星屑だけが、散る。
七夕なので、書いてみました。
昼下がりに雨。匂いが染み込んでいる。
傘の隙間から、滴った紫外線。
排水口から、汚れたペパーミント。
重なった雲よ。私を守ってくれ。
停留所で一人、警報を待っている。
誰にも会いたく無かった。一人に為りたかった。
目の前を舞う筈の蝶々が翅を濡らして墜ちた。
飛んでいた烏鴉がそれを蹴飛ばした。
散った鱗粉が押し流され、光る。
こんな天ノ川はいらない。
夕空にまだ雨。温度が溶け込んでいる。
髪の隙間から、滴った化合物。
排水溝には、萎れた菫の花。
途切れた雲よ。私も連れて行け。
終電で一人、天気を憎んでいる。
誰とも話したく無かった。一人で良かった。
帰り道舞う蓮の想像が色を枯らして綴じた。
留まっていた烏鴉が此方を見ていた。
張った化粧が押し流れて、光る。
こんな天ノ川はいらない。
誰にも会えない七夕はいらない。
君に会えない私はいらない。
もう雨は降っていない。
雨傘はいらない。
雨上がりに夜。光が降り頻っている。
夜空の切れ間から、溢れた星の屑が。
それだけが散った。
この世界で孤独、君を憶えている。
誰にも言う訳がない。一人だけでいいんだ。
空を流れていた星々が頬を濡らして落ちた。
立っていた私は、それを掬い上げて。
透けた言葉が君に届くのに、
天ノ川なんていらない。
星屑だけが、散る。