カフェでスマホチェック
俺とアリスは壊れたカフェで休息を取りながら作戦会議をする事にした。
幸いカフェの厨房には食材があり、誠に申し訳ないが勝手に頂くことにした。
「スマホをもう一度確認するか……」
「きゅい!」
俺はアプリのメニューを開く。
今まで無かった項目が増えていた。
・よくある質問
「生贄」
仲間外れのボーナスキャラ。
プレイヤーの味方ではない。モンスターの味方ではない。
通常のモンスターの数百倍の経験値を保有。
レアアイテムをドロップする。
ーー目の色を変えるはずだ。
市民に出会わないように移動をする必要があるな。
まともな市民もいると思うが、さっきの襲撃した奴らを見ると……
ーー希望を持たない方がいいな。
よくある質問は細かい事まで書いてある。
例えばレベルとは?
経験値によって存在としての階位が上がること。
こんな感じで色々書いてある。
どうやらアイテムもスマホから手に入れられるらしい。
メニューにあったポイントを使う事によって購入出来る。
ポイントメニューはこんな感じだった。
・所持ポイント:234220P
・販売商品
ポーション 2000P
毒消しポーション 5000P
ナイフ 100P
クナイ 100P
バット 100P
刀 1000P
…………
…………
英雄の薬 10000000P
エクスカリパー 40000000P
…………
…………
数え切れないほどのアイテム数がある。
詳細が書いていないから、効果がわからない物も沢山ある。
もっと早くこの画面が出ていれば師匠の闘気の毒を消せたかも知れない。
でも俺はアリスと出会えたから良かったか……
アリスは厨房にあった野菜を口いっぱい頬張っている。
可愛らしい姿だ。
「もきゅっ、もっきゅ……」
薬が妙に高いな……
試しに買ってみるか。
俺はポーションを一個だけ買ってみた。
ーーーー何も起こらない??
画面に新しい項目が出た。
・持ち物
ポーション×1
俺はポーションの文字を押した。
身体がスッキリする。体力が回復したようだ。多分傷も治るだろう。
ーー現物は出てこないのか? スマホに入っているのか?? ますますゲームのアイテムみたいだな。
でも好都合だ、無駄な荷物を持たなくてもいい。
俺は回復系のアイテムを数個ずつ買っておいた。
武器は予備として刀を3つ、クナイを50本だけ買った。
今は黒い刀で十分だ。
でもいずれ刃こぼれがして使えなくなったり、戦闘中折れる可能性もある。
鋭い爪という武器もあった。アリスが装備出来るのかな?
「アリスは武器がほしい?」
「……きゅ〜〜、きゅきゅ!!」
武器はいらなくて可愛い服がほしいようだ。
お洒落なうさぎさんだな。
アイテムから服を探す。
ーー子供用、子供用……あった?
マダムのバトルドレス(うさぎ用) 98000P
高い!!
「きゅ!」
アリスは素早く動いて俺のスマホをタッチした!
俺の持ち物の欄にアリスの服が追加された……
持ち物欄からアリスの服を押してみる。
すると俺の目の前に服が出てきた。
「きゅきゅーー!」
俺は服を手渡すとアリスは短い手足を器用に使い、マダムのバトルドレスを着た。
ぴったりだ!
バトルドレスは子供用ドレスみたいな大きさで、貴婦人ような気品がある……
青を基調として所々ホワイトを使っている。全身を包まず、手足の部分は大きく穴が空いている。動きやすそうだ。アリスのピンクとよくあっていてとても可愛い。
アリスは自分の姿をカフェの鏡で見る。うっとりしている……
ご満悦のようだ。
「きゅきゅーー、きゅきゅ!」
アリスは俺に向かって頭を下げた。ありがとうって言っている。
俺はアリスの頭を撫でた。
アリスは嬉しそうだ。
さて、あんまりゆっくりしているのも不味いな……
次にステータスを確認する。
藤崎春樹
職業:「」
レベル:52
ステータス:??
スキル:武具生成、心眼
生贄中
うん? ステータスの項目に変化が出ているぞ?
Eだったのが「??」なっている。
生贄……
「アリスはスマホあるのか?」
「きゅきゅ!」
アリスは短い手で宙にS字を描く。
アリスの手の中にタブレットが出てきた……
ああ、大きいから操作しやすいよね。
俺にタブレットを見せてくれた。
・持ち主情報
ピンクうさぎ(アリス)
職業:??
レベル:63
ステータス:B
スキル:首狩り、高速移動、回復魔術
生贄中
ーー俺よりレベルが高い!
ステータスも、俺のEだったことを考えれば高い。そして職業がわからない。特筆すべき点は回復魔法だ。これで俺を治してくれたのか……
次は今後の目標を決めるか。
俺はアリスを見る。
「俺は警察署に向かおうとしていた。でも人間に襲われるとは思わなかった……警察署に行っても襲われる可能性がある」
「きゅきゅきゅ」
アリスは同意する。
「俺はアリスと出会って思った……生き残った生贄はまだいるんじゃないか? 俺はそいつらを助けたい。生贄を助けながらモンスターを狩り強くなっていこうと思う」
ーー同じ境遇の奴を見捨てられない。モンスターだけじゃなく人間に襲われるなんて……
「きゅーー!!!」
何度も頷くアリス。
「うん、じゃあこれからどうやって見つけるかだよな……地図を見てみるか?」
地図を確認する。
このショッピングセンター内の細かい地図も出てきた。
ところどころ赤い光があるが、近くにはいなかった。
モンスター数24980/28322
STM10/12
ーー結構減ってきたな。俺以外にSTMを倒した猛者が出て来たか。
ん? 見たことが無い緑色の光が点っている。
カフェ内で光が2つある……
俺達か!? 生贄の目印だ!! 不味いぞこれは!!
アリスは驚いたように鳴いた。
「きゅきゅ!?」
カフェの入り口が突然開かれた!
ーー赤い光はない。 普通の人は光らないのか!
そこには武装した集団がカフェの入り口を包囲した。
「ラッキー! 生贄2匹ゲット!!」
「大量経験値だね!」
「メタルスライーム並にレアだよね、こいつら」
ーーコイツラにとって俺たち生贄は人間じゃないのか。
俺とアリスの目が合う。
お互いやる気満々だ。
アリスはドレスの力を試したくてウズウズしている。
武装した集団が襲いかかって来ようとした時にパトカーのサイレンが鳴り響いた。
「な、なんだ! パトカーが突っ込んでくるぞ!!」
「え、ええーーーー!!」
パトカーがけたたましいサイレン音とともに武装集団に突っ込んだ。
武装集団の一部は車に跳ね飛ばされた。
「花子ーー!! 大丈夫かーー!!」
「あ、やばいぞ!! 湾岸署の悪魔が来たぞ!!!」
「くそ! 車に轢かれたくらいじゃ死なねーよ!」
パトカーのサイレンが止まった。
代わりにけたたましいBGMが車から鳴り響いた。
男がパトカーから華麗に出る。
男はパトカーの上に仁王立ちをする。足をBGMに合わせてリズムを取る。ヒーロー物のアニソンだ……
運転席に女の人が見える。頭を抱えている??
男は叫んだ!!
「へいへいへい! てめえら……生贄を狩るつもりか?? なら、てめえらは俺の敵だぜ!!」
武装集団に指を差す。
「俺は最強の生贄! 湾岸署の元異世界勇者、九段下章だーー!!! 死にてぇやつはかかってこいよーーーー!!」
男は武装集団に向かって飛んだ!!