8話:真の敵
すいません
寝坊しました
では、本日一話目
8話『真の敵』お楽しみください
ファントム
それは知性なき化物であり、地球を侵略するもの
人類の歴史、約700万年を無かったものにでもするかの勢いで、地球の半分を1年足らずで滅ぼした
人類にもファントムと戦えるすべは見つかったが、いまだにファントム相手に人類の生存圏は脅かされ続けるばかりである———
私達はこの町を救いに来た。
その筈でしたが、もしかしたら手遅れだったのかもしれない。
そう思わせるほどの衝撃でした。
市役所の上にいるファントムは、一般的なものや今までに確認されたどの型にも属さないものでした。
鳥型の超巨大なファントム。全長6m超。色は赤と黒が混じり、大きな翼と長い尻尾、そして1m近くある鋭い嘴が特徴的です。
ランクはどれでしょうか。ランクによっては、今こちらに向かっているシュナイツのほとんどを止め、もしもの場合は他の学園に救援要請をする必要もあります。
「会長、ランクは」
「待って。最低でも災害級。これは最低のレベルで、ね。町の様子から見ても、災害級未満はありえない」
私の予想とも同じですが、それでは甘く見積もりすぎです。
「でも、それでは低いと思いますが」
「ええ。この町にいるシュナイツは、学院の近くという事もあって毎年数人の卒業生が回されます。それで、ここに昨年回されたのは昨年末のランキングでは、白崎さんの1つ前にいた人です。実力で言えば白崎さんの方が上かも知れませんが、それでも十分に強いことは分かってもらえるでしょう」
「前川先輩ですか‥‥」
「ええ」
前川先輩、というのが誰かは分かりかねますが、その先輩が強かったのは二人の反応でも分かります。
「先輩は守りのスペシャリストだったはずですが‥‥ここまで一方的にやられるとは。すぐに市民の逃走を優先させていたのが、功を奏したようですね。シュナイツの皆さんは兎も角守りに徹しても、攻め切られたようですが」
「ええ、彼女の采配のおかげで、市民のことは助けられたようだけど‥‥彼女たちの思いをきらないためにも、ここであれを倒しますよ。対象を超級悪魔級以上と推定!特一級警戒態勢!白崎さんは学園へ連絡を入れてから参戦して。行くわよ!」
『はい!』
こうして、学園入って初のファントム戦が始まりました。
「水智さん!10秒後に白崎さんに超絶技!カウントはこっちで取るから」
「はい!」
「白崎さんは、緋和李さんを援護しつつ、一時退避。緋和李さんは次一撃入れたら、一度退避して!3、2、1、今!」
水智様の超絶技は一度きりの絶対防御付与。
少なくてもリキャストタイムが3分以上。しかも、防御付与は5秒しか持たないという制限付き。
使いようによっては超強力ですが、今回は会長の超絶技によって、ミスがありません。
しかも、それ以外の援護も絶妙ですし、会長の指示もほぼ満点ですね。
ここまでは、問題なく戦えて来ていますが、時間の問題です。
私は今の所超絶技の使用は無いので、マギをほとんど消耗していませんが、ずっと使い続けている会長に、回避するのにかなりの頻度で使用している白崎様がそう長く持ちません。
水智様の場合は強力すぎて、一度の戦闘で十回も使えばマギ切れを起こすそうです。
安全も考えて8回までしか使わないらしいですが、ここまでですでに3回も使用してしまいました。
空中にいるファントム相手だと、少し面倒なんですよね‥‥
このレギオンの弱点は遠距離射程攻撃の少なさですが、初任務でいきなりそこが浮き彫りになるとは‥‥ついていませんね。
「会長、少し遠距離攻撃に移ります」
「分かりました。では、水智さん。防御は最低限に。攻撃重視にしてください!」
「了解!」
「白崎さんは、今まで通りに。今度は水智さんの援護を」
「分かりました」
妥当な所でしょう。とは言え、水智様の攻撃は殆ど当たらないと思いますが‥‥主な攻撃は私がするしかないでしょうね。
持ってきておいて正解でしたね。予備の遠距離攻撃用の銃。
あんまり遠距離攻撃には慣れていないのですが‥‥仕方ありません。
バン!
放たれた銃弾はファントムの羽を貫きます。
まあ、当てられないとは言っていませんよ。
ただ、攻撃力も下がりますし、近距離に比べると、圧倒的に弱いんですよね。
「私は1発の銃弾。何も考えず、目的を撃つ者なり」
小さく呟きます。私が唯一遠距離で師匠から教わったものです。
「一発」
発砲音がした次の瞬間には、ファントムに着弾します。
逃げようとしているのでしょうか?突然、動き始めました。
「二発」
まあ、そんなこと関係ありません。
動く的を撃つ練習は欠かしませんでしたから。
「三発」
痛みはそこまでないでしょうね。ですが、鬱陶しいとは思うでしょう。
このままではジリ貧になりそうなのですが‥‥どうしましょうか?
会長の方を見てみますが、かなり疲れが出てきている様子。そろそろ、先輩も超絶技を切らないと、マギ切れを起こしてしまいそうです。白崎様の方は、水智様が前線の攻撃に回り、私の遠距離攻撃が入ったことで、退避で使う必要がなくなったようです。
「会長、一旦切った方が良いかと。マギ切れが一番危ないです」
「分かっているわ!でも、このまま使い続けないと、戦線が崩壊してしまいます!」
先輩は自分の役割を理解しているのだろうか?
彼女の役割はあくまで作戦参謀。確かに彼女の指示で、戦線が持っているのは確かですが、持たせているだけでは勝つことも出来ません。
「じゃあ、一度二人を下げてください。私が、一度戦線を押し下げます」
「どうやって」
「内緒です。あと、こちらに小さいのが数体向かってきているので、そちらの処理はお願いします」
まあ、伝えても分からないと思うので、教えなくてもいいでしょう。
それに、未来を見ればわかることです。
「‥‥分かったわ。二人とも下がって!」
二人は何も言わずに下がってきました。
ファントムは、ここぞとばかりに私に攻めてきました。
「《場を制せよ》【支配者】」
あと、3秒といった所でしょうか。
ですが、その三秒は遠すぎますね。
「《最弱を持ちて、最強を喰らえ》【我最弱最強也】《阻め》【空間断絶】」
私の超絶技は全てをなくし、全てを永遠のものとするもの。
全てを喰らう超絶技であり、全てを授ける超絶技といえます。
「お前では、私に勝つことは出来ない《喰らいつくせ》【全てを喰らう支配者】」
相手のマギだろうが何だろうが、全てのマギを奪いつくす。
私の超絶技の完成形はこれです。
マギを奪い攻撃手段を失わせる。
ファントムはあくまでマギの集合体。どれだけ強くても、限界はあります。
「これで終わりです《全てを喰らう暴食の王よ、今一度我が願いに応じ、我が怨敵を喰らいつくしたまえ》【暴食覚醒】」
これが最後の攻撃。もっとゆっくり倒してもよかったのですが‥‥少し、疲れましたね。
私の場合、マギはいくら消費しても周囲から吸収することが可能です。
その反面、精神力は大きく消耗するのが難点です。
「会長、終わりました。そちらを手伝います」
「分かったわ、おねが…緋和李さん、危ない!」
え?
次の瞬間、私は思い切り横へと突き飛ばされました。
突き飛ばしたのは、白崎様でした。白崎様は脇腹をえぐられています
(何で‥‥また、私の手から‥‥零れ落ちないで‥‥‥)
あの任務から1週間が過ぎました。
私はまだ、寮へと戻ってから一度も部屋を出ていません。
白崎様は幸いにも致命傷は避けられたようですが、全治2ヶ月を言い渡されました。
あの時の戦闘は、遅れてきた数隊のレギオンに引き継がれ、私達は逃げてきました。
市街地から少し離れたところに出ると、先生の車が走っていました。
そこには救護の先生もいらっしゃり、白崎様は超絶技のおかげで、死は免れました。
しかし、体の欠損だったこともあり、しばらくは休学扱いになるようです。
私の方はと言うと‥‥
いまだに立ち直れずにいます。
何度か会長や水智様、そして楓花さんも見舞いには来てくださりました。
しかし、一度も顔は出していません。
また、手から零れそうになった。それだけでも、私の心を折るには十分だったようです。
もう10年近くも昔のことなので、そこまで気にならないと思っていたんですが‥‥はは
乾いた声しかでてきませんね。
10年前もこんなふうに、一人で抱え込みました‥‥
もう十分に成長したと思っていた。自分は強くなったと勘違いしていた。
10年前は今とは違う。今は戦う力がある。
白崎様に怪我を負わせることも無く、勝つことも出来た。
それなのに、私は‥‥私は!
悔やんでも悔やみくれません。あの時何故、倒したと安心しきってしまったのか。
なぜ、あれの飛来に気付かなかったのか。いや、気付いてはいたはずです。
まだ、未熟であることを私は理解しきれていなかった‥‥そして、強い超絶技を手に入れたことにより、自分に慢心をしてしまった。3年前ならばしなかったはずのミスを、3年も過ぎた今になってしてしまった。
たった一つのミス。それが、重大な問題だった。
小さな問題だとしても、してはいけなかった問題だ。
それが今回、命が係ったものとなった。たった一度の偶然かもしれない。
こんなこと、もう一生訪れないかもしれない。
それでも、私は重大な場面で、またこれを思い出すでしょう。一生忘れることは出来ないでしょう。
人が死ななかったとは言え、呪いが螺旋のように続いていきます。
人が目の前で死んだのは‥‥死にかけたのは初めてではない。
人が目の前で死ぬなんて、珍しい事でもない。3年前の撤退戦でも、周りで何人も死んだ。
それでも、今のように塞ぎ込んだりはしなかった。
ああ、そうか。それだけ白崎様を大事に思っていたのか。
いまさら気が付いても、遅いのだ。何かあってからでは遅い。
だから、私は自分を鍛えた。その筈だった。
3年前に覚悟も決めたはずだった。
甘かったのだ。この3年間、何をやってきたのだ!
会長は言っていた。『超級悪魔以上と推定』『特一級警戒態勢』と言っていたはずだ。
あれは、おそらく下級魔将だった。私は油断なく戦えば、問題なく勝てるはずだったはずでした。
油断に慢心に‥‥自分で自分のことが嫌になってきますね。
これ以上、学園の人たちに迷惑をかけるわけにもいきません。
明日からは、教室にだけでも顔を出しませんと。
そうと決まったら、すぐに行動に移しました。
地下の風呂へと向かいました。
今の時間はまだ10時前。今日は平日なので、みんな学校に行っていて寮にはいないはずです。
「ははは‥‥酷い顔ですね」
そう言えばこの一週間、一度も風呂に入っていませんでしたね。
部屋にないので、こちらに来なければ入れないので、当然なのですが‥‥入っていないのも忘れていました。
さっさと済ませましょう。
十分ほどで入浴を終え、部屋へと戻りました。
平日の寮は静かなものですね。誰もいないのではないかと、錯覚してしまうほどです。
寮母さんはいるはずなので、そんな訳無いのですが‥‥
ここまでお読みいただき有難うございました
では、次話の予告を文華さんにしていただきましょう
「こんにちわ、白崎
今話では、私は緋和李を助けようとして大きな怪我をおった
でも、先生のおかげで治った
今回のことで、怪我をしても救ってお貰えることが分かった
これからは死なない程度に、怪我をしても頑張る
じゃあ、次話の予告
次話では、緋和李の秘密の過去が明らかに
じゃあ、次話もお楽しみに
次話の投稿は4時から6時の予定」
文華さん、有難うございました
では、作者からのお願いです
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では、また次回お会いしましょう!