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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第23話  ヴィラン、ジェイラル皇后の気に入る!

挿絵(By みてみん)


私は今、この世界のヴィランであるジェイラル皇后の前に跪いている。

人々の声で騒々しかったスタジオ宮殿は、アリの足音一つ聞こえないほど静まり返っていた。

だから、なぜ事が突然このような運びになったのか。私は今までの平穏な日々を頭の中で想像してみた。

数日前の休日にハエリス公爵とギクシャクしていた関係を解き、安らかな気持ちで皇居生活を送ることができた。

暇さえあれば毒草の勉強もし、解毒のグミも作りながら、グレース皇子の面倒を見ていた。

そして今朝。 三日後に開かれる音楽会の準備で人手が足りないと皇子宮に連絡が入り、事件は始まった。

朝早くからアンナ夫人が暗い顔色で、シャーロットに何か話を聞いたようだった。

私は心配そうな顔でアンナ夫人を見つめながら訪ねた。


「夫人、何かありましたか?」


「ああ…、三日後に皇居で皇室音楽会が開かれるそうです…」


「…ええ」


「ヒュ…、働くメイドたちは多いんですけど、率いていく人員が足りないと下女長たちが緊急招集されたんですけど…。私は年をとったせいで体が以前のようには動かなくて」


確かに50代後半の彼女にとって音楽会を準備することは重荷になりそうだった。

私はじっくり考え、彼女に遠慮がちに聞いた。


「保母ではその仕事を手伝えないでしょうか?私はメイド出身なので他の人は嫌がるかもしれませんが、それでも現在はグレース皇子様の保母ではありますから」


アンナ夫人がとても申し訳なさそうな、慈しみ深そうに微笑んで私に答えた。


「エレインさんなら、十分に溢れるほど資格がありますよ。グレース皇子様の叔母なんですもの」


私はこれまで、グレース皇子宮で働きながらアンナ夫人に感謝することが多かった。

出身の良くない私を彼女が色々面倒を見てくれて、グレース皇子宮での生活に大きな困難がなく生活できていたからだった。


「それでは私が代わりに行きます!アンナ夫人の代わりに私が働かせてください!」


私が煌めく眼差しで言うと、彼女は私にとても感謝して口を開いた。


「どうもありがとうございます。エレインさん」


「どういたしまして。なんてこともないですよ」


そして、私は年老いたアンナ夫人に代わって皇室音楽会の準備真っ最中のステジオ宮に足を運んだ。

ステジオ宮に着いたら、大勢の人が忙しなく働いていた。

老練な皇室の侍従たちと侍女たちがメイドを陣頭指揮しながらパーティーを準備していたのだが、私は誰に行って挨拶をしようかと見回していた。


「あのう、お聞きしたいことがあるんですが…」


私はそばを通り過ぎていくメイド一人をつかまえて尋ねた。


「はい、どうぞ」


「皇居侍女長はどこにいらっしゃるのでしょうか?」


「ああ、チェリス侍女長はあちらにいらっしゃいますよ」


「ありがとうございます」


私は彼女に教えてもらったとおりにスタジオ宮殿の中央壇上を見上げた。

年配のように見えるある中年の女性が、数多くの各宮殿のメイドたちに、あれこれ指示を出している姿が見えた。


「あの方がチェリス侍女長なんだ…」


私は熱心な人たちを避けて彼女に近づいた。


「おはようございます、チェリス夫人。私はグレース皇子様の保母のエレインと申します。女中長であるアンナ夫人代わって私が来るようになりました」


「ああ、そうですか。それではエレインさんはあちらに集まっている侍女たちとメイドたちと貴賓席に椅子を広げる監督をしてください。後で確認してみます」


「はい、わかりました。夫人」


私は彼女に丁寧に挨拶をした後、壇上から降りて彼女の教えてくれた方向に足を運んだ。

スタジオ宮殿の隅で、女性たちが集まって楽しくおしゃべりをしていた。

私は彼女たちの前に立ち、慎重にあいさつをした。


「おはようございます。お会いできて嬉しいです!」


「あのう…、どちら様でしょうか?」


若々しい緑色の髪の侍女が、私を気になる表情で見つめながら言った。


「はい、私はグレース皇子様の保母エレインと申します。今日、チェリス侍女長がここにいらっしゃる皆様と仕事をするように指示してくださったので、参りました」


「プッ。何? これは何と荒唐無稽なことだろうね?」


「ふふっ、あきれたわ」


突然、侍女の群れからあきれたような舌打ちの声と不満の声があちこちから聞こえてきた。

私は内心、-+当惑の念を隠してゆっくりと彼女たちを見回した。

彼女たちは突然私の周囲をぐるりと取り囲んでから、それぞれ私を殺そうとするかのように睨んだ。

私はまるで人間の壁に閉じ込められたようで、彼女たちにつかまって身動きできなかった。

最初私に「誰ですか」と聞いた緑色の髪の毛の侍女が、あざ笑うように微笑んで私の前に立った。

彼女はあきれた表情で私を睨みつけ、いきなり私の左頬を強く叩いた。


(パチン!)


彼女の力強い力に私は瞬間的に頬を打たれてバランスを崩し、その場で倒れるしかなかった。

ひりひりする頬もすごく痛かったけど、あまりにも突然のことなのであっけに取られた。

壁のように取り囲む女性たちは、それぞれ嘲笑と軽蔑の眼差しで私を睨みつけていた。

私の頬を叩いた侍女が、高圧的な面持ちで立ってわたしを見下ろしながら言った。


「お前なんかが私たちの頭の上にいるつもり?」


私は苦労して席を立って、その侍女を詰問した。


「一体、これはどういう仕打ちでしょうか?」


「よくも卑しいメイド出身のくせに、貴族になりすまそうとしているの?あんた何様のつもりで私たちにああしろこうしろと指示しようとするんだ!」


千差万別に顔をゆがめる少女は、とても悔しがって私に息巻いた。

私を取り巻くほかの少女たちも、みんな何が悔しいのか腰に手をあてて息巻いていた。

私は何か誤解があるのではないかと真剣な表情で彼女たちを見つめながら言った。


「私は貴族になりすましたことはありません。どうも誤解があるようですね」


「ふん!何?誤解?あなたなんかがカルロス皇太子を背中におぶっていると強きになってるわけ?」


今度はまた別の侍女が現れて腹を立てながら私の前に立った。

私はまたこれは何かと思い、きょとんとした。

彼女は私を鋭く睨みつけて、私の体をあちこち指を突きながら言った。


「卑しいメイド出身者なんかがグレース皇子様の保母になるなんて!あんたなんかがカルロス皇太子をどうやって取り込んだのよ!!」


「そうよ。あんたのようなキツネたちは、一度殴られてみないと気がつかないのよ。皆! 連れて行こう」


「分かったわ!!」


両側で私の腕をしっかりとつかんだ彼女たちは当惑している私をステジオ宮の外に連れ出そうとした。


「放してください!これは何の仕業ですか」


私は彼女たちにこのまま攫われるわけにはいけなくて、激しく抵抗したけど、その時この世界のヴィラン!皇后ジェイラルがこの場面を見たのだった。

この状況が気になるのか、ジェイラル皇后が頭を振ると、ある侍女が近づいて耳打ちで話を伝えた。

侍女に何の話を聞いたのか、ジェイラル皇后が目をむきながら毒々しい顔で私に近づいてきた。

彼女は頬を殴られて膨れ上がった私の顔をゆっくりと見つめながら涼しい声で口を開いた。


「君がうちのカルロスが宮殿に入れたグレース皇子の保母なのか?」


その瞬間、私は何か非常に事がこじれた気分になった。

そのため急いで礼儀を省き、ジェイラル皇后の前にひざまずいた。


「今すぐ!早く答えられないの?」


ジェイラル皇后のおそろしい催促に、私はおびえる声で答えた。


「はい。皇后陛下…」


(カチカチ、カチカチ)


ジェイラル皇后の歯ぎしりの不気味な音が薄気味悪くステジオ宮に響き渡った。

音楽会の準備で慌ただしいスタジオ宮は、ある瞬間からまるで人がいないように静かになった。

やはり、ジェイラル皇后は私が書いた小説の描写のように、悪女の典型的な人物のように見えた。

私はこれから何が起こるか分らず、体中が震えた。


(キイッ)


その時、ちょうどステジオ宮の門が開き、救世主のようにカルロス皇太子とセレナがステジオ宮に入った。

カルロス皇太子とセレナは気になる表情で我々の群れに近づいて調べた。


「お母様…」


「皇国の月皇后陛下にお目にかかります。バルタン家のセレナです」


「おぉ!カルロス!私の愛する息子よ、ようこそ!皇居には本当に久しぶりだね!セレナ!」


さっきまで険悪に私をせきたてたジェイラル皇后が慈しみ深く笑い、自分の息子を迎えた。

そして、カルロス皇太子の傍に並んで立っているセレナをとても満足げな笑みを浮かべながら眺めた。

まるで自分の息子にぴったりの嫁を見るような目つきだった。

カルロス皇太子は床にひざまずいている私を見て、大変驚いた表情で口を開いた。


「ところでこれはどういうことですか? お母様?」


カルロス皇太子は、片方の頬が腫れた私を眺めながら、周辺を見回した。


「大したことはないのよ。卑しいメイド出身がよくもグレース皇子の保母になったと言っていたよ。貴族のお嬢さんたちも侍女では来られないこの皇居にね。それでちょっと調べていたわ」


「あっ、お母様、実はこれには事情が…」


その時、私は席を立ってカルロス皇太子の言葉をさえぎった。

グレース皇子の毒を私が解毒したということをジェイラル皇后が知ったら、これからもっと大変になるかも知れないからだった。

その短い時間で私は数千の考えを思いついた。

その時、稲妻のように思い浮かぶ自分の小説上の設定が思い浮かんだ。

私の小説の設定上、ジェイラル皇后は芸術を大変好む。

その中で音楽はほとんど狂的なレベルで!

私はぶるぶる震える声で私を冷ややかに眺めるジェイラル皇后に礼を述べて言った。


「皇国の月皇后陛下にお目にかかります。私はエレインと申します。 ご存知のように私はメイド出身です。しかし、ここにいらっしゃるカルロス皇太子殿下が私のピアノ演奏の実力を聞いて、グレース皇太子に教える保母にしました。別に理由はございません」


私が思うに、ジェイラル皇后と私を取り囲む他の侍女たちは、ひょっとして皇太子のカルロスが私に変な気持ちを抱いているのではないかと警戒している様子だった。

私の言葉を聞いたジェイラル皇后の毒々しい顔に明るい笑顔が浮かんだ。


「おほ…そうなの?そんなにピアノ演奏が上手なのか??それでは演奏を一度聞いてみることができるだろうか?」


ジェイラル皇后が目くばせすると、どこから手に入れてきたのか、和やかな椅子を侍女たちが持ってきた。

ジェイラル皇后は侍女に仕えられて優雅に椅子に座った。

私は皇后を祭る2人の侍女に、両腕がほとんど引っ張られたように、舞台前のピアノ鍵盤の前に座らせた。

震え上がる緊張で手は冷や汗でじっとりしていた。

前世で私は、ジェイラル皇后の毒毒しさを強調するために、初めの文に音楽家たちの処刑をテーマに書いたことがあったからだ。

音楽を狂的に愛するジェイラル皇后は、自分の耳を癒してくれる音楽家には数多くの賞を与えるが、自分の耳を乱す彼らは、指や足の指を切ったり、首を切るという類の残忍な内容だった。

私はとても緊張してスカートの裾で私の手を何度も拭いた。

舞台の下では、カルロス皇太子とセレナが大変興味深い目つきで私を眺めていた。

前世の子役タレント時代に両親が無理矢理させたことの一つがまさにピアノだった。

私はしばらく息を整えて、白と黒の鍵盤を眺めた。


(タララララン)


私は最初のキーをたたきつけたのを皮切りに、ベートーベンの月光ソナタを始めた。

そしてシューベルトのマスまで、 5曲くらい演奏したかな?それ以上、次の演奏曲が思い出せなくて、鍵盤を叩いていた私の手を止めた。

あまりにも久しぶりにピアノを弾いたので、ところどころ間違えた部分があって、正直、ジェイラル皇后の気に入ったのだろうか、自信がなかった。

しかし幸いにも私の演奏が終わると、ステージの下からジェイラル皇后の熱狂的な拍手が起こった。


(パチパチ、パチパチ)


スタジオ宮の大ぜいの人 も皆感嘆の目で私を眺めていた。

カルロス皇太子とセレナも大変驚いた表情で口が閉じられなかった。

私は、震えてる私の両足を抑え舞台の下に降り、ジェイラル皇后に礼を尽くした。


「素晴らしい!素晴らしすぎる!この音楽は私が生まれて初めて聞く演奏だった!美しいピアノの旋律が私の純潔な心に響いているわ!」


「ありがとうございます、皇后陛下」


「よしよし!この程度の実力があるからカルロスが宮殿に入れたんだろう!うちの息子がメイドのような下品なものに目を向けるはずがない!ハハ!あなたの名前は何と?」


「はい、エレインといいます。皇后陛下」


「3日後に開かれる音楽会の初舞台を君が演奏することにしよう!君は卑しいメイド達とは違って少し特別で期待しているわ。ふふっ、楽しみにしてるわ。さあ、もう帰るよ」


ジェイラル皇后は私の答えも聞かず、優雅な身振りで侍女に仕えられながらステジオ宮を抜け出した。

私は緊張が解け、急激な疲労感が襲ってくるようだった。



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