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その公爵様とメイドの事情  作者: ロマンスメーカー
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第7-1話  ベイリオの皇室救恤所

挿絵(By みてみん)


ハエリス公爵の執務室に入ると同時に、私を見つめている4人の視線が感じられた。

執務室の中にはハエリス公爵だけでなくセレナ、そしてグレース皇子にベル執事までいた。

4人が私だけを穴が開くほど眺めていると、私の背筋に冷や汗がたらたら流れるようだった。

私は怪訝な表情でハエリス公爵に言葉を渡した。


「ハエリス公爵閣下、私をお呼びと伺いました」


「エレインちゃん!凄く会いたかったですよ!!」


美しいセレナが明るい声で私に挨拶を交わした。

彼女は私の体をあちこち隈なく見てから安心した表情で口を開けた。


「エレインちゃん、今までお元気でしたか?あの時あんな風に別れて気持ちが落ち着かなかったですよ!!体の調子はどうですか?舞踏会の時大変なことをされそうだったって聞きましたよ」


「いや、幸いなことに大変な事件は起きなかったですよ…、心配してくださってありがとうございます」


「さあ、早くこっちに来てちょっと座ってください!」


セレナが私に明るい微笑みを見せながら彼女の隣の空き席を指さした。

私は手を振りながら彼女に大丈夫だと首を振った。


「それでもここに来て座ってください。ハリ!エレインちゃん、ここに座ってもいいよね?うん?」


セレナは断ったのにも諦めず私の手を引き、私を応接間のソファーの席に座らせようとしていた。

ハエリス公爵が低いため息をつきながら首を振って私に座ることを勧めた。

私は仕方なしに中腰でソファーの椅子に座って疑わしそうな表情で三人を交互に眺めた。


「あの…、ハエリス公爵閣下。私に何か別にやらせることがあるのですか?」


私の向こう側で甘いレモン茶を啜っていたグレース皇子がハエリス公爵にそっと合図した。

私はグレース皇子をこんなに近くで見ることになるなんて信じられなかった。

黒い髪に大きな両目、ぽっちゃりとした頬の肉がまだ全部取れないグレース皇子は、ハエリス公爵のミニバージョンのようだった。

グレース皇子が可愛すぎて私はとても彼に目が離れなかった。

その時、ハエリス公爵が少し困った表情で私を見ているような気がした。


(タッ)


ベル執事はテーブルの上にミルクティーが入った紅茶とクッキーを私の前に置いてくれた。

私はベル執事にそっと頭を下げて感謝の気持ちを伝えた。

その時凄いわんぱくな表情のグレース皇子が、お茶をすすりながら私をちらっと見た。

なんだか応接室の雰囲気がさっきから妙なようで、一体どういうことか気になった。

言うかどうか迷っているハエリス公爵を見つめながら私が先に勇気を出して彼に話しかけた。


「あのハエリス公爵閣下…、何のことかお聞きしてもよろしいでしょうか?」


私の傍に座っていたセレナがハエリス公爵より先に割り込んできて私の手を取り言葉を出した。


「エレインちゃん、今度、エレインちゃんに私を助けて欲しいんです!今回エレヌマンの外郭地域で救恤活動があるんですよ。覚えていますか? カル~いや、ふんふん、皇太子殿下と話し合ったことあるじゃないですか。そこに一緒に行ってくれませんか?」


「え?でも私は… あの時カルロス皇太子に身分を騙ったこともあるので」


「ああ、それは私がカルロス皇太子殿下に別に申し上げましたよ。ハリが何度もエレインちゃんが皇太子殿下に身分を偽ってはいけないと言い訳をするじゃないですか?全然心配する必要ないですよ。今度は救恤も救恤だけど、一部の村で伝染病が出回っているんですよ。それで薬草を上手に扱えるエレインちゃんが必要なんです!」


青いエメラルドの宝石のように輝く瞳が、私をキラキラとした目で眺めた。

色仕掛けは男たちにだけ使われるのではないようだった。

私を見つめてるセレナの後ろからなんだか後光がさしているようだった。


「エレインさんの意見は?」


「ちょっと、ハリ!いきなりカッと入って来ないでよ!私がもっと説得しなきゃいけないんだよ。エレインちゃんはメイドの仕事がいいとおっしゃったんですって?ハリがメイドの仕事以外はエレインちゃんに他の仕事を頼めないときっぱりと言い切っていましたよ!しかし、これはあまりにも才能の無駄じゃないですか?本人の才能を腐らせないでください!」


私は両目を輝かせるヒロインのセレナと、とても困った表情のハエリス公爵、そしてやんちゃな表情のグレース皇子を交互に見つめた。

何故かここでやりたくないと言ったらなんだか逆賊になりそうな雰囲気だった。

私はすでにこの物語の中でエキストラ100位ではなく助演15位になってしまったようだ。

待ちに待った自由な人生がなんとなく一歩遠くなった感じがする。

深いため息が私の口から自然に出そうだった。

正しいと思う事はブルドーザーのように押し付けるセレナをこの場で止められる人はいなさそうだった。

ハエリス公爵とセレナの2人の愛を輝かせる脇役に、私の役が昇格したのを感じながら静かに頷いた。


「うわあっ!本当にありがとうございます!エレインちゃん!!本当に頼りになるのを知ってますか?」


豊かなセレナの胸に私の顔が沈んだ。


⦅あの…、セレナ様!私息、息が詰まるんですけど!⦆


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