人狼
モップを回転させて付着した血を弾き飛ばす。
教室の扉の窓から大勢の生徒が廊下を惨劇を見ている。
「や、ヤバい! ひ、人が死んでるよ……」
「あ、変なアプリでスマホから映像が見れる」
「本当だ!! これお台場だ! 場面も切り替えられる!」
生徒達は安全なところで騒いでいる。
俺には関係ないことだ。
神楽坂の怒声が聞こえる。
恵比寿の胸ぐらを掴んでいる。
「恵比寿ーー!! てめえどういうつもりだ!! 春樹を……春樹を……」
ーーこのクラスに興味は無い。
教室に気を取られていると人狼が前後から襲いかかってきた。
この廊下の生徒をあらかた殺し尽くしたようだ。
手傷を負っている人狼もいる。
ーー最善を尽くしたやつもいたんだな……俺が仇をうってやるよ。
「はっ!!!」
俺は気合を入れてモップを構えた。
前にいた人狼が爪を振るう。野生の速さ、目で追いつけないはず……だが、俺には見える。
俺はカウンターを喉に食らわせた。
「ーーーー!?」
苦痛で顔をしかめる人狼。
俺はモップを手から離して地面に立てて、モップを後ろへおもいっきり蹴る。
俺に襲いかかろうとした後ろにいた人狼は自分の勢いで腹にモップが突き刺さった。
俺は後ろを見ずに前の人狼に迫る、
飛んだ。
両足で首を挟み全体重をかけた。
人狼の首からぽきっという音が鳴った。
泡を吹いて即死する人狼。
即座に俺は立ち上がり、腹を押さえている人狼の頭に膝蹴りをくわえる。
人狼の頭が割れた。
俺は身体の調子を確かめながら戦う。
ーー身体が軽い? いや、心が軽い? なんだこの感覚は?
人狼の数が増えている。
ーー死んだ生徒も人狼に変わるのか!
人狼は俺の前で、様子を伺っている。
徐々に人狼の数が増えていく。
初めは数匹だったのが、今では数十匹だ。
モップは折れている。
俺は折れたモップを手に取った。
頭にピコーンという音が鳴り響く。懐かしくて心地よい音色。
力が沸いてくる。身体からアドレナリンが出る。
ーーレベル?
あとで調べよう。今は……こいつらだ。
俺は目の前の人狼たちを見据えた。
教室から声が声が漏れる。俺は未だ教室の前で死闘を繰り広げている。
「お、おい! これ藤崎だろ! こんな数の化け物相手に立ち向かってるだと!?」
「え、ヤバくない??」
「くそ! 今助けに行くぞ!」
「神楽坂さん! 開けたら入ってきちゃうよ!!」
「どちらにしろ化け物は倒す必要がある。数が少なくなったら行くぞ!」
「さすが恵比寿君あったまいいーー!」
「え、人狼がすごい勢いで倒されているよ」
俺は人狼を包囲網を徐々に壊していった。
身体のすべてを武器に変えて、俺はぶち殺していった。
敵を倒せば倒すほど強くなっていく。俺の殲滅力が上がる。
やがて道が開かれ、俺は階段まで走った。
ーーモンスターを全滅させれば終了? どんだけいるんだ? このエリアはどのくらいの範囲なんだ?
俺は3階から一気に1階まで駆け下りた。
昇降口に着く。物陰に隠れる。
人狼がうじゃうじゃ廊下を歩いている。
俺はスマホを開いた。アプリを展開する。
ーーん、メニューがあるな?
メニューを押すと、さまざまな項目が出てきた。
・エリア地図
・持ち主情報
・ポイント
・ニュース
・クエスト情報
…………
…………
全部見る暇はない。とりあえずエリア地図を見た。
スマホの画面が湾岸一帯の地図を映し出す。思ったより広いな。
豊洲周辺からお台場……テレコムセンターくらいまであるな……
東京ゲートブリッジの先に巨大な建造物が地図で表記されている。こんなの無かったぞ。
クエスト情報を見る。
・イベントレベル0【デスモンスターゲーム】
勝利条件:モンスターの全滅
ーーこの広大な湾岸地域を駆け回ってモンスターを狩れと?? 鬼畜なクエストだな……
武器が必要だ。
一度自宅に戻るか? 道場に行くか? 敵が武器を持っていたら良かったんだが……
俺は物陰から人狼たちを観察していると、昇降口を過ぎたところにあるグラウンドにいる大きな人狼が目についた。数は10匹ほどがうろうろしている。
普通の人サイズではなく、2メートルくらいある人狼だ。
その手には……武器を持っている!
俺はアサシンのように静かに昇降口の人狼を始末して、喜々としてグラウンドに向かって行った。