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1-6 襲撃

恒星暦569年7月5日

旧メダリア市 IHメダリアホテル


 轟音と衝撃は、一度だけだった。

 スプリンクラーと非常ベルが作動する。

 おそらくは爆弾。ここに反連邦のテロリストどもが居るのであれば、次は何が発生するだろう。爆発の混乱に乗じて連邦関係者への攻撃か。人質に取るなんてまどろっこしいことは彼らはしない。

 火薬式の銃声はしない。テロリストどもの怒声も聞こえない。となれば、テロリストどもは光線銃を所持して無言で連邦関係者に攻撃を仕掛けているのか。あの案内人の挙動だと、きっとテロリストどもとつながりがあるに決まっている。

「緊急事態。テロ。」

 戦術情報表示装置に囁く。轟音と空気成分から何が発生しているか治安データベースに入力がなされているはずだ。おそらく治安データベースから警報を受けた委託業務組合のパトロールカーが向かっていることだろう。

 おそらく、はず、きっと、決まっている、だろう。

 ケンタは奥歯を噛みしめた。仮定が多すぎる。事実として認識しているものは、轟音と衝撃。

 不確実なことが多すぎるが顔をあげて状況確認というわけにはいかない。おまけに勤務あけのため、武器は持ち合わせていない。

 床に落ちたフォークを一本掴み、ジャケットの袖の中に隠す。それだけでも安心感が少し増す。

「ヤンセン…シーラ、動きますよ。」

 シーラをかばいながら匍匐前進でテーブルから動き出す。爆発で混乱している美女を無理矢理連れて行く。動きの要領は高等弁務官の警護の時と変わりは無い。

 まだ衝撃から回復していない旧自治都市のVIP達を横目に非常口に向かう。暫くしても悲鳴が聞こえず、床に倒れ伏す人間の音も聞こえないことから、光線式銃がないことを祈り、匍匐前進から中腰になる。シーラの首根っこをつかんでいた状態から、手を握っての移動に代わっている。移動は一気に早くなってきた。

 轟音の後発生した煙と埃が収まるのを見計らってか、若い女性従業員に仮装した反連邦主義者らしい不審者が手に火薬式の拳銃らしきものを持って非常口から現れる。

 戦術情報表示装置の敵味方識別信号には味方と識別されていない。

 敵だ。

「シーラ、失礼。」

 手を離すと中腰からバネで弾かれたように反連邦主義者に飛びかかる。左手で火薬式の銃の銃口をそらし、フォークを右目に突き立て、捻る。力の緩んだ右手から火薬式の拳銃を奪い取ると、奥から現れた仲間らしき男性の不審者に引き金を二回引いた。幸い、初弾は薬室に込められていたらしく、不覚を取ることはなかった。ターゲットが自分より明らかに若そうであることは意識から除外する。奥の不審者が無力化されたことを確認後、倒れた少女からフォークを抜こうとして、何かも一緒に抜けたことからフォークを諦め、引き金を二回引く。硝煙の臭いが気に障った。

 4発。

 この手の火薬式の拳銃であれば13発入りの弾倉を利用しているはず。となれば残弾は最大9発。

「シーラ、さあ。」

 固まっている歳上の元少佐の右手を再び左手でつかむと非常口からホテルの外に向かう。

「おい!」

 入り口方向から男が声をかけてきた。

 躊躇はなかった。もし反連邦主義者でなかったとしても、銃を持って戦場にいる兵士の前に立っている方が悪い。

 一発、二発。

 無力化出来たか分からない。でも、倒れたから多分あたったはずだ。

 6発。残り最大7発。引き金を引いた後気がついたが、男の手には銃らしきものがあった。

 ホテルの裏口に向かう。裏口には予想どおりというべきか、逃げ出すための車両が待っていた。運転席にいる男は愚かにも目出し帽姿で銃を片手にドアガラスを下ろして出入り口を見守っている。

 目が合った気がした。

 一発、二発。

 銃の癖が何となく感じられ、照星照門をあわせ引き金を引くと、狙ったところに弾が飛んでいった気がした。

 8発。残り最大5発。

 目出し帽の男の残骸の影からさらに一人。どこかで見たことのある少女の顔の気がしたが、躊躇無く引き金を引く。

 一発、二発。

 10発、残り最大3発。

 車両から誰も出てくることはなかった。かわりにホテルの中から火薬式の銃を乱射する音が聞こえてくる。軍用小銃1丁。訓練された人間が打っていないらしく、打ち方に美しさが感じられない。興奮してただ乱射しているという音だった。暫く間があいたのち、また乱射音が聞こえる。フルオートで打ちまくっているため、おそらく殆どの弾は壁に穴をあけるだけとなっているだろう。

 裏口にこのような車両を止めていることを許している時点で、このホテルに反連邦主義者が潜り込んでおり、手引きをしていることは明らかだった。

 となると。シーラを植生の影に隠し、残弾を確認する。薬室に1発。弾倉にはなかった。危ないところだった。、打つなら外すわけにはいかない。打たないなら、隠れきらないといけない。

「おい、逃げるぞ!他はみんなやられた!」

 テロリストは興奮で顔をゆがませている。一人だった。ということは、6人で襲撃をしてきたということか。若しくは、自爆ひとりに裏、表、運転の計7人。運転手を喪って止まっている車のサイズからして、7人乗りだった。

 どうしようか。

 薬室が開いた銃を片手にしたテロリストは、運転者が力なく崩れている姿を見て、腰を抜かしていた。

 馬鹿な奴だ。

 周囲を確認する。バックアップのための車両が遠くにいるようだったが、彼らはケンタ達に何かをするというよりは遠くから監視するために停車しているようだった。体が自然と動く。あと一発であれば外すわけにはいかない。

「やあ。」

 間違いない、思い出せないが、どこかで見た顔だった。

 薬室が開いた銃を手放さないテロリストの鼻に銃口を押しつけると、最後の一発の引き金を丁寧に引いた。

 薬室の開いた拳銃を見つめる。

 ハンカチで丁寧に握りや引き金を拭き取ると、死んだテロリストの足もとに置き、ケンタはシーラのもとにゆっくりと歩いていく。シーラは目を見開き、腰を抜かしたまま座り込んでいた。

「大丈夫ですか?せっかくの夕食ですが、別の場所で食べることになりそうです。申し訳ありませんが、ご同行いただけますでしょうか。」

 戦術情報表示装置には一連の行動が記録されている。憲兵が今頃大慌てで出発しているはずだ。

 遠くから委託業務組合のパトロールカーのサイレンと軍の輸送機が接近する音が聞こえてきて、すぐに輸送機が上空でホバリングを開始した。

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