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武装集団

 

「くそ! 殺ってやんよ! 刑事がデカイ面すんな!」

「生贄って事は警察で嫌われてんだよ、バーカ!」

「俺達にはレベルとスキルがあるぜ!」

「落とせーー!」


 厳つい武装集団は武器を構えて迎撃体制に入った。


 九段下という男は空を高く飛びながら武器を取り出した。


 青い西洋片手剣を右手に、青くて丸いバックラーを右手に、頭まで全身を覆う青い甲冑。まるで漫画のヒーローみたいだ。


 ーーあ、ちょっとカッコいいかも。


 戦闘中ながらバカな事を思った、


「なめるなよ!」


 叫びながら飛んでくる魔術や弓矢を盾で防ぐ、


「悪くねえ……だがな、俺は九段下章くだんしたあきらだ!!」


 剣が光輝く。

 着地と同時に圧倒的な剣圧と地面の破片が爆砕して武装集団を襲った。

 地面をぶち壊した九段下。


 武装集団はその剣圧だけで吹き飛んでいった。


「ひ、ひい……化け物」

「花子ーー! 傷は浅いぞーー!」

「く、くそ! 逃げっぞ! ーーその前に」


 武装集団が逃げ出す。

 俺達の方に向かってきた。


 弱そうに見えた俺達を殺してから逃げるつもりだ。


 追撃をしようとした九段下の元に、騒ぎを聞きつけたモンスターが集まってきた。


「あ、まてこら! くそ、モンスターも来やがった!」


「あきら! 時間がないわよ! 急いで!」


 パトカーの運転席の女の人が九段下に叫んだ。


「分かってる! 待ちな!」


 歯をきらめかせながら満面の笑みでサムズアップをする九段下。

 九段下は俺たちが見たことの無いモンスターと乱戦になった。


 ーー人狼じゃない。


 頭が猪だったり、豚だったり、カエルだったりする。

 狼に乗ってる悪魔みたいな騎士もいる。

 人狼よりもずっと強い。

 

 だが、九段下も強かった。BGMに合わせて剣を振るう。ふざけた調子で叫んでいる。モンスターたちの数がどんどん減っていく。






 武装集団はもう俺の目の前に来た。


「ははは! こいつよそ見してんぞ! カモだぜ!」


 走りながら俺を剣で刺そうとしたモヒカン男をノールックで眉間に刀を突き刺す。


「あ」


 モヒカンは驚いた顔で死んでいった。


「きゅー!!」


 アリスがドレスを翻しながら首を刈る。

 可愛らしいもふもふの指先には50cm位の長い爪が幾枝にも伸びている。


 ーーこの前よりも速い!? ドレスの効果か!


「こいつらも化け物よ! に、にげるわよ!」

「まってーー! 花子ーー、俺を置いてかないでーー」

「ぎゃーー!!」


 ーー全員逃がさない。こいつらは生贄を躊躇なく襲う。俺達以外も絶対襲う。今ここで殺さないと後で悔いが残る……


 アリスの口角が不敵に上がる。にやりとした笑みを浮かべる。


「きゅっ、きゅっ、きゅっ」


 アリスの身体がブレるたびに武装集団の首が飛ぶ。

 俺が刀で切りつけつつ、クナイを投げて効率良く仕留める。


「あ、あ……」

「たけし……」

「花……子……」


ーー俺たちは武装集団を全滅させた。


 九段下の方をみると、ほぼモンスターを全滅させている。

 焦った表情で俺たちをみて叫んだ。


「後ろだ、少年!!」


 九段下の手が見えない速さで振るわれる。


 ーーわかってる、大丈夫。


 俺は振り向きざま刀で豚型モンスターの首を切った。

 同時に振りぬいた九段下の剣が豚型モンスターの胸に刺さった。


 これで完璧にモンスターが全滅した。


「ひゅーー」


 九段下がキザッたらしく口笛を吹いた。


 やっと、フジテレビ前に静寂が訪れた?

 いや、BGMがうるさいよ……





 九段下が走って俺たちの方へ来る。


「へいへい! 少年たちすげえじゃん! お前ら強いな!!」


 武装を解除した九段下の素顔はとてもイケメンだ。


 20代後半くらいの年で大人の風格がある。それでいて子供のような純真さが瞳に宿っている。ザンギリカットの髪を後ろになびかせて、かっこいいスーツを着ている。首から耳にかけて生贄の紋様がある。


「あ、はい。なんかありがとうございます」

「きゅっ!」


 アリスはペコリとお辞儀をした。


「お! うさぎ型か……可愛いじゃねえか! よろしくな!!」


 アリスの頭をくしゃくしゃに撫でる九段下。


「きゅーー!!」


 ちょっとご立腹のアリス。九段下は笑っている。


「九段下……さんでよかったですか? 刑事さんが何してるんですか?」


 俺は警戒しながら九段下に聞く。


 ーー元異世界勇者って何?



「ああ、俺は警察署内のはみ出し者でさ、こんな状況になったら生贄になっちまったんだ。それであの女と一緒に逃げ出したんだ」


 九段下は親指をパトカーに向ける。


「で、スマホで他に生贄がいる事が分かったからさ、助けに来たんだぜ!」


「あ、じゃあ俺た」


「あきら!!! ヤバいよ!!! あいつが追い付いてきたわ! 早く乗って!!!」


 俺の言葉がパトカーのマイクで遮られた。



 九段下が青い顔をしている。


「しつこい野郎だぜ!! 今はゆっくり話す暇がない! 自己紹介はあいつを振り切った後だ!!」


 困惑する俺とアリス。


 ーー何が来るんだ??


 アリスは首をかしげる。


 俺たちが九段下に手を引かれて、車に向かおうとした時にそれが来た。



「----------!!!」


 モンスターの咆哮が街に響く!

 あれはなんだ??

 遠くにいるモンスターが見える。


 土佐犬? 違う、狛犬? トラック並みの大きさの狛犬型モンスターに乗った、真っ赤な仁王像みたいなモンスターが道路から現れた。

 仁王像のみたいなモンスターは巨大だ。大体3メートルくらいはあるだろうか。


 ーーあいつはヤバい。師匠と同じ匂いを感じる。


「STMか!!」


 俺が叫ぶ。


「出るわよ!! 飛び乗って!!」


 パトカーのタイヤが煙と唸りを上げて急発進する。

 俺たちの方にパトカーが来る!

 --減速しないの!!!


 アリスが飛んでボンネットに張り付く。

 俺と九段下も開けっ放しの扉に手をひっかけて、どうにか車の後部座席に移動した。

 

 狛犬が吠える。


「わおぉぉぉぉぉーーーーん!!!」

 凄まじい速度でパトカーを追いかけていた。



 警察の制服を着ている女の人が帽子を外に投げた。






「……スイッチ入ったわ!! モンスター風情がなめるんじゃないわよ!! あたいは伊達に【首都高の美熟女姫】って呼ばれてないわ!! 行くわよ!!」



 残像を起こしてトランスミッションを巧みに操作する女の人……

 凄まじい速度で湾岸の道路を走る!


 ーーヤバい! なんだこの速度は!? あれ? この女の人もっと、まともそうじゃなかったっけ?


 そこには鬼の形相をしている女の人がいる。

 ちょっと年増だけど……とっても綺麗な……人だ……


 アリスが外から窓を覗き込んだ。

 俺はウィンドウを開けてアリスを中に入れた。


「きゅっ! きゅっ!」

 この暴走がご満悦のようだ……


 ーー身体に凄いGがかかる!


「お、おお、おおおーーーー!!」


 パトカーが急ターンをして首都高速湾岸線に突っ込んでいった。

 

 

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