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難易度ルナティック! 忘れていた約束を叶える為に、ボッチの俺が本気を出す時が来た!  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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偽魔王戦


「いぃぃぃぃやっほーーーー!!!」


 九段下さんが雄たけびを上げて騎士たちに襲いかかっていった。



 剣を振るう度に騎士たちが倒れる。

 スザンヌさんの広域魔術で灰にされるモンスターたち。


「いやだーー!! あいつだけはやめてくれーー!!」


 騎士のトップがさっきから泣き喚いている。


「き、騎士団長……くそ、こいつはもう使い物にならない……。下剋上だ! 今から私が騎士団長だ! 勇者アキラなんて聞いたことない! 恐れるな! かかれ!」


 年配の騎士を放置して、若い騎士が指示を出す。


 モンスターも何かの指示を受け取ったらしく、騎士たちを襲わず、私たちだけを標的にしてる。


「こっちに弱そうなやつらがいるぞ! こいつらを叩け!」

「ラッキーだぜ!」

「かわいこちゃん悪いな!」



 ーー私も舐められたものだ。



 道場で恐れられ、学校で恐れられ……自分が強いと勘違いしていた。


 私は弱かったじゃないか。

 春樹がいじめられているのを助けられなかったじゃないか。

 助けるために強くなろうとしたのに……いつしか私の心がおかしくなってしまった。


 モンスターと騎士が連携して迫ってくる。


 私は何者でもない。ただの女の子だ。


 ーーだがな、恋する女は強いんだよ!!


 私の頭が冷静になる。

 心が熱くなる。


 私はため込んでいたスキルを開放した。




「ーー同時スキル開始!!」


「--スキル二刀流」

「--スキル一撃必殺」

「--スキル高速移動」

「--スキル広域攻撃」

「ーースキル毒針」

「--スキルブースト」

「--スキル身体強化」

「--スキル王者の風格」

「--スキル恋する乙女」



 目の前まで迫った敵が吹っ飛ぶ。


 七海の鎌が目の前にあった。


「あらあら、ゴミムシがぶんぶんうるさいですね」


 大きな鎌を器用に操る七海。


「リックーー!! 傷は浅いぞ!」

「傷口が凍ってく……あ、全身に……ひろ……」

「あ、いったーー!!」


 後ろで真帆が魔術を生成している。


「1、2、3、4、5……30個! いっくよ! 飛び散れ魔弾! まだまだ生成するよーー!」


 モンスターと騎士に魔弾が襲いかかった。


 高威力の魔弾でも騎士たちを倒しきれない。

 だが、魔弾は直撃しても消える事なく次の獲物に襲いかかる。



 ーー私も負けてられない。



「--花鳥風月乱舞!!」



 目にも止まらぬ速さで刀を乱舞する。

 全て一撃必殺の攻撃を広域展開する。


 目の前にいた20人の騎士たちが一斉に倒れた。



「な、なんだ……動けないぞ!」

「ぐふ……ど、毒か……卑怯な」

「ぎゃぎゃ……」

「こ、こいつらも化け物だ! 一斉にかかれ!」




 ーー王者の風格を見せてやる。



 私はブーストされた闘気を全力で開放した。

 闘気の波が騎士たちに襲いかかる。


「あ、あれは……むりだ……」

「ひぃーー、こっちも悪魔だ!」

「逃げるぞ! 拠点に撤退だーー!」

「勇者様ーー、助けてーー!」



 ーー春樹、すぐ行くぞ!


 私たちは全力で殲滅に入った。




 *********






 俺たちは城内は駆け抜ける。

 騎士とモンスターが俺たちの道を塞ぐ。


 俺の短刀が空を舞い、自動的に敵を屠る。

 駆ける足を緩めない。


「スマホで見た限り、上に行けば偽魔王の元へ辿りつけるな」


「きゅ!」


「そうだな。あそこに階段がある。道がわからなかったら壁に穴をあければいい」


「……脳筋なのじゃ。わらわは疲れたから宙に浮くのじゃ」


 階段前に群がる敵をフルモンティが魔法を食らわす。


「ひえ!? 身体が勝手に!!」


「やめろばか! 俺は敵じゃねえ!」


「…………」


 フルモンティの洗脳魔法が騎士と魔物を支配して同士打ちをさせる。





 2階に着いても同じだった。


「----レジェンドメテオ!!」


「----レジェンドダーク!!」


 フルモンティの魔法で敵をなぎ倒す。


「この上が魔王の間になっている。階段は……あの奥だ!」


 遠くに階段が見える。


 そこまでの間に巨大なモンスターが群れをなしている。


「あれはドラゴンなのじゃ!!」




「きゅい?」


 アリスが高速で飛び跳ねた。


 ピンク色の残像が通るたびにドラゴンの首が落ちる。


 メイドがドラゴンの腹に掌底を食らわした。

 ドラゴンの内部が破壊される。一撃一殺でドラゴンの群れを殲滅していく。





 俺たちはあっさり3階にたどり着いた。


 3階は天井が吹き抜けになっていてまるで屋上のような感じだ。

 無用なものは置いていない。




 ーー学生たちがまとまって待機している?




 まるで通りを塞ぐかのように集団で固まっている。

 

 俺たちに気づいた。


「あーー! 藤崎パーティーが来たよ!」


「達也さんの言う通りだ! こいつを止めろ!」


「あいつはクズだから遠慮するなーー!!」


「元クラスメイトもいるんだ、殺せるわけねーよ! 肉壁作れーー!」


 総勢100人ほどの生徒たちが俺の前に立ちはだかる。


 ーー邪魔だな。


 ずっと奥に戦っているのが見える。

 あれは……恵比寿たちだろうか?



「春樹、私が半殺しにしようか?」



 メイドが優しく俺に言ってくれた。


「いや大丈夫。通るだけだから」



 俺は赤い刀を出した。


「あいつ殺る気だぞ! 早く魔術を撃てーー!!」




 俺は飛んで、生徒たちがいる床に向かって刀を振るった。

 生徒たちを飛び越えた。


「うおぉぉー! あれ、なんともないじゃん。びっくりした……」


「ただのこけおどしよ!」


「え、地震……」


 俺が一瞬で4か所切り裂いた床が崩れ落ち始めた。


「あ、落ちるよ!!」

「ぎゃーー!!」


 生徒たちもろとも床が抜け落ちた。

 落ちなかった奴もいるが戦意を喪失してへたり込んでいる。


「きゅ!!」


 アリス達がジャンプして床を飛び越えた。





 魔王の姿が視認できる距離だ。


 ーーあいつがーーを語った偽物か!!


 俺は思わずガラスの短刀を10本すべて発動した。


「きゅ!!」


 アリスの風の魔術との連携によって短刀が恐ろしい速さで飛んでいく。



 短刀に気づいた魔王と恵比寿たちは迎撃を始めた。



 10本すべての短刀が着弾をして巨大な爆発を起こした。












「……くそ! 何が起こったんだ!」


 傷だらけで消耗している恵比寿達也が周りの仲間に喚く。


「……敵襲? あなたたちは?」


 機械の腕を持つ綺麗な女の子がつぶやく。

 こちらも傷だらけだ。





 マントを羽織った偽魔王が結界魔術を行使しながら怒り狂っている。



「お前ら頭おかしいですよ! ちゃんと正々堂々とボス戦しなさい!」



 ーーその顔で喋るな。



 俺とアリスの殺気が膨らむ。



「……え、な、なによ。私は魔王よ! あんた達なんてイチコロだわ!」





 横やりが入った。


「藤崎春樹ーーーー!! てめえはまた俺の邪魔をするのかーー!!」



 ーー俺邪魔なんてしてないよな?



「おほほほーー! あなたたちは弱くてよ! 30人で私に手も足も出なかったじゃない!」


 恵比寿は舌打ちをする。


「くそ! うるせー! こっからが本番だ! レオン! まずはこの男を叩き潰すぞ!」


 レオンと呼ばれた男が困惑している。


「え、この人達は人間でしょ? 仲間じゃないの?」


「うるせーー! 仲間じゃない! ただの生贄だーー!!」



 ーーそうだった。お前が俺を追い出したんだ。些末な事だったから忘れていた……



 恵比寿が後ろの仲間に指示を出す。

 あれは元クラスメイトの女の子だ。


「剣聖モコ! 賢者エリ! 聖女アイコ! やるぞ!」



 俺は恵比寿を無視した。


 目の前に偽魔王がいる。

 あいつの姿をしているくそ野郎だ。


 間近で見るとそっくりだ……でも全然違う……





 俺は赤い闘気を開放して偽魔王に迫った。



 ーー何かを吹き飛ばしたけど、今はそれどころじゃない。


 視界の片隅で恵比寿達が倒れている。

 機械の女の子が恵比寿たちを引きずって戦線を離脱していた。




「なんだ、おま」



 俺は偽魔王の首をつかんだ。


「俺の名前は藤崎春樹17歳。ボッチだった。今は大切な仲間と【サクリファイス・ナイン】をやっている。粛清に来た。……ところでお前は誰だ?」



 偽魔王が足をじたばたさせる。



 アリスがピンク魔力を高める。

 メイドの身体が光輝いている。


「は、春樹。そ、そいつ首絞めすぎて喋れないのじゃ?」



 ーー失礼。



 俺は少しだけ力を緩めて、偽魔王を床に下ろした。


「げほっ、げほ……貴様ら許さんぞ……ここに来たことを後悔させてやる」


 俺は偽魔王に腹パンをする。

 くの字に折れる偽魔王の身体。


「おえぇぇ、わ、私の鎧の障壁が……」


「おい、質問に答えろ。お前は誰だ? なんでその姿なんだ?」


 涙目で偽魔王が俺を見る。


「……くそ、これじゃどっちが魔王かわからないわ。……この姿は私だって気に食わないのよ!! うるさいわね! 本気出してあげるわ!!」


 偽魔王が俺から離れる。


「おほほほ!! 私は魔王ユミ・スタンフォードよ! 魔王の力と奪い取った悪役令嬢の力であなたたちを苦しませながら殺すわ!! 絶対許さないわ!! レベル320を舐めないで!」


 魔王の角が大きく伸びる。

 先ほどとは比べ物にならないほどの魔力が渦巻く。

 その姿は魔王にふさわしい威圧感を放つ。






 ーーこの姿が気に食わない? 悪役令嬢の力を奪い取った?




 俺たちの殺気が一気に膨れ上がった。



「……もう一度言う、これが最後だ。……お前は……誰だ?」



 魔王が魔力を身体全体で集中させる。


「あんたうざいわね! さっさと死になさい! ----エンドフォール!!」


 巨大な闇が魔王から発生して俺たちに襲いかかってきた。


 濃密な闇が俺たちを覆つくす。


「おほほほーー!! 闇に包まれて苦痛と恐怖にまみれて死になさい。そのあと生き返らせてまた殺してあげるわ!」







 ーー暗い。


 ーー気持ち悪い。


 ーー全身に激痛が走る。


 ーー首が飛ぶ幻覚、四肢が切断される幻覚。


 ーー心を腐らせる闇。


 ーーでも……


 ーーあいつの魔術はもっと絶望感に満ち溢れていた。


 ーーやっぱり全然違う。


 ーーお前は偽物だ。





 闇の中で俺は声を聴いた。





(----そうですわ。わたくしはもっと先にいますわ)





 俺の胸が熱くなる。


 俺の身体が赤くなる。


 俺の心が燃えてくる。


 


(----やっておしまいなさい!!)





 ーーああ、こんな闇!




 俺は闇切り裂いた。

 闇が俺の赤い力に浸食されていく。

 闇が赤く染まる。



「きゅきゅ!!」


 アリスがいた場所がピンク色に染まる。



「……くそ、腹がすいたぞ」


 メイドがいた場所が白色に染まる。




「え」


 魔王が固まる。



「言っただろ? これは戦いじゃない……ただの粛清だ」


 俺たちの力が同時に偽魔王の身体を貫いた。


「ぐぼぁ……」


 偽魔王の身体が消滅していく。



 ーーまだ聞きたいこともあったけど仕方ない……



 アリスとメイドが俺に寄り添う。

 俺たちは無言で抱き合う。













 その時、スマホから通知があった。

 遠隔操作で確認する。



『ボスモンスター討伐完了確認いたしました。ボーナス報酬が出ます。また、最速クリア特典がございます」



 ーー特典?



『裏ボスモンスターの登場です』




「え、いやなのじゃ! まだこのままでいたいのじゃ!! 戦いたくないのじゃ!! みんな好きなのじゃ!! あ! あ……ああ」



 フルモンティが虚空に向かって叫ぶ。



『フルモンティ戦を開始いたします。なおこの戦いはエキシビジョンとなります。いくつかの選択肢がこの戦いには用意されています。最善の策を選んでください』



 フルモンティが俯いて静かになった。

 ゆっくり顔を上げた。


 その眼が紫色に輝いている。

 牙が大きくなる。

 少女の身体が大人の身体に変わる。

 美少女が妖艶な美女に変化する。




「……わらわはフルモンティ。闇を統べる女王吸血鬼……ここに推して参る……のじゃ」



 強大な闇の力が辺り一帯を埋め尽くした。


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