5話:ESS予選・終幕《中編》
遅れました、すみません
では、14話『ESS予選・終幕《中編》』お楽しみください
試合が始まりました。
静かな試合の入りです。
試合の中で最も静かな時間がここですね。
会場の盛り上がりもなく、ただただ、自分や仲間の息遣いだけが聞こえてくる。
今回の作戦は、会長にとっても苦肉の策だったと思います。
《総力戦》言うは易し、行うは難し。
実力的には、おそらくこちらの方が何段か上でしょう。
しかし、会長にとってそれは関係が無かったのだと思います。
作戦を練ったとして、相手に各個撃破をやられるとなると、私や水智様は兎も角として、白崎様や倉石さんは危険になります。
会長の場合は本当に戦う事になったら危険かもしれませんが、おそらく戦う事になる前に気付き、隠れとおすでしょう。
「さて、みんな準備はいいわね」
『はい!』
「行くわよ!」
会長の合図で私達は駆け出しました。
観客席の方を見ると、かなり動揺が広がっています。
それも当然でしょう。会場にいる人たちのほとんどが高度な戦略戦、または、ここまでの2試合のように、本陣に数名が突撃すると思っていたでしょうから。
しかし、私たちは全員で駆け出しました。
恐らくは相手も同じです。
「接敵10秒前!」
『了解』
先輩の予知によって、大まかな接敵までの時間は分かります。
かなりマギを消費するようですが、数十回は使えるほどマギの量は多いそうです。
「3,2,1!行って!」
「分かっています」
白崎様は気配を殺し、私達の少し先を道をずらして走っていましたが、相手の姿が見えたのと同時に、横から奇襲を仕掛けました。
「《聳え立て》【嶺壁】!」
茨ヶ咲さんの反応が予想以上に速いですね。
あちらも、この位は予想していましたかね。
「《敵を弾け》【盾撃】!」
「《我陰に潜む》【潜み影】」
ギリギリでカウンターを避けられたようですね。
最初の攻防ですが、どちらにも軍配が上がったとは言えませんね。
こちらとしては相手の混乱を、相手にとってはこちらのメンバーを1人削ること。それを狙っていたのだと考えられますから。
「じゃあ、行きますので、援護はお願いします」
「緋和李さん、お願い」
「はい!」
少し離れたところですが、距離にしたら5m程度。一瞬で詰められる距離です。
「【紅流:岩斬】」
「チッ、面倒な!《受け流せ》【壁流】」
流石に反応しますか。
「【紅流:華僑昇龍】」
「《壁よ押しつぶせ》【堕壁】」
「【紅流・弐ノ剣:二繋】【天翔】【天埀星】」
紅流にある、弐つ目の到達点。武器ごとに7つずつ存在する技で、絶技と呼ばれる。
今使ったのは、剣の2つ目の技です。正確には武器を問わず、2番目の絶技は、全てこの技なのですが。
2つの技を連続で使用する技‥‥いや、2つの技を繋げる技です。
繋げられる組み合わせは、最低限決まりがあります。名前に同じ漢字が使われていることが条件だそうです。
そもそも、絶技を使える人も早々いないので、あまり知られていませんが、全ての武器に存在する技で、最も難しい技と言われています。理由として一番大きいのは、基本繋げられる技は、秘技であるモノだけです。当然難しいですね。
「そう簡単に、マギも使わずにこじ開けられるわけにはいかない《重ねろ》【重壁】」
「さらに分厚く⁉」
元々数十ほどは分厚さがあったのですが、さらに分厚くなりましたね。
百くらいはあるのではないでしょうか?
流石にこれでは、ダメージを壁の向こうまでと押し切ることは難しいですね。
剣‥‥では難しいですね。崩しても、追撃が出来ないですからね。
では、拳ですね。
「【紅流:揺崩】」
両手を壁に押し付け、腰を使って一気に放つ。
壁は私の触れているところから揺れだし、徐々に崩壊していった。
「なに!?」
「まだ【紅流・秘拳:天紅震——くっ」
邪魔が入りました。避けながら剣も拾っておきましょう。
かなり弾の動きがおかしかったので、相手のリーダーでしょう。
「緋和李君大丈夫かい?」
「はい。避けられたので。ただ、茨ヶ咲さんを今ので落とせなかったのは痛いですね」
「それは仕方ないさ。相手の方が一枚上手だっただけだ」
「次行くわよ!」
『はい!』
「天音、少し危なかった」
「すまねぇ。次は大丈夫だ」
「ふわぁ~。鈴ちゃん、使っていい?」
「いや、まだ駄目。イリア、手伝って。一人分断したら、樋波よろしく」
「了解」「お~けぃ」
「行くわよ」
「ああ」「分かった」「りょーかい」
こちらから攻めましょうか。
「【紅流・壱ノ剣:紫電雷切】」
「やらせねぇよ!《妨害の盾》【軟壁】」
なんでしょうか‥‥土なのに柔らか——!
「《固まれ》」
今のは危なかったですね。
武器を取られるところでした。
「流石に無理だったか。行けたと思ったんだけどな」
ぼやいていますね。
確かに今のは危なかったですが、直前で粘土だと気づけました。
やわらかい土でしたからね。地盤はぬかるんでいないので、粘土だと気づけました。
これで、地面がぬかるんででもいたら、おそらく気づけませんでしたね。
「運が良かっただけですよ。あなたには、かなり本気を出さないといけないかもしれませんね
《場を制せよ》【支配者】
《権限せよ、蹂躙せよ、支配の王たる力を見せつけ、彼の最強を喰らえ》【支配の剣:参式】」
「なんだそれ?物理的に物を作る能力か?だが、樋波がお前の能力は相手の身体能力を下げるものと、マネするものだと——」
「行きます!」
「ま、そうなるわな!《敵の侵入を妨害せよ》【岩壁】!はぁぁ!」
「甘いですよ」
私の振るった剣は壁などまるでないかのように、スムーズに一瞬で壁を切り裂いた。
「なに!?《鉄の壁よ、敵の攻撃を防げ》【鉄壁】」
「意味などありませんよ」
私の振るう【支配の剣:参式】はマギを吸い取る剣です。
あくまでマギのみを吸い取ります。つまり、剣の触れた物からはマギが失われるのです。
操作権をなくした相手から見ると、まるで壁など無いようにも見えますね。
今回の場合、岩や鉄とは言え元々は全てバラバラ。継接ぎのようなものでしたので、マギをなくしただけで崩れました。しかし、売れた部分しか崩れていなかったので、まるで壁そのものを切っているように見えたのです。
つまり、実際には何も切っていません。まあ、早々気付かれるようなものでもありませんが。
「次行きますよ」
でも、この剣。相手のマギだけでなく、私のマギまで吸い取るのですよ。
相手のマギも吸い取って自分の物にしていますが、減っている量の半分ほどなので、全然足りていません。
と、言う事で戦い方から変えます。
私が会長に預けていた、心霊装ホルダーから取り出したのは、槍型の心霊装。これでも、槍の心得もあるのですよ。あまり上手ではないですけど。
「【紅流:天月】」
瞬歩で一息もつかぬ間に近づき、槍で突く。
「《土よ》【土壁】」
「そんなもので耐えられますか?」
槍と彼女の間に土によって壁が作られましたが、やはり短縮詠唱によって作られた壁はもろいですね。
しかし、目的は壁によって槍を止める事ではなかったようです。
「壁を隠れ蓑ににげましたか」
突きを放たず、槍を一振りし壁を破壊しました。
かなりの距離離れていますね。
今の一瞬でこれだけの距離を移動できるという事は、かなり瞬発力が高いのでしょう。
「次行きますよ【紅流:龍槍】はぁ!」
「投げるのかよ!」
槍投げの要領です。
「チッ!《土よ》【土壁】」
またこれですか。今度は横から抜け出したようですね。
「これで終わりです【紅流・秘槍:天紅紫——」
(周囲の気配が急に消えた。そして、視界も失いましたか‥‥麻川さんですかね。現実の身体の方は皆さんに頼むしかありませんね。このような能力だったとは、かなり厄介ですね)
「もう気付いたの?」
「麻川さんですね。随分と厄介な能力ですね。強制昏睡、そして、意識は夢の中ですか」
「分かったんだ。正解だよ。でも、出方は分からないでしょう」
「脱出方法ですか‥‥」
(いくつか考えられますが‥‥彼女を倒すことですかね)
「私を倒そうとしているの?ここでは無理だよ」
「やって見なければ分かりませんよ【紅流:八雲鉢】」
「無駄だよ」
瞬歩から技を使ったのに、放つ前には麻川さんが消えていました。
「この中では、私の思うがまま。逃げられると思わないで」
「物理的に不可能なことも、実現できるのですか。これは、骨が折れそうですね」
「来たら」
「そうさせてもらいます。《場を制せよ》【支配者】」
‥‥発動しない?まさか!?
「この世界ではマギを使えないよ」
「本当に厄介ですね。その能力。こっちはどうですかね。《最弱を持ちて、最強を喰らえ》【我最弱最強也】《喰らえ》【魔奪】」
「え?」
やはりこっちは使えましたね。
「何で…」
「現実の身体で使っているんですよ。あなたのマギを削っているんです。恐らくですが、この能力現実で触れていないと使えないのでしょう」
麻川さんの顔が苦しげに変わっていきます。それもそうでしょう。現実では今まさにマギを吸い取られているのですから。
私の魔奪は使用にマギを必要としません。敵のマギを喰らう能力です。その代わり、参式とは違い自分のマギの回復も出来ませんが。
「か、解除」
戻ってこられたようですね。
「麻川さん。あなたはここでリタイアしてもらいます」
手に持った槍で麻川さんの校章を壊しました。
「樋波!」
茨ヶ咲さんが身を挺して麻川さんを守ろうとしましたが、もう遅いです。
「くそ!」
「やけくそ紛れの攻撃が当たるとでも?《永遠となれ》【虚数空壁】」
やはり、この技はマギの使用量が多いですね。
「これで終わりですよ」
「鈴‥‥すまねぇ」
茨ヶ咲さんの校章も壊しました。
これで、残り半分です。そして、前衛はもういないですね。
「2人がやられましたか‥‥あなたの実力は私の予想を、遥かに超えていたようです。ですが、勝つのは私達です」
「ん。勝つ」
残り2人で勝つと言い張るという事は、何か秘策でもあるのでしょうか?
「いえ、勝つのは私達不滅の戦姫です!」
「そう言う事ですね」「2人で勝てるとでも?」
「私達が勝つ」「‥‥勝ちます」
試合は白熱差をまし、会場のボルテージも最大に達した。
ここまでお読みいただき有難うございました
では、次話の予告を緋和李ちゃんにしていただきましょう
「こんばんわ、緋和李です
今話では無窮の幻想との試合が始まり、試合は中盤へと差し掛かるところまで来ました
人数差では圧倒的にこちらが有利ですが、まだ、何かを隠している様子のイリアさんに、レギオンの中枢であろう鈴さんが残っています
油断はできませんね
次話では、イリアさんの本当の実力が明らかになるかもしれませんね
これで、今話の感想と次話の予告を終わりにさせていただきます
次話は、今日中に投稿する予定です
次話でいったん区切りです
では、また次話でお会いしましょう」
緋和李ちゃん、有難うございました
【※閲覧者の皆さんへのお願いです】
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では、また次回お会いしましょう!