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ファントムシュナイツ  作者: 聖花 シヅク
第1指令:学園入学
10/18

9話:緋和李の過去

本日二話目です


では、9話『緋和李の過去』お楽しみください

 あれはもう、10年以上も前のことである。

 私がまだマギに目覚めていないころで、シュナイツになることなど全く夢にも見ていなかった時の話です。




———10年前


「お母さん!遊びに行ってくるね!」


 帰って来るなり、私はそう言って家を出た。


「6時までには帰って来るのよ」


 その頃は夏真っ盛りで日が沈むのも遅かった。

 お母さんはいつものようにそう言う。私はその言葉を話し半分程度に聞きながしながら、遊びへと出かけた。


 ファントムの進軍は未だに終わっておらず、既に日本を残すのみとなっていたが、大抵ファントムは海からしか来ないため、内陸部であるここは比較的安全な地帯になっていた。


「琴美ちゃん!」


「緋和李ちゃん!」


 約束をしていた友達に、空が暗くなるまで遊び続けた。

 私達子供たちだけでなく親達も吹決めて、スマートフォンなどは持っていなかった。

 国から携帯電話は支給されていたのだ。もしもファントムが攻めてきた時に、それを使えばすぐに国の中枢に連絡が飛ぶようになっていた。

 その頃はまだ、シュナイツ育成学校もなかったため、国の中枢から事件があるたびにシュナイツが送られてきていたのだ。


 私達はテレビでしか見た事などないファントム。

 テレビはちょっとした教育番組と、子供の娯楽のために流されるアニメ。

 そして、ファントムに関するニュース以外は流れなくなっていた。

 このころにはもう、泥棒なども出なくなっていた。シュナイツの誕生により、犯罪の検挙率も圧倒的に上がったのだ。


「そろそろ帰ろうか」


「そうだね。もうお外も真っ暗だし、6時になっちゃうからね」


 小学校に上がったばかりで、まだ幼かった私達だったが、6時までは危なくない。

 6時を過ぎなければ事故にはそうそう合わないから、安全だと思っていた。実際事故なんて真っ暗な時間帯にしか起こらない。


「じゃあ、また明日ね!」


「ばいばい!」


 大きく手を振って琴美ちゃんと別れた私は、急いで家へと帰った。

 私達の住んでいる町は子供が極端に少なく、私達の学年は2人だ。

 それでも多い方で、普段は1人いるかどうかといった感じだ。


「あれ?煙が上がってる?」


 私は自分の住んでいる家の方から煙が上がっているのを見て、とても不思議に思ったのを覚えている。

 火事が起きることも多くはないが、1年に一度くらいはあった。

 だが、その時は火が上っていた。しかし、その時は火が上らず、煙だけが上がっていたのだ。


「はやく、かえらないと」


 何故かその時物凄く焦ったのだ。

 何か、大切なものが手から零れていくような感覚があった。

 私はその時、まだ分かっていなかったのだ。

 ファントムがどのような存在なのか。

 ファントムがどの様にして、本土へとやってきているのか。




 一心不乱に家へと向かい走った。

 多分琴美ちゃんの家の方は大丈夫だと思った。

 煙が上がっていたのは、私の家のある方向だけだったから。


「お母さん!」


 5分ほどで家へと着き、家の中へと入った。

 何か、焦げ臭いにおいがした。


「おかぁさん‥‥何か焦げてるよ」


 ゆっくりとキッチンへと向かっていった。

 お母さんはキッチンで料理をしていて、少し焦がしてしまっただけなのだと、信じたかったのだ。

 お母さんの料理の腕はプロ級で、そんなミスなど私の前でしたことない。


 キッチンのドアを開いた。


「おかあさん?・・・おかあさん‼」


 急いでお母さんへと駆け寄った。

 お母さんの右足は無くなっていた。

 右足は何かで焼かれたかのように、切断面が焼け焦げていた。


「お母さん、脚大丈夫!?」


「ひお、り‥‥にげて」


「いやだ!おかあさんもいっしょににげるの!」


 キッチンに入った瞬間。何があったかは幼いながらにも理解した。

 キッチンは半分以上が無くなっていたのだ。断面はお母さんの脚と同じように焼け焦げていたが、お母さんの脚とは違いまだ熱を持っていた。

 ファントムが来たのだ。あのビームで家とお母さんのあしをなくしたのだ。


「おかあさん。シュナイツにはでんわした?」


「したわ。あと30分もすれば、到着するわ」


 あと30分。つまり、もうすでに20分は過ぎているはずだ。

 ここは都市部から大きく離れているし、海辺にも面していないため、シュナイツは常駐していない。

 シュナイツは海辺の駐屯地からやってくるのだ。

 ここまでは50分は最低でもかかる。


「じゃあ、かいじいちゃんの所に行こう。このままじゃ、おかあさんが死んじゃう!」


「大丈夫よ。私だって、2年前までは現役のシュナイツだったのよ」


 確かに、おかあさんは2年前までシュナイツだった。

 しかし、引退した理由はマギの減少による超絶技(スキル)が1度もまともに使えなくなったからだ。

 お母さんの戦い方の基本は超絶技(スキル)を主軸としたものだった。

 そうであった以上、超絶技(スキル)が使えなくなった時点でおかあさんはシュナイツとしては死んだのだ。


「つよがり!ウソつかないで!私、おかあさんがもうたたかえない事、しってるんだから!」


 私は昔のおかあさんの映像を見て理解していた。

 マギの減少が主な理由だが、おかあさんは体を痛めていたのだ。

 多分、戦いに行かなければ痛むことは無いのだろう。

 お母さんは戦いに行くたびに胸のあたりを押さえていた。


「おかあさんがしんじゃいやだよ!」


「緋和李には敵わないなぁ。じゃあ、かいおじいちゃんのこと呼んできてくれる?」


「‥‥分かった!」


 涙をぬぐって、おかあさんに返事した。

 次に話すときが、最後の言葉になるとも知らないで。




「かいじいちゃん!おかあさんが‥‥お母さんのあしが!」


「何じゃ、緋和李ちゃんか。何があったか説明してくれるか」


 かいおじいちゃんは、私の家からはかなり離れた場所にあった。

 その時はただ歩けないから、呼んで来て欲しいと言ったのだと思っていたが、今となってはその意味を理解している。

 私を逃がしたかったのだ。出来るだけ遠い所へ。できればもっと遠いところに行ってほしかったのだろうが、すぐに行かせる場所としては、かいおじいちゃんの家が最も遠かったのだ。


 かいおじいちゃんに何があったのかを、丁寧に説明した。

 多分幼かった時の言葉だ、何を言っているのか分からないこともあっただろう。

 だが、その言葉でも理解してくれた。


「お母さんが脚を‥‥まさか!」


「どうしたの?」


「緋和李ちゃん。お母さんの所に行ってくるから、ここで待っててくれるかな」


「私も行く!」


「緋和李ちゃんがいると、途中でファントムが出たときに危なくなっちゃうから」


「分かった‥‥」


 その時は我慢した。

 お母さんのもとに向かいたかった。

 だが、自分が邪魔になってはいけない。その一心で必死にその心を押さえつけ、我慢した。


 しかし、次の瞬間。

 私の家が爆発した。


 かいおじいちゃんの家は高台にあった。

 だから、自分の家が爆発したことに気付いてしまった。

 次の瞬間。私は走り出していた。


 この時のことを後悔したことは無い。

 お母さんが目の前で死んでしまった。その絶望感は果てしなく、心を締め付けた。


 1週間、2週間、1月‥‥3月ほど塞ぎ込んで、ようやく決心がついた。

 すべてのファントムを殺す。もう、大事な人が目の前で殺されないように‥‥お母さんがいつも言っていた『強い子になりなさい』。

 強い子になりたかったわけでは無い。だが、目の前で大事な人が殺されないように、強くなった。

 父親は年中出張に行っていた。母が死んだという知らせを聞いて、帰って来た時。隣には別の女がいた。

 その女は、赤ん坊を連れていた。出張先で父親は子供を作っていたようだ。

 それが、私が地方に残る大きな理由となったいもうとだったが、父親以外には特に恨みも抱かなかった。

 父への恨みも力に変え、強くなっていった。


 強くなった————つもりだった。

 まだまだ、私は弱かった。実力的には十分に強いのだろう。

 だが、まだ心が弱く、未熟で、甘かった。

 この1週間、ひたすら自分を責め続けた。


 だが、それはもう終わりにしよう。

 自分を責め続けるだけでは、誰かを守ることなどできない。

 誰かを守るために強くなろう。


 私はこの時、心に誓った。

 誰かを死なせないためにではなく、手の届くすべての人を護れるように、強くなることを‥‥


ここまでお読みいただき有難うございました

緋和李ちゃんに、次話の予告をお願いします


「こんにちわ、緋和李です

今話では私の過去が明らかになりました

父親のことは今でも恨んでいますし、一度も許したことはありません

では、次話の予告に移ります

次話からは、数話にわたってとある大会の予選に入ります

大会で優勝できるように頑張るつもりです


これで、次話の予告はお終いです

次話の投稿は本日8時から10時の間の予定だそうですよ」


緋和李ちゃん、有難うございました


では、作者からのお願いです

面白い、また見たい、続きを早く読みたい、と思っていただけた方は、ブックマークと下にある☆を★にしていただけると嬉しいです

励みになるので、どうかよろしくお願いします!


では、また次回お会いしましょう!

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