表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の誘惑  作者: 槇野文香(まきのあやか)
4/12

第4話

 自宅に帰ると、浩二の車があり、家には明かりがついていた。玄関の鍵を開けて入ると、浩二がダイニングルームにいるのがわかった。

 貴之はコートを脱ぐと、そのままダイニングルームに入っていった。

「ただいま」

 と貴之が言うと、テーブルでコンビニの弁当を食べ散らかし、缶ビールを飲んでいる浩二が振り向いた。

「おかえり」

 浩二は疲労でぐったりとしていた。貴之もテーブルの椅子に座った。

「今日はおどろいたよ」

 と貴之が言った。

「浩二、どういうことだ。美沙さんに別れ話をもちかけるなんて」

 と貴之が言ったが、浩二は返事をしなかった。さらに貴之は言った。

「好きな女ができたと言ったそうじゃないか。本当にいるのか」

 と貴之が言うと、浩二の目が真剣になった。

「ああそうだ。本当だ」

 と浩二は静かに言った。貴之は怒りが胸元までこみあげてくるのを感じた。

「お前、それがとおると思っているのか。美沙さんはお前を愛しているんだぞ」

「わかっているさ。だけどそれだからといって、彼女と結婚するかどうかは俺が決めることだろう」

 と浩二は強く言った。貴之は浩二の顔を見つめた。

「なるほど、それならその好きになった女というのは誰なんだ」

 と貴之は言った。浩二は少し間をおいて言った。

「澤田由依子だ」

 澤田由依子、それはあの由依子か。貴之はおとなしい内気な娘の顔を思い浮かべた。

「突然どうして・・」

 貴之は言葉が続かなかった。

「美沙のパーティで知り合ってから、つき合うようになった。そして由依子を愛してしまった。もう美沙には心が戻らないんだよ」

 と浩二は言うと、うなだれた。貴之は考えこんだ。弟の様子からして、どうも本気らしい。だが、このまま由依子と関係を続けさせるわけにはいかない。

「今、美沙さんは大変な状態だ。お前には責任がある。ひとまず澤田由依子には会うな」

 と貴之は言った。

「そんな約束はできない」

 と浩二は貴之に向かって言った。

「浩二、今の状態では美沙さんは破滅してしまうかもしれないんだぞ。彼女の打撃は大きい。彼女が落ち着くまで何も言うな。澤田由依子と会うのもだめだ」

 浩二は黙りこんだ。

「浩二、とにかく人としての責任をまっとうしなければならない。美沙さんのことを少しは考えろ」

 と貴之は言った。

「ああ、わかった」

 と浩二は力なくこたえた。











































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ