6話:ESS予選・終幕《後編》
今話は本日3話目です
今話を持ちまして、しばらくの間更新を停止させていただきます
では、15話『ESS予選・終幕《後編》』お楽しみください
「それでは、参りましょう!」
「行きます!」
両者のリーダーの言葉を合図に、再び戦いは始まった。
「白崎さん回り込んでください」
「了解」
「緋和李さんが攻撃の起点に、水智さんと千寿さんは緋和李さんの援護を」
『了解!』
「【紅流・秘槍:八雲鉢】」
「そう簡単に近づかせるとでも?《其は弾丸、我が願いに応じ、彼の敵を撃ち抜き給え》【我放秘弾丸也】《1》【Ⅰの弾】」
「【紅流:芯撃】」
弾の芯を槍で突く。勢いに乗った槍は、そのまま弾丸を中心から破壊した。
「甘いです《2》【Ⅱの弾】」
「【紅流:天烏】」
周囲を薙ぎ払う技です。
相手の【Ⅱの弾】は【Ⅰの弾】が破壊、もしくは切られたりした場合に、それを弾丸として放つ技でしょう。
ただし、【Ⅱの弾】は【Ⅰの弾】とは違い、必中ではないようですね。一度狙った場所から狙いをずらすことはほとんどできないようです。
「《3》【Ⅲの弾】」
不自然に残された弾の残骸は、このためでしたか。
「【紅流・秘伝:天翔】」
危なかったですね。まさかここまでだとは‥‥
「‥‥サポート入る」
「お願いします」
少し気掛かりなのは、先程から静かなイリアさんですね。
何故か彼女の周りにマギが集まってきています。
まあ、動かないのでしたら好都合です。今のうちに鈴さんを討ちましょう。
「【紅流・弐の槍:二繋】【天翔】【螺転天月】」
「《1》【Ⅰの弾】」
近づこうとすると【Ⅰの弾】で牽制を入れてきますか。厄介ですね。
せめて必中でなければ、どうにか出来たのですが‥‥
「進め!」
「!」
「《敵の攻撃を阻め》【絶対防壁】」
そうでしたね。今はひとりで戦っているわけではありませんでしたね。
水智様の能力は、一度きりの絶対防御と数度のダメージ軽減の二つだけです。
前者のものは覚醒により手に入ったようです。
「ありがとうございます。【紅流・秘伝:天翔】
これで終わりです【紅流・秘槍:螺転天月】」
「ふふふ。私は負けたわ。でも、勝つのは私達よ!」
何を言って—————!
イリアさんの周囲のマギが、急に暴走を始めました。
「何が!?」
「イリアの、最後の技よ。彼女がこれを使った以上、負けることは無いわ」
これが、噂にあったイリアさんの‥‥そうでしたか。
私の最強の技が全てのマギを喰らう【暴食覚醒】ならば、イリアさんの最強の技は全てのマギを自分の支配下に置く技でしたか。
私とは対極の技でありながら、最も近い能力ですね。
「これは大変ですね」
苦笑いしか出てきません。
私の【暴食覚醒】では、あれを止めることは出来ません。
あれは、対私において、一つの完成ですからね。
吸い取るマギが無ければ、私のマギなど超絶技を使えば一瞬で尽きてしまいます。
「緋和李さん、超絶技を」
「無理です。あれは吸い取れません」
「私も、今は使えなくなっているのよね。予測は使えないから、見て判断して!」
『はい!』
「こっちから行くよ」
「はや——くっ!」
とっさに槍で防御をしましたが、全然役に立ちませんね。槍は折れてしまいました。
勢いを殺すために、自分から後ろにも飛びましたが、ほぼそのまま衝撃が来た気がします。
もしかしたら、下がったうえでこれなのかもしれませんが。
「まだ、だよ」
「【紅流・秘拳:彗星】」
カウンター技なのですが——衝撃を止めるだけでも、精いっぱいですね。
衝撃が重すぎて、カウンターまで持っていけません。
「【紅流・秘剣:天埀星】ふっとべ!」
ふっと‥‥ばない!?
足元を見ると、少し動いていますが地面が土でなかったら、動いていたかどうか‥‥
「これでも駄目ですか」
一度退いて、体制を整えましょう。
少し焦って技を放ったかもしれません。
「休む時間は与えないよ?」
「【紅流:地流】」
地面へと攻撃を促した——筈だったのですが、ほとんど動きませんね。
「【紅流・参ノ拳:静ノ型】【紅流:雷拳】」
攻撃を守るために使う、格闘術の絶技の3番。
早く突き出す技ならば、相手の衝撃に合わせ相殺するなどと言った形です。
うまい感じにいなせると衝撃が全く来ないのですが‥‥やはり、無理ですね。
ほとんど衝撃が殺せませんでした。弱めることは出来たので、吹っ飛びはしませんでしたが、左手がかなり痺れました。
「会長、剣を!」
「分かったわ…はい!」
「ありがとうございます」
勝つ条件は、イリアさんを倒すことだけではありません!
会長が投げ渡してくれた剣を空中でつかみます。
「【紅流・壱ノ剣:紫電雷切】」
これで!
かなり勢いをつけて地を蹴ったので、かなり土埃が上がっています。
剣が受け止められているのでしょうか?校章を切れたと思ったのですが‥‥
土埃が晴れてくると、思いもよらぬものが目に移りました。
あのスピードの剣を‥‥手で!?
「緋和李ナイス」
「そんな遅いのじゃ当たらないよ」
倉石さんの放った矢は、イリアさんの手に収まっていました。
どれだけ動体視力が高ければ——高速で放たれる居合や弓矢を止められるのですか!?
「はい。どーん」
「《衝撃をいなせ》【衝撃緩和】」
私の肩を突き飛ばす様に、掌を出してきました。
それだけだったのに、後ろの方にまで吹っ飛ばされました。
木にぶつかる直前で止まりましたが、水智先輩の能力が無ければ、今頃気絶していたかもしれません。
「水智先輩、ありがとうございます」
「良かったよ。一撃で5発分のプロテクトを持っていかれたからね。彼女から離れれば、少しはマギが使えるみたいだよ」
「そうでしたか。ありがとうございます。ですが、彼女相手に背を見せるわけにはいきませんよ」
背を見せた瞬間に距離を詰められ、先程の普通ではありえないような攻撃を浴びせられるでしょう。
「それもそうだね」
このままでは、こちらが負けてしまいますね。鈴さんの言っていたことは、正しかったのかもしれませんね‥‥
ただ、相手が悪かったですね。私は、負ける気がしませんね。
「俄然燃えてきました!」
「緋和李さん!イリアさんのことは任せるわ!」
「はい!」
これが、本当の最終決戦です!
「我が最強を持ちて、其の最強を制します!
《喰らいつくせ》【全てを喰らう支配者】
《全てを喰らう暴食の王よ、今一度我が願いに応じ、我が怨敵を喰らいつくしたまえ》【暴食覚醒】!
《崇め給え!称え給え!敬い給え!我は全てを喰らう暴食の王也!全ての贄を喰らいつくし、今一度覚醒し、神へと至り給え!》【神華】!
ハァァァァァァァァァァァァァァ!」
【神華】
それは、全ての超絶技において、極めた者のみが至れる極地。
それぞれ、何かしら対価が必要であり、それを達成できていない場合には使用することは出来ない。
私にとって、最後の技は【暴食覚醒】です。
しかし、最強の技。それは、【神華】です。神へと昇華する技で、私の場合、対価は5分限定の使用で、残りのマギ全てを使い切ります。
その5分の間に限りマギを無限に使用できますが、その後1時間はマギが使えませんし、気絶してしまいます。
1時間が過ぎても、1日ほどは筋肉痛でほとんど動けなくなってしまいます。
「これで、最後です」
「負け、ない!」
「【紅流:雷底】」
掌底ですが、この状態で放つ前でも見るのがやっとなもので、この状態で放つ場合〈光速〉の域にすらいたります。
流石に、見えてはいるようですね。ですが、反応する前に撃ち抜きます。
「【紅流・弐ノ拳:二繋】【天羽々斬】【天埀星】」
【天羽々斬】は、自分の身体で刃物を再現する技です。
腕を振るい、物を切るなどと言った感じです。基本は腕や足だけですね。
「行きます」
「《敵を知ろう。我は全てを見通す目を持ち、心をも読む者なり》【我全見目心也】」
これが、彼女の覚醒状態の超絶技ですか。
神華には至ってはいないようですが、十分に厄介ですね。
「これで、最後にしましょう。ハァァァァァァァァァ!」
「これで、私の勝ち!ハァァァァァァァァァ!」
私と彼女の拳がぶつかり合い、大きな衝撃波を生み出します。
木々は揺れ動き、周囲にいた人たちは皆、この場から離れていきました。
「【紅流:刺拳】」
「《思考を読め》【心読】」
思考まで読まれますか。私の放った技は、彼女の横すれすれを通過し、宙を切りました。
かなり厳しいですかね。ですが——
「あきらめるという選択肢はありませんね。相打ちになろうとも、貴方は私が倒します!」
「私が勝って、他の人も私が倒す!これでもくらえぇぇ!」
「【紅流・秘剣:燕返し】」
懐まで一瞬で踏み込まれ、私に当たる直前、私は手を振り抜きました。
「くっ!かはっ」
イリアさんの方に向き直ります。
———一か八かの賭けでしたが、無事成功したようですね。
『勝者、不滅の戦姫』
「え?何で‥‥私、まだ負けてない‥‥負けてないよ!」
イリアさんには何があったのか、分からなかったようですね。
『え~。イリア選手。あなたの校章は緋和李選手によって切られましたので、貴方は棄権扱いとなり、残りメンバーゼロにより無窮の幻想の敗北となります』
放送によりアナウンスが入りました。
「負けた?‥‥負けちゃった‥‥‥負けちゃったよぉ!ああああぁぁぁー!」
会場にはイリアさんの鳴き声が響き渡りました。
ふと、下を見ると、私の校章も、割れた状態で落ちていました。
本当に危なかったですね。あと一瞬、振るうのが遅ければ、負けていたのは私達だったかもしれません。
イリアさんは無窮の幻想のメンバーに連れられて会場を後にしました。
私は試合の後、超絶技の対価で動けなくなり、教職員により保健室へと連れていかれました。
3位決定戦もあったらしいのですが、こちらは勝利の剣が勝利したらしいです。
その後、それぞれレギオンのリーダーが呼ばれ、校庭で表彰式が執り行われました。
私は、保健室から見ることになりましたが、他の生徒は殆どが校庭に集まっていたようです。
イリアさんも無窮の幻想と一緒に並んでいました。
こうして私達、栄菟女学院のESS予選は終わりを迎えました。
翌日、他学院の情報が入ってきました。
白崎女学院からは【守護の盾】が一位で、【炎焔灰雷】が二位での通過という事です。
神鏡女学院からは、予想通り圧倒的な実力差で【聖杯】がいちいで通過したようです。二位のレギオンは【獅子】だそうです。
ESSの本選を一週間前に控え、私達はそれぞれの訓練をしました。
場所は新東京。一度ファントムの襲来により、大きく損壊した東京都を新たな形で蘇らせた場所です。
そう言えば、教えていませんでしたね。
栄菟女学院は元福島県。白崎女学院は元鹿児島県。神鏡女学院は元神奈川に存在します。
栄菟女学院が東北と北海道、関東の北側を。白崎女学院は九州と四国を。神鏡女学院は関東の南から中国地方までを、それぞれ守っています。
今回の会場は神鏡女学院が最も近いですね。
ですが、勝つのは私達栄菟女学院の代表である、不滅の戦姫です。
そして、一週間が経ちESSの本選を迎えました。
ここまでお読みいただき有難うございました
前書きでも言った通り、この話をもちまして更新を一時停止にさせていただきます
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