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4.嫁探しを始めよう。誰だ、おまえはっ!?

 レイジは爽やかな風を感じ、陽の光を堪能する。『ユグドラシル』の入り口は隠されており、Sクラス以上の冒険者でなければその存在すら知ることのない特別な迷宮だった。この特別な迷宮をクリアしたという達成感がレイジを充足させていた。レイジは、この迷宮攻略を冒険家人生の一区切りにしようと考えた。


 そして嫁探しをする!!!


 ここから近いのは『カブルポート』と呼ばれる海辺の港街だ。『ユグドラシル』は大陸の最南に存在しており、北に一週間ほど歩けば、『カブルポート』に到着する。百年後ではあるが、発展した街であったのでなくなっていることはないだろう。『迷いの森』という危険な森林地帯を抜けなければいけないが、レイジにとっては楽勝である。さて、嫁探しに行くぞ! レイジはそう心に決めて歩き始めた。


 ◇◇◇


 チリチリチリと鳥の虫の鳴き声が聞こえてくる。深いエメラルドのような葉っぱから木漏れ日がこぼれ落ちる。レイジは、木に成っている丸く赤い果物を取りしゃぶりついた。口の中にジュワァと酸味が広がり、仄かな甘い香りと甘さが顔を綻ばせる。まるで明るい未来を予見しているようだ。


 そんなわけでレイジは良い気分だった。しかしその気持ちは早々に水を差されることになった。血の匂いを感じたからだ。果物の甘い香りに交じって、血の匂いを感じた。風向きから匂いの方向を断定し、探査魔法を集中させる。どうやら、何かいるらしい。気配を殺して、こっそりと近づいてみる。そうして木の傍から様子をうかがうと、女性が声を殺して泣いていた。深い傷を負っているようだ。赤い血が地面に流れている。


 「おい、ここで何をしている。大丈夫か?」


 「うぅ、助けて……。痛い……」


 レイジは急いで傍によりながら女性に声をかけた。服は破れボロボロになっており、誰かに襲われたのかもしれないと考えた。

 それに滅茶苦茶可愛い女性だとレイジは思った。だがそんな事言っている場合じゃない。


 「大丈夫だ、絶対に助ける。気を強く持って。ここに薬があるから」


 女性はレイジを見て、ニコっと笑った。あまりに可愛くて、レイジは一瞬目が離せなくなったが、事態が事態なので、頭を切り替えた。

  

 レイジは伊達に高ランク冒険者ではないのだ。百年の眠りで殆どのアイテムがダメになってしまったが、高位のアイテムは残っている。迷宮での拾いものだが、『ユグドラシル』で見つけた信頼できる薬だ。まずは応急処置から入ろう。


 「………こ…………す……………」


 女性が何かを呟いているが、レイジは上手く聞き取れなかった。

 女性のケガの原因は不明だが、怪我人は助けたい。女性なら特に優しくしたいと考えながら、レイジは女性の傍に近寄り、その言葉を聞き取ろうと耳を近づけたその瞬間。


 「ごめんね! お兄さん! 私のご飯になってぇ!」


 女性は立ち上がり、表情を豹変させて襲い掛かってきた。女性の拳には魔力が込められている。突然の出来事だが、レイジは狼狽えず女性の手を払いのけ、足払いをかけて態勢を崩させた。

 

 ここは迷いの森、レイジには油断なんてものはない。

 女性は驚いたような顔をして、地面に転げ落ちた。

 レイジは拘束魔法を唱えた。


 「束縛の鎖よ、彼女を拘束しろ! 上級魔法《数奇な運命の拘束(ミゼラブル・フェイト)》!」


 紅い魔力の鎖が彼女の両手両足を縛りあげる。魔力の鎖に縛り上げられた彼女はドサリと地面に倒れ身動きが取れなくなった。


 「っく、拘束を解いて! この変態ぃ!」


 「おいおい、俺の命を狙っておいてそれはないだろう。しかし、俺を騙すとはやるなぁ。誘い出すまでは中々のものだ。まるで本当に怪我をしているようで油断した」


 そう、レイジは騙されていた。本当に怪我をしていると思ったのだが、百年の眠りで少し鈍ったかなと自省した。


 さて、この女性をどうしようか。

 レイジはそう思案するのであった。


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