ハンス・キール
見ていただきまして、ありがとうございます。
スカイル様との婚約が本決まりして、数日たっても屋敷の皆が浮き足立っている気がする。
このままだとあたし国外追放なのよ〜そんなに喜ばないで…
ん…まてよ?
ヒロインにスカイル様以外を好きになってもらえばあたし破滅しないんじゃない??!
あたし超頭良いー!!!
ってヒロインの顔も名前も分からないのにどうやってくっつければいいのよ…
とっとにかく学園に通うまでの間自分磨きを頑張らなければ…
美容体操は勿論の事、これからはパックもしていかなきゃね!
るんるん、と足取り軽く調理場へ向かいきゅうりとレモンの輪切りを貰った。
よーし、顔は前世より全然良いんだからもっともっと綺麗になってやるぞ〜!
ふわふわなベッドに腰を掛け慣れた手つきで顔にきゅうりとレモンの輪切りを乗せていく
スマホがあれば音楽でも流して時間潰し出来るのになぁ
暇潰し道具が何も無いので目をつぶって大人しく浸透を待つことにした。
〜〜〜〜〜〜〜
「……ミア……スカミア……お〜い、レスカミア〜」
ん〜…誰よまったく…まだパックし始めたばかりなのに…
目の上に乗せているきゅうりを取り、目を開けるとよく見知った顔が覗き込んでいた。
「くぁwせdrftgyふじこlp????!!!!」
「やっと起きた、おはようレスカミア!」
「ハ、ハンス…何故私の部屋へ?」
幼なじみのハンス・キールだ。
「ノックしても返事無かったから心配で入っちゃったんだよ」
えっ、と時計を見るともうかなりの時間が経っていたようだ。
「それでね、俺レスカミアが熱が下がったからって回復祝いに花を持ってきたんだけど…そ、その顔…」
ハンスは肩を震わせている。
あたしの顔になんか着いて…いやめちゃくちゃ着いてるわ!
光の速度できゅうりとレモンを取っていく。
「ご、ごめんなさい。とっても綺麗なお花ね。ありがとう。」
何事も無かったかのようにハンスに微笑みかけるがハンスはまだあたしの顔をずっと見ている。
「レスカミア、本当に変わったんだね…俺今のレスカミアの方が断然いいと思う!とっても素敵だよ!」
あぁやっぱり大型犬だわ…可愛い…
今すぐ撫で回したいけど片手にはきゅうり、片手にはお花…今すぐ第3の手が生えないかしら。
「そういえばレスカミア、スカイル様と婚約したんだってね、おめでとう!でもレスカミアは俺のお嫁さんにしたかったなぁ」
あぁもう無理。
きゅうりを膝に置いてスカートで手を拭きハンスの頭をこれでもか、と撫でてしまった。
「レっレスカミアっ俺っ……諦めないから…」
「何?何て言ったの?」
はっ…もしかして気軽に撫でてはいけなかったのかしら…
思わず引っ込めた手をハンスにキュッと握られてしまった。
「…レスカミア、またくるね!」
可愛らしいふわっとした笑顔を向けてからハンスは部屋を出ていってしまった。
あ〜あ、前世でもあんなに可愛い弟が欲しかったわ…
その後スカートのシミが見つかりお母様にこっ酷く叱られたのであった。