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天敵

 爆音を上げて猛スピードで走るパトカー。

 女の人は巧みな運転で高速道路に止まっている車をすり抜ける。


「くそ! 追いつかれるぞ!」


「分かってるわよ! こうも止まってる車が多いと……」


 俺とアリスは後部座席から狛犬型モンスターと仁王像型モンスターをじっと見る。


 ーー既視感がある?


 頭の隅に引っかかる……

 なんとも言えない感情が胸に湧き上がる。


 ーー多分殺れる。


 アリスも同じ事を思っていたのか俺を見た。

 アリスの目が赤い。


「きゅっ! きゅきゅーー!!」

「ああ、そうしよう」


 俺は暴走中の車の中で揺られながら九段下に大声で話しかけた。



「九段下さん! 俺たちが始末します!! そのまま走ってください!!」



「あん! なんだって! おい、てめえら無茶すんなよ!!」



 俺たちは、制止する九段下の声を無視して後部座席の扉を開けた。

 風が凄い勢いで入ってくる。


 俺とアリスは器用にボンネットの上に這い上がった。


 ーー風が凄いけど、立ってられるな。


 屋根に足が張り付いたようにピッタリと固定する俺とアリス。


 30メートル先にはパトカーを追っているモンスターがいる。


 仁王像は大きな錫杖を構えている。

 狛犬は絶えず炎の弾を噴いている。


「ばか! 早く戻れ!! 俺でも倒しきれなかった奴らだぞ!」


 俺は大声で九段下に言った。


「多分コイツラは大丈夫!!」


 アリスが興奮しているのかフシュフシュ唸り声をあげている。

 俺も胸がドキドキする。身体に力が溢れる。


 右手に黒い刀を装備した。


 アリスは爪を伸ばす。

 アリスは俺の肩に乗った。


「行くぜ、アリス!!」

「きゅきゅーー!!」


 猛烈な風圧を無視して、俺とアリスはモンスター目がけて飛んだ。


 後ろで車の急ブレーキ音が聞こえる。




 俺たちの目の前にモンスターどもが凄い速度で接近してくる。

 狙いを俺たちに定めた。


 狛犬が火を吐きながら迫る。

 仁王像が錫杖を振り上げる。


「心眼! 武具生成!」


 俺の左腕から半透明なガラスの盾が生まれる。


 黒い刀の上から半透明なガラスがコーティングされる。

 黒い刀は巨大な斬馬刀のような形になった。


 アリスの爪が光り輝く。

 俺の肩の上で力をためているのがわかる。


 ーーモンスターから弱点の光が見える。



 炎を盾で防ぐ。

 アリスが肩から離れる。

 俺たちはモンスターに向かって高速移動をした。


「うおぉぉぉぉーーーー!!!」

「きゅいーーーー!!!」


 俺は仁王像に斬馬刀を振るった。

 アリスは瞬間移動みたいな素早い動きで光る爪で狛犬を切りきざむ。


「ぐおおおぉぉぉぉ……」

「ぎゃ…………」


 仁王像が一刀両断されて断末魔の悲鳴を上げた。

 無数に切り刻まれた狛犬の大きな首が落ちた。


 俺は何事も無く地面に着地した。

 アリスも無事だ。俺の方に飛んでくる。


「やったな!」

「きゅ!」


 俺たちはハイタッチをした。


 パトカーから降りた九段下達が走ってきた。


「おいおい……マジかよ……あのSTM(すごい強いモンスター)を瞬殺か……」


「ちょっと理解が出来ないわ……」


 スマホの通知が来る。


『STM討伐の討伐が確認されました。討伐ボーナスが入ります』


 俺たちはこれでゆっくり話せる状況になった。







 俺たちはSTMを倒した後、パトカーで九段下の隠れ家へ向かった。

 九段下の隠れ家は有明周辺にある、寂れた工場であった。


 ガレージが外とむき出しになっていて、入り口に車が一杯止まっている。

 そこまで広くない。テニスコートくらいの広さだ。


 九段下達はそこら辺にあった椅子に座る。

 俺は適当に座った。


「まあなんだ、助かったぜ。まさかあの化け物を一撃で倒すとはな……」


 女の人は奥でお茶を入れている。


「あんまり時間をかけるとまた襲われる可能性がある。ちゃっちゃと進めよう」


 俺が頷く。

 アリスは眠いのかソファーの上でウトウトしている。


「えーと、生贄を助けているってところからだったな? そう、俺は必死で生きようとする生贄を助けようと考えた。……でもな、どんどん緑の光が減っていくんだよ……」


「俺たちも生贄を助けたいと思っています」


 九段下が頷きながらスマホを見せる。


「見ろよ。緑の光は数個しか残っていない……豊洲付近と東雲付近に灯っている」


 ーーもうそんな人数しか残ってないのか。


「ここからだったどっちも近いですね……。手分けして助けに行きますか?」


 俺は九段下に提案した。


「ああ、一刻を争うと思う。効率よく行こうぜ、少年! あっ、自己紹介しなきゃな!」


「俺は九段下章、元湾岸警察署所属の刑事だ。色々やらかして、はみ出し者だったけどな!」


 ーー悪魔って呼ばれてたよな?


「あー、元異世界転生勇者ってのは本当の事だ。大体バカにして信じないけどな!」


「あっちの女はスザンヌって言う。まあ、俺の唯一の理解者で元上司だった」


 スザンヌは綺麗な大人の女性であった。 

 金髪に青い瞳が美しい。日本人では無かった。


 九段下は右手を突きだした。握手を求めてる。

 俺も手を出して握手をした。


「九段下さんとスザンヌさん……よろしくです。俺は藤崎春樹、17歳、学生です。そっちで寝ているうさぎはアリスっていいます」


「俺たちは生贄同士で仲間になりました。今後の事を話し合っている最中に暴徒に襲われて、九段下さんが来て……」


「……そっか。ところで春樹はレベルいくつだ?」


 俺はスマホを見せる。


「レベル63だと!! ちょっとまて……ほれ、俺の見てみろ」


 九段下さんは驚きながら俺にスマホを見せてくれた。


 九段下章

 職業:元勇者

 レベル:32

 ステータス:C

 スキル:勇者魔法、勇者剣術、索敵

 生贄中



 ーー俺たちより大分低い。


「あーー、これでも俺は警察署内で最強だったんだけどな……、異世界から帰ったときにレベルとスキルがなくなったからな……」


 ーー何それ超気になる。


「その異世界ってなんですか? あ、長くなるなら又今度で……」


 九段下は渋い顔をする。


「……そうだな、今度時間があるときに話すぜ。今の状況とあんまり関わりがなさそうだしな。今はとっとと生贄の保護に向かうぞ! この状況で生き残っているってことは俺たち並に強いか、特殊な状況下だと思うぜ」


 スザンヌがお茶を持ってきた。

 俺たちは少しだけ休憩をして生贄の保護に向かうことにした。


「じゃあ、俺は東雲の方に行きます」


「わかった。豊洲の生贄は任せろ! 死ぬなよ!」


 アリスが起きた。顔を短い手でこすっている。可愛いな。


 俺たちはスマホで連絡先を交換して、生贄を保護した後の事を少し話し合って、九段下の隠れ家を出た。






次は少しだけ2年A組視点が入ります。


少しでも面白く感じたり、先が気になるようでしたら、応援していただけたらとっても嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

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