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「ミナはご両親の田舎に行っているわ。帰るのは後一週間ぐらいになりそうだって」
「そうなんですか。でもそちらの方がいらっしゃるなら、マカ先輩も寂しくないですね」
外国の女の子の目が、わたしに向く。
「あっ…」
思わず一歩後ろに下がると、マカがわたしを庇うように前に立った。
「それじゃあそろそろ私達は行くから」
「お引き止めしてすみません。ではわたし達もこれで」
「マカ先輩、また学校でお会いしましょうね」
「新学期、楽しみにしています!」
「ええ、またね」
そうして三人とすれ違いざま、外国の女の子がわたしにだけ聞こえる声で呟いた。
「―早く元いる場所にお戻りなさいな」
「っ!?」
それは一瞬の出来事。
けれど久々に身も心も凍る思いを味わった。
やっぱり…わたしの正体が分かる者、なんだ。