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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第14-2話  メイドエレインの中毒(2)

挿絵(By みてみん)


(トントン、トントン)


ハエリス公爵の執務室のドアが開き、明るい表情のベル執事が門の中に入ってきた。


「公爵閣下、エレインが今起きたそうです。本当によかったです!」


ベル執事は大変嬉しそうな顔をしていた。

書類をめくりながら仕事に集中していたハエリス公爵の手がしばらく止まった。


「そう?良かったな」


まるで何事もなかったかのように、ハエリス公爵はまた仕事に集中し始めた。

しばらく彼のそばでもじもじしていたベル執事が慎重な表情でハエリス公爵を眺めた。


「あの…公爵閣下、ここまでする必要がありますか?グレース皇子様もお救いなさって、伝染病が広がっていた地域住民も救ったじゃないですか…?そしてルースセンの花はエレインの手柄がとても大きいです」


ハエリス公爵は書類にサインをし、事務的な口調でベル執事に告げた。


「俺は自分がコントロールできない状況が嫌いだ。特に、いい意図だったとは言え、私に相談なくそのようなものを食べさせたメイドは、我が公爵家には必要ない。それは俺に毒を与えたのと同じことだ」


「皇居医院国の首席長老のベロガ医院が成分を分析した結果、その解毒剤の場合耐性は出来ずらく、毒はきちんと解毒するとても優れた薬でした。ベロガ医院がその薬を調合した人が誰か知りたくてどれだけ厄介にしたか分からないくらいです。まあ、状況がこうなって残念ですが、それでも人材は手元に置いて使ったらどうでしょうか?公爵閣下?」


「…必要ない。メイドであるエレインのことは俺がこの前言った通りに処理するように…」


「はい、かしこまりました。公爵閣下」


ベルの執事は不憫な表情で執務室から出て行った。

ハエリス公爵は再び働き始めた。

しかし、仕事がなかなか手につかず、数多くの書類の中に隠しておいた「メイド勤務日誌」を取り出してみた。

ここ10年間の使用者の勤怠や特異事項を記した書類であるが、その中にエレインの記録もあった。


【皇暦1841年3月17日早退事由:体調不良/3日後に復帰】

【皇暦1841年5月1日欠勤事由:風邪/2日後復帰】

【皇暦1842年6月15日早退事由:腹痛/5日後復帰】

【皇暦 1843年1月3日欠勤事由:熱風邪/2日後復帰】


12歳からの8年間で何と97回も欠勤と早退が繰り返されていた。

ハエリス公爵はなぜか息苦しくなり、席から立ち上がって窓際に歩いていった。

彼は窓際に立って乾いたような彼の唇にしばらく触った。

その瞬間、彼は胸がとても息苦しくなって執務室の中の窓をバッと開けた。


(ガタン)


何故か口の中が渇くようだったので、習慣的に彼の内ポケットからペパーミントキャンディーを取り出して口の中に入れた。

スースーするペパーミントの香りが精神を呼び覚ましてくれるようだった。

深く考えた末、自分が食べているこのペパーミントキャンディーは、メイドのエレインが自分の体で毒の実験をして作った解毒剤だという合理的な結論を出すことができた。

一体何のために彼女の体に毒の実験をしたのだろうか?そしてなぜ彼女は執務室の机の上にこのペパーミントキャンディーを置いたのだろうか?

数々の思いが複雑に彼の頭をかすめた。

とにかく誰かが見えない手で自分を守ってくれていたことに、非常に不慣れな感覚を覚えた。

冷たい彼の心臓をまるで猫じゃらしでこそこそくすぐるような気持ちになった。

しかし、一方では彼女の思いを正直少し負担に感じた。

ハエリス公爵は、エレインの体内にグレース皇子のように潜毒が残っているという結論を下すことができた。

おそらくこのペパーミントキャンディーの解毒剤を作るために毒の実験をして、潜毒がたまった体質になったようだった。

何故かメイドであるエレインの命を、ハエリス公爵が蝕んだような気がした。

いっそのこと、このペパーミントキャンディーの解毒剤を提供する際に金銭的な要求があったなら頭を悩ます必要はなかっただろうに、彼女は今まで何も要求してこなかった。

ハエリス公爵はまるで消化できないかのようにイライラする気分になった。

まず彼女の体調が回復したら、エレインを追い出さなければという気持ちになった。

なんとなく彼女とずっと会ってたら、ハエリス公爵自らが制御できない獣のような気持ちで舞い上がってきそうだった。

ハエリス公爵のそばには、彼が見ても世の中にこんな美しい女がいるだろうか?と思えるような友達のセレナもいた。

しかし、彼女にこんな獣のような感情になったことは一度もなかった。

数日の間、同じ時間にエレインに解毒剤を飲ませながら、彼は自分の獣のような気持ちと戦っては勝たなければならなかった。

昨日は解毒剤を飲ませながら、彼女が息苦しそうだったので、彼女の服のボタンを外してあげた。

まだ正気に戻ったわけではないが、解毒剤のおかげか、彼女の顔と体には赤い斑点がほとんど消えた状態だった。

ボタンを外してみたら、エレインの真っ白な首筋が丸見えになった。

その真っ白な首筋を見た瞬間、彼は彼女の服のボタンを取って、彼女の裸を見たい気持ちになった。

何となく彼女はとても温かくてもちっりとしてやわらかそうだった。

鹿のような細いエレインの首筋を噛み、彼の跡を濃く残したいという欲望が湧き上がった。

そんな気持ちをやっと落ち着かせたものの、彼はこんな不思議な気持ちをかき立てるエレインと同じ邸宅には住めないという気がした。

そして、病気で寝ている患者にこんな獣みたいな気持になる自分を許す事ができなかった。

エレインは薬剤師としての才能があるようなので、体を落ち着かせてから関連職業を紹介するか、それとも彼女の適性に合う学びの機会を与えるかしようと思った。

エレインがハエリス公爵家を去ると、取り返しのつかない複雑な気持ちが消え去りそうになった。



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