桜の木の下で(8)
春美、杏花の顔をじっと睨む。
[杏花]:「ありゃ、鋭い視線。何やら怒ってるような様子が伺えるのですが」
[春美]:「ああ、怒ってる」
[杏花]:「ええ!? そんなつもりで出てきたんじゃなかったんだけどな」
[春美]:「俺にとっては、邪魔だったんだよ」
[杏花]:「む、邪魔って、それはちょっと言い過ぎじゃない? 仮にも女の子に向かって邪魔なんて……結構傷つくよ?」
[春美]:「俺の知ったことじゃない」
[杏花]:「うーん、ファーストインパクトはあんまり良くないみたいだね。でも、ここからが大事だから、頑張らなくちゃ。うん」
春美、ぶつぶつしゃべる杏花を一瞥。
[杏花]:「えっと……どうすれば許してくれるかな?」
[春美]:「さっさと席を外せ。そしたら許してやる」
[杏花]:「ええ? そんな~、せっかく感動の対面をしたところなのに」
[春美]:「感動もしてねぇし、お前が勝手に現れただけだろ。俺は全然望んじゃいないし」
[杏花]:「あーあー、何と冷たい言葉。グリーンランドもびっくりですよ」
[春美]:「御託はいい。早く俺を一人にしてくれ」
[杏花]:「まあまあ、そんなこと言わず。こうして出会えたのも何かの縁じゃない。ちょっとお話に付き合ってよ」
[春美]:「断る。お前としゃべる気なんてない」
[杏花]:「そんなこと言わないでよ~、ねぇねぇ~」
[春美]:「……く、うるせぇヤツだ」
[杏花]:「じゃあまず、自己紹介から行ってみよう~」
[春美]:「しかもこっちの話は聞く気ゼロかよ」(小声でつぶやく)
[杏花]:「私は春原杏花、杏花でもいいし、杏ちゃんでもいいし、とにかく好きな風に呼んでいいからね~」
[春美]:「…………」