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5.とっても美人な子を助けたぞ

 「おまえ、妖狐か。珍しいな。上位魔人の種族がこんなセコイ事をするなんて珍しい」


 人間と意思疎通が取れ人の形をしているが、人ではないもの。それを人類は魔人と呼んでいた。特に妖狐という魔人種族は絶対数が少なく、人前に姿を現す事は珍しい。人類には敵対的ではない種族だったはずだが、何故こんなことを。


 レイジは妖狐をよく観察してみると、腹に穴を空けて血を流していることは間違いなさそうだったと思い至る。どうやら怪我はレイジを誘い込むための嘘ではないらしい。 


 「おまえ、やっぱり怪我しているじゃないか。致命傷だな。妖狐は不思議な魔法を使うというが、確か《生命吸収(ライフドレイン)》というものがあったな。おまえ、俺を栄養にして回復するつもりだったのか」


 「そうよぉ。うちは、生きる為にあんたの命を狙った。この傷は長くはもたない。誰か通るのを願ってたらあんたが来た。分かったら殺してええよ。この森に住むもの、皆いつでも死んでも文句は言わない」


 レイジはその話を聞き疑問を抱いた。

 妖狐は上級魔人で、腹に穴をあけるような怪我をする事自体が珍しい。しかし、腹に穴が空くような致命傷では、生きるために人の命を食べるしかないのかもしれない。


 一般的な薬草ではどうやっても無理だろう。何よりもここは危険で知られる『迷いの森』なのだ。

 

 なるほど、致し方なく襲ってきたわけだな。仕方ないな。

 そう考えたレイジは、薬を用意し始めた。


 「安心しろ。お前を殺そうなんて思わないし、助けたいとすら思っている。これも何かの縁だ」


 「そんなわけないやろ! うちはあんたを殺そうとしたんや。それに人間はそんなに親切じゃない!」


 ばたばたと暴れているが、あまり暴れると失血量が増えてしまう。妖狐とは言え、可愛い女の子だ。助けてあげた方が、人生楽しく生きれそうだ。見捨てて死なれたら夢見も悪いな、とレイジは考えながら、テキパキと応急処置を進めた。


 「君は怪我をして困っている。助けるには十分な理由だろう」


 レイジは数少ない持ち物から、『ユグドラシル』にて見つけ出したあるアイテムを取り出す。レイジがそのアイテムを鑑定した所、《七色の万能薬(セブンス・エリクサー)》と呼ばれる、伝説の治療薬だ。

 レイジは彼女の患部に治療薬を振りかけてやる。キラキラと七色に光りながら、妖狐の傷が塞がっていった。数分もすると完治だ。


 「そ、そんなアホな。うちの傷が治った? なんやその薬? まさか…… 《七色の万能薬(セブンス・エリクサー)》か!? ありえん、そんな幻の秘薬を!?」


 「まだあんまり喋るなよ。傷は塞がっても血は減ったままなんだから。ほら、果物だ。食え」


 レイジは拘束魔法を解いてから、先ほどから齧りついていた果物を、妖狐に手渡してやる。妖狐は驚いたような顔をしてレイジの顔をじっと見つめた。


 レイジはその妖狐が、すごく美人だと思った。

 銀髪のショートヘアに少し吊り上がった目、整ったガラス細工のような顔つき。妖狐の特徴である、少し長い耳がピョンと際立った。

 妖狐族は非常に美しい容姿をしている事で知られているが、こうじっと見られるとレイジは恥ずかしかった。レイジは女性耐性がないのだから。


 「この薬は気にするな。ただ傷に効くことはわかっている。果物は美味いか?」


 「美味しい、命の味がする。うち、死ななかったんやな。うぅ……」


 妖狐は泣きながら果物を齧っている。死の淵から生還した喜びをかみしめて。


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