01.第一印象が肝心です
書いておいたものをそのままUPです(汗
別人視点になってます。
「よっ、紅の騎士サマ!」
軽い調子で俺の肩を叩く友人。
「その名を呼ぶな」
思わずジロリと恨ましげに奴を睨む。
「泣く子も黙る紅の騎士は健在だねぇ」
違う方向から声が聞こえたので、顔を移す。
「何か御用でしょうか、王太子?」
俺は王太子の部分を強調して眼前に迫る、にこやかな顔をした王太子に思わず後退りする。
「なにって? 君にいい話を持ってきたんだよ。なぁーに、悪い話じゃないさ」
悪い話じゃない?
「カイン君もそう思うだろう?」
話を振られた俺の友人、カインは首振り人形のようにコクコクと縦に頷く。
俺を置いて、話がどんどん進んでいる。
「簡単に言うと、君に縁談の話を持ってきた」
サラリと王太子は告げる。俺の意思は無視か。大体、女など……
そう思っていた俺を、今なら全力で否定するだろう。
「あ、あの、アベル様……」
「す、すまない、話をよく聞いていなくて……」
「いいえ、私の方こそ、つまらない話しかできず、すみません」
薔薇というよりは一輪のマーガレットの様な素朴な笑みを浮かべる彼女。リリーヌ。漆黒の薔薇と言われている曰くつきの女性とはとても思えない、可愛らしい少女だ。しょんぼりした様子で、頭を下げるリリーヌに笑って気にしなくていいと告げる。
「あの、紅の騎士様のことを誤解していました」
「俺のことを?」
「戦地に赴けば、敵味方容赦無く切り捨てる残忍な方だと……」
「ぶっ」
可愛らしい少女が呟いた爆弾発言に飲んでいた紅茶を吹き出す俺。情けないな、敵には容赦せず、その姿は鬼のようと同僚に言われたこの俺が、一人の女性の前だとこの有様か……
「ごめんなさい。こんなにもお優しい方なのに。私なんかにも気遣って、紳士的な態度で接して下さるのに……」
伏し目がちに話すリリーヌはどこか寂しげで、その姿を見た時、俺はこの子を守らねばと思った。漆黒の薔薇などというへんぴな呼び名に苦しめられている一人の少女。彼女もただの一人のか弱い乙女なんだ。
アベルとリリーヌ。
アベルが紅の騎士です。
個人的にカインと王太子がツボ。