ミロッド・モスティーク
見ていただきまして、ありがとうございます。
今日も日課のパックをしに裏庭へ足早に向かう。
「お兄様、お邪魔しますね。」
椅子に腰掛けボウルをガーデニングテーブルに置く。
「あぁ、レーカ。今日は美味しいお菓子があるんだよ。レーカの分も取ってくるからね」
分厚い本を閉じて屋敷の中へ戻って行ってしまった。
お兄様自ら取ってきてくれるなんて…!なんて紳士なのかしら…
本当にあたしの事嫌いになってしまうのかしら…もう物凄く寂しすぎるっ…!!
前世では一人っ子だったんだし今のうちにうんと甘えておこう!
いつものようにパックをし、目をつぶってお兄様の帰りを待っていると、聞きなれない声が近付いている事に気付いた。
「おい、俺はお前の婚約者なんか興味ないし本当にこんな所に居るのかよ?」
「大事な弟にはちゃんと紹介をしておきたくてね、それにディオス様に聞いたから間違いはないと思うが…」
「チッ…心にもない事言いやがって…」
「あぁ、あの後ろ姿はきっとそうだ。こんにちは、レスカミアさ…ま……」
後ろの方でしていた声が前に回った時、そこに誰が居るのか漸く気付く事が出来た。
と、同時に冷や汗がとまらなくなってしまった。
「あぁああぁぁああスカイル様っ!!こここここんにちは!!!」
顔についているもの全てボウルの中に投げ入れる。
あぁ、ボウルがあって良かったーー、じゃなくて!!
「ほほほ本日はお日柄もよくきき気持ちいい日ですね!!!!」
って結婚式の挨拶かよ!!あたしほんと馬鹿!!
目に見えてわかるほどテンパっている私を見て2人は呆然としている。
あれ、隣に居るの誰だ?
「フッ………」
ん?
「フッ…ククククク……ハハハハッ…そんなに慌てなくても大丈夫ですよレスカミア様」
隣に居る少年がギョッ、と驚いたようにスカイル様を見ている。
「見苦しい所をお見せしてしまい、申し訳ございません…」
「いや、私の方こそいきなり来てしまい申し訳ない。今日は私の弟を紹介しようと思いまして。」
冷静さを取り戻したスカイル様が隣の少年を紹介する。
「私の弟の…」
「自分の名前くらい自分で言える。ミロッドだ。よろしくな、きゅうり姫。」
きゅうり姫ぇ??!!初対面でそれはないでしょ!大体レモンもあるでしょうが!
「レ ス カ ミ ア です。よろしくお願い致します、ミロッド様。」
ニコニコと挨拶を交わす。
「しっかし俺が聞いた話だとスカイルもだが、ラーク公爵の娘は笑わないと聞いていたんだがな。こいつも笑い出すし、面白い女だな。」
面白いって何よ面白いって!
「レーカは天使に磨きがかかったと言う事ですよ、王子。」
ニコニコと笑いながらお兄様が戻ってきた。
「レーカ遅くなってごめんよ。人数が増えたからね、アルに手伝ってもらっていたんだ。折角だから皆でティータイムにしようか。」
よく見ると後ろに紅茶セットを用意しているアルが居る。
「レーカ、まさか先に始めているとは思わなくて王子達をこちらに案内してしまったんだ…本当にすまなかったね。」
お兄様に耳打ちされこそばゆくなる。
「いえ、私が外では控えるべきだったのです…今後気をつけます…」
しゅん、と下を向くと頭を優しく撫でられた。
「さぁ、お2人もどうぞおかけください。アルの紅茶はとても絶品ですよ。」
今度は誰かの声がしたらすぐに取るようにしよう。
そう心に決めティーカップに口をつけた。