手に見えないということだった。

セレナの治療のおかげか、軟膏の効能が良いためか、腫れていた頬も薄い化粧をしてよく見えなかった。

ジェイラル皇后が特別に使用を認めたという20カラットのダイヤモンドネックレスを、自分の首にかけることで、全ての御粧しを終わらせた。

食事もろくに取れず、いつのまにか日が西に沈みかけていた。


「とても美しいですね。エレインさん!今日の音楽会の主人公はおそらくあなたでしょうね!」


ジェイラル皇后宮の女中であるソフィアは、感嘆の目で私を見つめた。

この全ての御粧しがソフィアの作品だったので、私はただぎくしゃくとしてる笑顔を見せるだけだった。


「それでは、スタジオ宮に行きましょうか?」


「はい」


私は震えている気持ちを押し隠して、彼女についてスタジオ宮の舞台裏に到着した。

いつの間にか日が暮れて空が真っ暗になった。

スタジオ宮殿には、素敵なシャンデリアの上に数多くのろうそくの火がうねって灯っていた。

舞台壇上で司会をする男が何か言っているようだった。

舞台裏のカーテンで待機していた私は緊張のあまり、司会者の声が耳元でよく聞こえなかった。


「エレインさん、そろそろ出ますよ!」


「はい!」


私は冷や汗をかく手を赤いドレスでぬぐい、緊張した表情で明るい照明のまぶしいステージに出た。

スタジオ宮殿の中央舞台に立つと、大勢の拍手が轟渡るように聞こえてきた。


✯¸.•´*¨`*•✿ ✿•*`¨*`•.¸✯


おしゃれな黒い燕尾服を着たハエリス公爵が馬車に乗って皇居に到着した。

今日は、ジェイラル皇后の主導で開かれる皇室音楽会がある日だった。

忙しい中わざわざ出席しなくてもいい音楽会だったが、彼は来るしかなかった。

今日の皇室音楽会の初舞台にエレインが上がるという知らせを聞いたからだった。

ハエリス公爵は危なげな表情で、しばらくスタジオ宮殿の建物をじっと見つめた。

スタジオ宮の中には数多くの貴族が期待の表情で音楽会が早く始まるのを待っていた。

彼は舞台に近い席で、自分に明るく笑いながら手を振るセレナとグレース皇子を見ることができた。

彼らの隣で、カルロス皇太子が妙な笑みを浮かべながらハエリス公爵を眺めていた。

ハエリス公爵は少し早足で、彼らのいる位置に歩いていった。

今日何が起こるのか、ハエリス公爵は全く見当がつかなかった。




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