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7.旅は道連れ、可愛い女の子となら尚ヨシ!

 迷いの森を抜けるのにあと数日はかかるだろう。レイジは銀孤と並びながら、道なき道を歩き続ける。

 この森は、迷いの森というだけあり、鬱蒼と茂った森林によって道に迷うものが続出していた。

 

 道を作ろうにも、駆り出した労働者が道に迷い出てこれなくなる始末。通常であれば、この森は常人達には近寄れない未開の地であるのだが。


 「レイジはん、迷いの森を通り慣れてる感じがするんしねぇ。人間は一度入れば出てこれない。それに強い魔物もおる。人間は滅多に近づかない森なんやけどなぁ」


 「確かに魔物は強いと思うけど、森も深いけど迷う事はないだろう。方角が判る魔法も使ってるしな。知らない道を歩くコツみたいなもんもある」


 レイジ一行は、『カブルポート』へ向かって歩き続ける。確かに普通なら迷ってしまうだろうが、レイジは一流の冒険者。迷わずに歩くための方角魔法を既に使用している。それに『ユグドラシル』へ挑戦するために何度も通った森でもあった。


 「ウチを拘束した魔法もすごかったわぁ。これでも結構うちは強いんやで。もしかしてレイジはんは有名な魔法使いなんし?」


 「いや、そんなことはない。それに俺は魔法使いじゃなくて魔法剣士だ」


 「へぇ、魔法剣士なんて珍しいねぇ。今時は中途半端だって言われてるわ。だから魔法か筋力かの片方しかやらんのよ。役割分担もしっかりするって聞いてるんやけどねぇ」


 「そうなのか? まぁ俺は魔法剣士だよ。実力は、今はわからないけどね」


 百年も経てば、理論や常識も変わるだろう。レイジとしては魔法も剣もできた方がいいと思うが、役割分担をして専門性を高めるのも効果的なのも理解できた。


 そうして話しながら歩いていると日も暮れて月が出てきた。

 そろそろ眠るのが良いだろう。

 

 レイジは野営の準備をする。と言っても荷物もなく、路銀袋と果物をいくつか持っているだけ。少し寒いので、焚き木の準備ぐらいだろうか。幸いにもここは森なので、燃えるものはたくさんある。


 「レイジはん、もしかして何も持ってないんし?」


 「実は鞄を落としてしまって。路銀くらいしかないね」


 レイジの持ち物は百年の時を経て腐ってしまったから当然だ。だが若返りの秘宝の出来事は誰も信じないだろうから適当に誤魔化しておく。


 「うちは妖狐やから別にかまへんけど、人間は凍えてしまうんちゃうの?」


 「その辺の木の枝を折って火を起こすから大丈夫だよ、こうやってね」


 レイジは木々の枝を折り取って行く。折った木々は乾燥させなければいけないが、そこは魔法を使って乾かす。初級の火の魔法(ファースト・ファイア)で十分だ。

 

 乾かした木々を組み焚き木を作る。

 火の魔法(ファーストファイア)で火種をつけて焚き木の完成だ。


 「慣れたもんやねぇ。折角やからうちも温まらせてもらいたいなぁ」


 「そりゃ構わんよ。でも銀孤は大丈夫? お願いしたのは俺だけど、野宿は厳しいよ?」


 「うちはこの森に住みついてたんしね。掘立小屋でやけど、数日の野宿ぐらい平気さね。食べ物は果物と獣の肉で十分。今は体を洗う川が近くにないのが不満やけど、それも街にあればあるんやろ?」


 「勿論街には風呂ぐらいあるさ。しかし森に住んでたのか。この険しい森を一人で」


 「そりゃうちは妖狐やからね。それに人間と一緒に暮らそうとも思わなかったんよ。群れで数年前にトラブルがあってね。それから独立して、この森に来たんや」


 銀孤はこの森に一人で住み着いていたらしい。勿論住居は構えていたようだが、迷いの森では質素なものだろう。中々逞しい。それにこの森は強力な魔物が出る地域である。銀孤はその魔物を狩って生活していたという事なのだろう。流石は妖狐という所だろうか。


 そうして野営をしながら、レイジは気になっていたことを聞いた。


「銀孤はどうして命に係わるような怪我をしていたんだ? 妖狐は強い種族だと聞く。あんな風に腹に穴を開けられるなんて、まずないと思うんだが」


 レイジは、銀弧を助けてからずっと気にしていたことを質問していた。妖狐は上級魔人といわれる種族。魔力も身体能力も高い。簡単にやられること等ないはずだ。


「『迷いの森』でずっと一人で暮らしてたんやけどな。誰かが来て、”何か”で打たれたんや。不意打ちで気付かんかった。高位の魔物かもしれん。致命傷を負ったうちはすぐに逃げた。逃げ切ったのは良かったんやけど、傷が深くて動けなくなってしもたんや。そこにレイジはんが来たってわけやねぇ」

 

 銀孤はレイジを見てニッコリと笑いかけた。


 レイジは不覚にもドキリとし、心臓の音が高鳴った。

 バチバチと焚火の音が鳴る中で、暖かな熱気を感じていた。


 あまりにも可愛いらしい微笑みに、ドクドクと血が全身を回り、めまいがするほどだったのだ。


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