2話:入学式
お久しぶりです
予定より少し話数は少ないですが、本日から1日数話ずつ投稿をします
一章ごとに話は1からにする予定ですが、0章は1つしかなかったので、話数はそのまま繋げます
では、2話『入学式』お楽しみください!
ガタガタと揺れる電車に揺られて、『秋峰緋和李』はこれから入学する『栄菟女学院』へと向かっていた。
これから入学する『栄菟女学院』は世界に3つしか存在しない、対ファントムの『シュナイツ』育成を目的とする学園です。
人によっては中等部の時点で入学している人もいるそうなのですが、住んでいた場所では私しか『マギ』を扱える人間がいなかったこともあり、高等部から入学することにしました。
この『栄菟女学院』に入学する方法は3つあります。
1つは通常通りに入学試験を受けること。
最低条件が『マギ』を使えることで、よっぽどマギの適性が低くなければ、落ちることはありません。
2つ目は中等部からの繰り上がりです。
こちらは、生徒が拒否しなければ間違いなく高等部に入ることができます。
3つ目、これは私が使った方法です。学園長からの推薦です。
推薦される人数は1年で最大5人と決められています。大抵は『レギオン』のメンバーを引く抜くことが多いようです。
ああ、『レギオン』とは、3人から9人程度で構成される、『シュナイツ』の集団のことです。
私はどこのレギオンにも所属していませんでしたが、4年前の小規模ながら起こった『第三の天災』による撤退戦で、偶然にも指揮を執っていた学園長に目を止められたのです。
当時11歳だった私でしたが、その時には『マギ』をかなりの量保持しており、扱いもどちらかと言えばいい方でした。
途中で力尽き、『セントビリア学園』の生徒さんに助けていただきましたが、それまでの戦いが評価され学園に誘われました。
私は中等部への入学は断り、高等部から入学することが決まりました。まあ、中等部から行きたかったかと聞かれればそうなのですが、当時はまだマギ保有者の持つ『超絶技』を所有しておらず、さらに撤退戦の後で家族も大変だったので中等部入学は泣く泣く諦めました。
————駅に着いたようです。
駅を出た先にあったのは、さびれた街並みでした。
学園のある場所には町はありません。学園は山に囲まれた海辺の街の一部に作られています。
学園は『ファントム』との戦いの最前線であり、最終防衛ラインです。
この場所で戦う事も少なくはなく、一般人がそうそう住めるような場所ではありません。
さびれた街並みを見ながら、学園へと歩みを進めていきます。
途中にはボロボロになった家が多いですが、所々に桜などの花も咲き誇っていました。
数十分ほど歩いたところで、学園へと到着しました。
学園の敷地内には数多くの生徒がいました。
恐らく新入生なのでしょう。そして、その一角に何か騒がしい集団を見つけました。
「文華様、私と決闘してくださいませんか」
一人の新入生が誰かに戦いを挑んでいるようです。
この学園では序列というものが存在し、序列一位には『生徒会長』の地位と、『レギオン』のリーダーになる責任が課せられるといいます。
そして、その序列を上げる方法が、彼女の言っていた『決闘』です。
「あ、あれは『茨ヶ咲』さんです!」
「ん?」
隣にいた少女が物凄く興奮した様に、決闘を挑んでいる少女を見つめています。
「文華様という事は‥‥やっぱり!『幻影女帝』の『白崎文華』様です!」
「えっと、あなたは?」
「はい?」
こちらに振り向いた彼女は、私よりも身長が小さい。(私の背が周りよりもほんの少しだけ小さいのは自覚しています)
私よりも5cmほどは小さいですね。
「初めましてです。私は『華僑楓花』です。よろしくお願いします!」
「私は『秋峰 緋和李』です。よろしくお願いしますね」
「はい!」
「ところで、さっき言っていたのは?」
「ああ、あそこで決闘を始めようとしている、二人の名前ですよ。右側で決闘を挑んだのが『茨ヶ咲 天音』さんです。中学時代でも東日本では、ほとんど知らない人がいないだろうと言うほど、名前の通った有名人でした。あの無窮の幻想のメンバーですよ。
左側にいるのが高等部2年の『白崎 文華』様です。去年入学したばかりなのにすでに昨年末の序列で14位、今年度初めの序列では9位の実力者です。二つ名は『幻影女帝』だそうです」
「へ~。教えてくれてありがとね。でも、流石に今は決闘をやっているようなタイミングじゃないだろうし、ちょっと止めてくるよ」
「へ?‥‥ちょ、ちょっと!緋和李さん。待ってください!無茶ですよ!」
後ろで止めようとしてくる楓花さんは、ただ親切心から言っているのでしょうが、多分そんな危なくないと思います。
それに、簡単に負けるほどやわな鍛え方はしていません。この3年でかなり訓練しましたからね。
「ちょっと!天音さん。文華様に失礼でしてよ!」
おっと。私が入る前に、誰かが仲裁に入ってくれたようだ。
でも、何か雲行きが怪しそうだな‥‥
「あら、あなたが私に何の御用ですか?」
「あなた如き、文華様の手を煩わすほどではありません。私がお相手して差し上げますわ」
ああ…やっぱり。止めに入らないと、か…
「では」「いざ」
「「勝負!」」
「はい、ちょっとストーップ!」
「何ですの!?」「何だ!?」
決闘を開始し、攻撃をするために移動する前に、私が二人の間へと入り首元に『心霊装』を突きつけました。
「神聖な決闘に無粋な真似はよしてもらえますの?」
「今から、そいつをボコさなければならないんだ。そこをどけ!」
「あなた達、今日が何の日か忘れたのですか?今日は入学式ですよ。そんな場でいきなり問題を起こして、いきなり停学にでもなるおつもりですか?いや、停学ではなく、入学取り消しになるかもしれませんね。学園の校則ではまだ、私達はこの学園の生徒ではないことになっておりますが‥‥どうしますか?」
まあ、これだと私も一緒に入学取り消しになるかもだけど、周りの人も私が止めようとしているの見ていたし、大丈夫でしょう。
「ふん!今回は一旦お預けにしてあげますわ!」
「今回のは無かったことにしておいてやるよ」
「はい。では、会場の方へ向かいましょうか」
その場にいた新入生は、在校生たちの指示に従って入学式の会場へと向かった。
「緋和李さん。あなた何者ですか?」
「私は私ですよ。それ以上でもそれ以下でもありません。私が私である限り」
「?」
「いえ、今のは忘れてください。私はただの推薦入学生ですよ」
「緋和李さんが、推薦入学生!?」
「シー、ですよ。あまりここで騒ぎすぎ話良くないですよ」
喋り方に違和感がある?ああ、少し取り繕っているだけですよ。周りにいいように見せている分には問題ありません。
「は!すみません・・・・確か今年の推薦入学では言ったレギオンは…ああ、ありました。『無窮の幻想』ですね。『無窮の幻想』と言えば、一昨年に大きな成果を上げていましたね。その中に緋和李さん、いましたっけ?」
「いいえ、私は個人入学ですよ。どこのレギオンにも属していません」
「でも、推薦入学はレギオンを推薦するための制度で‥‥」
「偶然、学園長に誘われまして。まあ、運が良かっただけですよ」
「運が良かっただけではないと思うのですけど‥‥」
「さっき、茨ヶ咲さんに噛み付いていたのは誰だったのですか?」
「先程の方は『竜宮院純恋』さんです。竜宮院財閥の一人娘で、中等部時代は学園ではなく、企業の『シュナイツ』として動いていました。竜宮院財閥と言えば、『心霊装』を作成していることで有名ですね。突っかかっていた理由は、文華様を尊敬しているからだと思いますよ。彼女、雑誌で最も尊敬している人の名前で、文華様のことを出していましたから」
『心霊装』と言うのは、『シュナイツ』が『ファントム』と戦う際に使う武器です。
形状は色々とありますが、最大の特徴は『マギ』を貯めることができることですね。
マギを貯めることによって、武器の鋭さや威力が上がります。
「そう言えば、緋和李さんの『超絶技』は【双着装】なのですか?」
「いいえ、違うわ。私の『超絶技』は‥‥そうね。その内見せる事もあるかもね?」
「そんな~・・・・」
「それは置いておいて、そんなに情報あるなら、私の情報もある?」
「‥‥すいません。緋和李さん個人のものは無さそうですね」
「そう?」
「ええ。今までどこで何をやっていたのですか?」
「東北の地方で故郷を守っていましたよ」
「そうだったのですね。では、撤退戦の時に学園長の目に留まったのですね。なら、私が知らないのも納得です。でも、なぜ高等部から入学を?」
「色々理由はあったけど、やっぱり、妹がまだ幼かったから、って言うのが大きいかも知れないですね。あとは、復興の手伝いも必要だったからです」
「色々あったのですね‥‥」
「あなたも、色々あったのでしょう。だから今‥‥そろそろ時間ね。早く会場に行きましょうか」
「うぅ。話の続きが気になりますが、入学式に遅れるわけにはいきませんから‥‥分かりました」
私と楓花さんは会場へと入っていき、空いている席に座りました。
入学式が始まった1時間ほどが過ぎました。
防衛省のお偉いさんや、大企業の社長などなど。何とも沢山の人が来られるんですね。
『続いて新入生歓迎の言葉。在校生代表、生徒会会長『雲雀・F・リンネ』様、お願いします』
「はい」
凛と透き通るような声が会場に響いた。
生徒会長は堂々とした立ち姿で、一歩一歩壇上へと歩みを進めていきます。
『皆様、初めまして。入学おめでとうございます。ご紹介にあった通り、私は生徒会長の『雲雀・F・リンネ』です。私達シュナイツは国の防衛、また、人間の生存圏を取り返すために活動しています。勿論任務中に殉死することも少なくありません。だからこそ私達は、このセントビリア学園で成長し、死なないようにしてください。私からは以上です。ご清聴ありがとうございました』
『雲雀様ありがとうございました。続いて、新入生代表挨拶。『秋峰 緋和李』さん。お願いします』
「はい」
「え?」
隣から楓花さんの呆けたような声が聞こえた気がしますが、気にしたら負けです。少なくとも壇上に立つまでは、表情を崩さないようにしなければ。
誰一人として私のことを知らなかったからなのか、急にザワザワトし始めました。
『キィィィン!!!』
「キャッ!」「何だこれ!?」
少々騒がしかったので、悪戯をしてしまいました。
時々ある、マイクからの嫌な音を、自分で出したのです。
『アーアー。コホン。初めまして。私は『秋峰 緋和李』です。中等部までは東北の地方に居ました。4年前の撤退戦で学園長から直々に推薦を受け、この学園に来られたことをうれしく思います。私は主席ではありますが、皆様と一緒に切磋琢磨し、人類がファントムに勝つための礎になれればと思います。これで、私からの挨拶は以上とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました』
出来る限り、笑顔を心がけていましたが、うまくできていたでしょうか?
出来ていなかったら引き攣っていそうなので、少々恥ずかしいですね。
「ひ、緋和李さん‥‥新入生代表だったのですか?」
「ええ。そうなっていましたね。私もテストは受けていなかったので、ちょっと驚きました」
「例年通りならば、一般入試の主席か中等部の主席がやりますからね。それだけ、緋和李さんが評価されたんですよ!」
「そうだと嬉しいですね」
『秋峰さん有難うございました。続いて学園長式辞』
「学園長の挨拶のようですね。聞きましょうか」
「そうですね」
『私が栄菟女学院、学園長の『李恢心』だ。この学園は日本を守るため、そして、人類の領土を取り戻すためにある。死ぬのを恐れ、殺しを恐れるな。ただし殺しに飲み込まれるなよ。私も、今まで何人も見てきた。来月にはESSの新人戦もある。ともに競い合い、高めあえ。これで私からの挨拶は終わりにする』
『学園長有難うございました。閉式の言葉。副学園長お願いします』
『これにて、第7回、入学式を終了します』
「終わりましたね」
「学園長はもとより、副学園長もかなり強いね。そろそろ、マギが無くなっていてもおかしくない年齢のはずなんだけど‥‥」
「そうなのですか?私には良く分からないです‥‥」
「まあ、その内分かるようになるよ。さあ、教室に行こう」
「はい!」
私と楓花さんは入学案内と共に送られてきたクラス分けに従って、クラスへと向かいました。
なお、楓花さんと同じクラスになって、内心小躍りしていたのは内緒です♪
ここまでお読みいただき有難うございました
では、次回予告を緋和李ちゃんから
「お久しぶりです。改めまして、秋峰緋和李です
今話では、今後も仲良くしていくであろう、楓花さんの登場となりました
クラスわけでは、この学園に知っている人がいないので、少しでも仲良くなれた楓花さんと同じクラスになれて、本当にうれしかったです
今話の感想はこの辺りにして、次話の予告になります
次話では、今話でも登場したある人物がキーとなっています
皆さんは、誰か分かるでしょうか?
そして、あるキャラクターの意外な一面も見られるようですよ
私からの予告はここまでとなります
今話をお読みいただき有難うございました
次話の投稿は12時から2時の間だそうですよ」
緋和李ちゃん、ありがとうございました
では、作者からのお願いです
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励みになるので、どうかよろしくお願いします!
では、また次回お会いしましょう!